新コラム「Zero to Maker(ゼロからのMaker)」を今からスタートします。これから1カ月ちょっとの間、ちょっとヤル気のなかったMaker、David LangがMakerカルチャーに身を沈め、我らの仲間、TechShopの寛大なるご協力のもと、できる限りのDIYスキルを習得していく様子をレポートします。彼は、何を学んだか、誰に会ったか、どんなハードルをクリアしたか(またはしなかったか)など、奮闘努力の過程を定期的に報告します。きっと面白いものになるよ。それでは、David Langの登場です。 – Gareth
2009年の晴れた5月の土曜日、友人に日帰りでMaker Faireに連れていかれたとき、それがどんなものなのか、私はよくわかっていなかった。そのイベントに関して、悪く言う人に会ったことがなかったし、実際にあのお祭り騒ぎには心底興奮させてくれた。サンフランシスコからサンマテオに向かう列車は、興味と興奮に浮き立つ顔でいっぱいだった。子供から老人まで、核家族からコスチュームで身を固めたグループなどもいて、私の興味も高まっていった。サンマテオ駅に到着すると、乗客のほとんどがホームに流れ出た。私たちはその人々の流れに乗って、カラフルな会場のゲートを潜った。
会場に足を踏み入れるなり、私は、なにか特別なものに参加している気になった。その新鮮な雰囲気に少々圧倒されたが、なにより私を魅了したのは、周囲の光景と音だった。ブースからブースへと見て回るうちに、すぐにあることに気がついた。「自分の仲間がここにいる!」ということだ。Faireにまん延する空気に私はガツンとやられた。みんなが信じられないほど親切で温かいことに加えて、あれほど多種多様で魅力的なプロジェクトに入れ込んでいる。出展者全員が、自分たちの活動に熱い情熱を持っているのをハッキリと感じた。その日の終わりごろ、ほとんどの出展をたっぷり楽しみ、プレゼンテーションもいくつか見てまわると、私もこの世界の人間になりたいと思うようになっていた。なかでも、DIYバイオハッキングのEri Gentry自身と、彼女が旧来の生物学の教育を受けずにここまでやってきたことを聞いたのは、大きな刺激となった。もっといろいろ知りたくて、私は彼女に近づいた。すると彼女は、仲間に私を引き合わせてくれて、多くのMakerたちと知り合えるようになった。
この1年半を早回しで振り返ってみても、あのMaker Faireは私にとって大きな転換点だった。その日、何人もの素晴らしい友人ができたが、それだけではない。私はある決断をした。「Makerになりたい!」ということだ。自分で何かを考えて作ることで得られる情熱と満足感を味わいたいと思ったのだ。
その日から、私はいくつものMakeの会合に顔を出しては、私が尊敬するMakerたちと時間を過ごすことが多くなった。素晴らしい体験だった(そしてすごく楽しかった)。Maker Faireへ行く前までは想像もつかなかったであろうプロジェクトについても学んだ。そのコミュニティを通して、オープンソースの潜水艦ROVを作ったEric Stackpoleとも知り合った。そのときから私は、オンラインコミュニティ、OpenROV.comで彼の情熱を伝えるための手伝いをしている。そのコミュニティとの関わりは次第に深くなり、ついには、今年のMaker Faire Bay AreaでOpenROVブースを仕切るまでになった。こうしたすべての体験が、私が最初に得た「仲間」を見つけたという直感が正しかったことを示してくれた。
しかし、私にはひとつだけ、重大にして根本的な問題があった。私は物の作り方を知らないのだ! 自分を初心者と呼ぶことすらおこがましい。初心者以下のレベルがあるとすれば、私はそこにいる。新米、新米か? OpenROVに熱心な愛好家がやってきて、プロジェクトに関する技術的な質問を浴びせられたとき、私はただ呆然として、Ericに説明を求める以外に何もできなかった。私の問題のそもそもは、何から始めてよいかわからないという点にある。これほど情熱的な人々やグループに囲まれ、それだけすごい刺激を受けているために、かえってそれを聞くのが怖い。始めることに対して恐怖心があるのだ。なぜなら、私は創造性が皆無で、不器用で、まったく知識がないからだ。しかし私の欲望は次第に大きくなり、ついにはそれが私の背中を押すことになった。私は、Makerコミュニティの一員になるという決意を新たにして、自分の恐怖心に立ち向かうことにしたのだ(そして、ときにはその過程で馬鹿さ加減をさらけ出すことも覚悟した)。
完璧な技術をマスターしようなどとは考えていない。どっちみち、今の段階では望むべくもない。私の目標は簡単なものだ。それは、Makerの立派な初心者になること。4年前、私はスペイン語で同じような決意をしたことがある。私は単語と文法を一生懸命に勉強して、ネイティブの人たちと正確に意思の疎通ができるようになった。同時に、自分が知らない単語や表現が判別できるようになった。これを私は「怪我をしない」レベルと呼んでいる。的確な質問ができて、どこに正しい答があるかがわかるレベルということだ。
これから1カ月間(もう少しになるかも)、私はここで、Zero to Maker(ゼロからMakerへ)の旅の記録を綴っていこうと思う。腕まくりをして、手を汚して、ほかのMakerたちに初心者だったころの話を聞き、恥を忍んで「馬鹿な」質問もぶつけ、怪我をしないレベルになれるよう、思いついたアイデアを現物に作り上げる方法を学んでいこうと考えている。ほかの新米諸君と話しているうちに、自分の恐怖心を克服して、もっと深くこのコミュニティや物作りに関わっていきたいと考えているのは私だけではないことがわかった。どうかみなさん、私の旅を見守っていただきたい。またアドバイスなどがあれば大歓迎です。
私と同じように、やってみたいけど、どこから始めてよいかわからないという人もいるんじゃないかな? この旅に関するアイデアや助言をお待ちしています。
[いちばん上の写真はTechShop提供。Metalworking classウェブページより]
訳者から:「怪我をしない」レベルって、もしかして訳が分かりにくかったかも。説明させてください。原文は「Enough to be Dangerous」。英語の諺で「A little learning is a dangerous thing(生兵法は怪我のもと)」というのがあるけど、それに引っ掛けてるんだと思います。「何がわからなのいかがわかれば、わかったのと同じ」ってよく言うけど、その段階のことだね。それでようやく初心者になれるというのがDavidの考え方のようだ。
– David Lang
[原文]