Crafts

2013.08.02

Fixperts:修理とは考え方なり

Text by kanai

Daniel Charny and James Carrigan, founders of Fixperts
Fixperts創設者、Daniel CharnyとJames Carrigan。

「作る」の原点は修理にある。問題点、必要性、または物事を改善する方法を特定し、それを解決するために何かを作る。なかには、ロボットにもっとレーザーを積みたいとか、カップケーキに乗って走れたらきっと楽しいだろうな、なんていう問題もある。だが、自分や周囲の人たちの思い通りにいかないことが多い。

James CarriganとDaniel Charnyは、Fixpertsという新しいプロジェクトを立ち上げた。これには、直す人と、映画製作者と、問題を解決したい人とを結びつけるという目的がある。

Fixpertsプロジェクトは、変則的な3つの部分で構成されている。Fixpertと呼ばれる、直すことで問題解決のための創造力や技術を提供する デザイナー(Maker)。Fixpartnerと呼ばれる、直したいものや解決したい問題を持っている人。そして、彼らの協同作業を広く伝えるための映画製作者(Fixfilmmaker)だ。

このアイデアは、Jamesが近所に住む少女、Foridhaの車椅子を修理したときの工程、失敗、結果をまとめたショートフィルムから広がった。

問題を解決する

デザインや設計の世界では、他人の問題を解決することが日常の仕事になっているが、Makerの場合は、自分自身のプロジェクトを行うのが普通だ。そこで、他の人の問題を解決することに焦点を当ててみると、Makerプロジェクトは大きな刺激を受けることになる、とJamesは語る。

「自分の物を修理したくても、難しいと感じる人がいます。その物の問題点を突き止める気すら起こらない人もいます。そうした人たちは、問題を黙殺する傾向にあります。しかし、誰かほかの人のためにそれを直してあげられたら、俄然やる気が起こります。それこそが、Fixpertsの主要材料です。誰かと作業することで、そして、いっしょにその人の問題を解決することで、行動することの大きな意義を得ます」

ひとたびそれを始めると、ひとりでプロジェクトに取り組んでいたときとは、まったく違った力学が働くようになる。

「社会的なつながりの中で、自分の創造力や技術を発揮するというのも、もうひとつの道です。人は話を聞いてアイデアを得る。人は、他の人たちの意見を聞くのが好きです。他の人の問題を解決してあげれば、ものすごい高揚感が得られる。これにはそんな2つの道があります」と Daniel。

「私は2つのFixpertsプロジェクトを行いました。それにより、デザイナーとして自分の仕事を自分でどう考えるか、問題にどう対処するか、という点で、いつまでも消えない衝撃を受けました。なぜなら、常に私の心の目は、他の人の役に立つことをやっているのだという視点にあったからです」とJamesは付け加えた。

話を伝える

MAKEやInstructablesのようなコミュニティは、Makerたちのプロジェクトをドキュメント化しようという意欲の上に栄えている。そうしたドキュメント化のプロセスを楽しんでいる私たちのなかにあっても、プロジェクトを最初からフィルムに収めようと考える人間はまずいない。しかし、Fixpertチームには、それを行う映画製作者がいるのだとJamesは言う。

「Fixpertはプロジェクトのなかでも重要な部分です。Fixpartnerはプロジェクトにとって欠かせない存在であり、これらふたつは、非常に重要です。しかし、技術と想像力のもうひとつの層として、話を伝えるためのコミュニケーション担当者も必要です。そしてそれは、プロジェクトに関わるすべての人に大きな恩恵をもたらします。Fixpertに映画の要素がなかったら、多くの可能性を失っていたでしょう」

「協同作業、社会的なつながりと関わり合い、問題の繰り返しのなかから、公開に値するものが生まれてくる。それは他の人たちにとっても価値ある情報になります」

どのように物が作られるか

DanielとJamesは、設計プロセス、問題解決と設計の再リンク、さらに、私たちを取り巻く工業製品と製造者を把握する方法を、学生たちにどう教えるべきかを考えている。

Danielはこう話してくれた。「それはこの社会でのMakerの役割でもあります。工業革命は、私たちにさまざまなものを与えてくれましたが、製品が作られる現場からは遠ざかってしまいました。これは、物を作るための資源は人間性の中にあること、そして、作ることには、社会的な意識と人材が必要であることを人々に教えるための方法なのです」

「何かが壊れたとき、多くの人はそれをそのまま放置しておきます。または、壊れたまま使うか、一歩踏み出して、新しいものに買い換えます。しかし、解決策はそれだけでないことを、それが最良の方法ではないことを、私たちはわかっています」

直すことから作ることへ、行動することへ

その衝撃は、工業的に製造された品物にも負けない。

「映画を1本見ただけでは、人の行動や考え方が変わることはないでしょう。しかし、これは種なのです。作ったり、直したり、作業する様子を見れば見るほど、そして失敗をひとつの作業段階として理解するようになれば、ほぼあらゆることに役立つようになります」とJames。

「直すこと──作ること──は考え方です。それは姿勢を表すことです。この映画を見ると、たくさんの前向きなエネルギーを感じます。何かをしようという意欲をもらえます。そして、Fixpertsに参加するというだけでなく、あらゆる行動の引き金になればと思っています」

Danielはこう付け加えた。「ひと言で表すなら、私たちが本当に直したいものは、人の行為です。その変化はMaker Faireでも見られました。最初は見学者だった人が、参加するようになり、やがて独自のプロジェクトを始めるようになる。デザインの教育の現場でもそうです。あるポイントを境に、学生はデザイナーやMakerに変化するのです。あるデザイナーが、見たこともない方法で何かの問題を解決しようとしたとき、またはMakerが新しく習得した技術を使おうとしたとき、つまりまったく新しいことをやろうとしたとき、そこには行為者性があります」

「そしてその行為が、貢献に発展し、新しい知識と独立性をもたらします。私たちが興味を持っているのは、そうした特性です。人が新しい技術に出会い、習得し、熟練し、それまで考えてもみなかった方法が使えるようになっていく。人はそこから自信を得て、より大きなことに取りかかるようになるのです」

「Fixpertsはアクセスポイントです。社会的なプロジェクトに簡単に参加できる入口です。社会貢献をしたいと思っている人はたくさんいます。しかし、どうしたらいいかわからない。これは、比較的簡単な方法だと思います。人生をかけるようなことではなく、小さなプロジェクトですから」

Fixpertになる

自分でFixpertプロジェクトを始めるのは簡単だ。彼らのウェブサイトで映画を見て、チームを作り、始めるだけだ。


Andrew Sleigh は、イギリス、ブライトン出身の修理人であり Maker でありティンカラーでありブロガーであり思想家。

– Andrew Sleigh

原文