Electronics

2011.09.30

製品開発の扉を開くArduino Leonardo

Text by kanai


Arduino Leonardoは、World Maker Faireで Arduinoチームが発表した最新Arduinoのひとつ。Arduino Unoの後継機ではなく、その派生型だ。表面実装パーツだけを使ったシンプルな回路で低価格化をはかった。ボクにとってすごく魅力的なボードだ。
LeonardoのICはATmega32u4。ATmega328の機能をすべて引き継ぎ、SRAMが0.5kだけ増えて、USBポートが実装された。このチップは、すでにArduino IDEでなんとか対応していた(Teensyduino)が、Arduino 1.0 IDEでは完全対応となる。最新ビルドのArduino IDEではまだLeonardoを試していないが、もう少しいじくりまわしてから、改めてレポートしたいと思ってる。
32u4はいいチップだ。手に入りやすいし、328のように品薄になることもない。32u4は同じ価格でUSBが内蔵されているから、高価なFTDIチップを買う必要がない。ということは、Leonardoの価格は20~25ドルぐらいになるんじゃないかな。将来的には、必要なものすべてがオンボードになって、もっと小さくなったArduinoが登場することだろう。
LeonardoはSparkfunのProシリーズのように、すでにハンダ付けされているスルーホールパーツ以外のものは、完全に表面実装パーツのみの構成となった。ヘッダや電源用のジャックはユーザが自分でハンダ付けしなければいけない。この判断は正しいと思う。コストの削減になるし、それに、Arduinoユーザはもう、ハンダ付けに慣れてきただろうしね。それにこのごろは、初心者だって表面実装パーツを使うようになってきている。ボクは、たくさんの人が32u4を使ったオリジナルのArduinoボードを作る日が来ればいいと願ってる。それなりの工具があれば、表面実装パーツはスルーホールよりも使いやすいのも事実。PIDリフローオーブンやレーザカッタがあれば、作業はなお簡単いになる。
これが、完成品として店頭に並べられるオープンソース製品の開発への扉を、どんなふうに開いてくれるのか、それを考えると興奮する。32u4sを1万個仕入れて製品を作る。部品代が安くて回路もシンプルだから、全体のコストが下がり、競争力のある価格で販売できる。Arduinoのフルサポートがあるから、プロトタイプから製品化までの距離もうんと縮まる。
プロジェクトの規模と利用範囲が大きくなれば、32ビット Cortex-M3 ARMプロセッサを搭載したArduino Dueのような製品も準備が整うだろう。これは、開発や学習の範囲をうんと広げるものだ。Arduinoの可能性をさらに拡大する。しかしボクは、より多くの人を大規模なプロジェクトに導く可能性のある Leonardoのほうを期待したい。ボクは、簡単に習得できるものの大ファンなんだ。
オープンハードウェアのシーンはまだ若いが、びっくりするほど多くの人たちが、互いに学び合って、急速にその世界を広げつつある。先日開かれたオープンハードウェアサミットでも、オープンハードウェアのシーンが建設的な方向に進んでいて、その文化の大きな波をすでに起こし始めていることを知って大いに勇気づけられた。
どの店に入っても自由な改造が許されるハードウェアが売られている、そんな日をボクは待ち望んでいる。思い通りの使い方ができるよう改造すると法律違反になるようなものではない。自由に改造する権利が与えられているものだ。ATmega32u4へのArduinoのフルサポートがあるLeonardoは、そんな未来に我々をちょっとだけ近づけてくれる。みんながこれを使ってどんな製品を生み出してくれるのか、じつに楽しみだ。
– Jimmie Rodgers
執筆者紹介:Jimmie Rodgersはフルタイムのハッカー、アーティスト、作家、音楽家、その他なんでも好きなことをやる人。世界中をまわって物の作り方を教えている。オープンハードウェアのキットの開発と販売も行っている。なかでも人気のキットはArduino用の14×9のLEDマトリックスシールド、LoL Shield だ。
原文