Electronics

2014.03.03

モノのインターネットを理解したければ、「チョコレート」を考えるべし

Text by kanai

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私たちは昨年、QualcommのAlljoynイニシアチブやThe Thing Systemの流れに乗って、開発者たちに“モノのインターネット”をハックしてもらうためのオープンプラットフォームの創設に乗り出した。私たちが目指すのは、もっと楽しく、簡単で、より人々の興味をひくものだ(IFTTTのようなものだが、これはデバイスとアプリのためのもの)。これを使って開発者は、デバイス同士をつないで、それまで気がつかなかった新しい価値を発見し、生活をより便利にするアプリの世界を構築できる。デバイスは、メーカーや大きさやブランドなどに関わらずつなぐことができる。

逆に言えば、家庭用やウェアラブル(Nest、Hue、Fitbitなど)でインターネットを使うモノはたくさん現れてはいるものの、モノのインターネットについてはまだ気配もないということだ。

昨年の9月、私たちを含む10のチームがStartupBootcamp Amsterdamアクセラレータープログラムに参加が許可された。それは2013年10月から2014年1月まで開催されていた。私たちはそこで、ひとつの問題点とひとつの目標を訴えた。それは、どうやってプラットフォームを市場に導入するかだ。具体的には、つかみどころのない「サービスとしてのプラットフォーム」というアイデアを、人々が利用できるよう、また利用したくなるような、わかりやすく受け入れやすい形にするということだ。

メントール、Maker、Arduioの幹部、アプリ開発者たちに何百回も話を聞いてわかったのは、彼らがモノのインターネットを嫌っていることが問題なのではない、ということだった。問題は、アプリ開発者たちはArduinoやハードウェアを簡単に使えないことに常にフラストレーションを感じていて、反対にハードウェア開発者は、自分のスーパークールなデバイスのための便利なアプリを作れないことに苛立ちを感じていることだ。簡単に言えば、デバイスのデータをアプリ開発者が利用できる形に変換してくれるツールがないこと。ハードウェアメーカーが、インターネット上で安全に確実にデバイスのデータを発信して管理できる簡単な方法がないことだ。

そのフィードバックから生まれたものは、ハイブリッドな製品だった。ハードウェアなのだが、しかし楽しげなパッケージで、開発者が恐れを感じない親しみやすいデザインの、箱から出してすぐに、現実世界に対応するアプリをプログラムができるというものだ。フィードバックではさらに、Bluetooth Low EnergyとWiFiとセンサーを内蔵することも求められていた。もうひとつ、私たちのバージョンを成長させるためには、オープンハードウェアとオープンソフトウェアの道を選ぶべきだとも教えられた。

我々は、あるキットを考えた。最初に固まったアイデアは“フォレストガンプのチョコレートの箱”だった。いろいろなセンサーが入っていて、開発者は自由に選べる。しかし、それでは選択肢が多すぎるということに気がつき、もっともよく使われるであろう一般的なセンサーに種類を絞り込み、1本の“チョコレートバー”にすることにした。ポキンと折って切り離せるモジュラーで、ワイヤレスで、クラウド対応で、SDKやチュートリアルやデモアプリなども付属する。

私たちはそれを“KitKat”と名付けた。割って使えるからだ。しかし、Googleに先を越されてしまった(Androidの新バージョンだ)。訴訟問題になるのは嫌だ。そこで、“WunderBar”にすることにした。キャドバリーならそんなに怒らないだろうと踏んだのだ。我々の目標は、開発者を主体とすること。そして彼らに、このハードウェアをソフトウェアのように考え、感じてもらうことだ。割って、置いて、プログラムする。チョコレートのように楽しくて簡単だ。パッケージはWiFi/BLEベースで、6つのセンサー付きBeacon/BLEモジュールが含まれる。

次に、私たちはtweetonig の友だちの友だちに依頼して、チョコレートのようなケースをデザインしてもらった。その出来映えはゴージャスだった。すごく楽しい感じだ。3Dプリントで作ってくれたのだが、ハードウェアにぴったりフィットした。うまくいった。そこからは、一気にクラウドファンディングのキャンペーンへと話が進み、クリスマス開けに急いで立ち上げることができた。そのあたりの詳しい話はここにある(英語)。KickstarterからDragon Innovationに切り替えた経緯なども書いてある。気苦労の多い仕事だったが、後悔はしていない。

下は私たちがクラウドファンディングに使ったWunderBarのプロモーションビデオだ。

それから私たちは、大小さまざまな技術系ブログからの取材を多く受けるようになり、私たちの製品は、企業や学校の注目を集めるようになった。なかでも驚いたのは、ある大学が一度に20個のWunderBarを注文してくれたことだ。35人の学生のためのワークショップを開いて欲しいとも言われた。そのことは、WunderBarが、アプリ開発者のためだけでなく、教育にも役立つことを私たちに教えてくれた。

報道のおかげで、ヨーロッパの大手電子販売会社3社ともつながりができ、現在彼らと、販売について話し合っている。彼らはRaspberry Piを大々的に扱っていて、WunderBar も同じようにメイカームーブメントに貢献するものと見てくれている。しかし何度も言うが、これはハードウェアの視点ではなく、ソフトウェアの視点からハードウェアを見て、便利なアプリの元でモノをつなぐためのものだ。販売会社は、教育機関を対象にした大きな市場を睨んでいる。それは私たちにはまったく思いつかなかったことだ。

クラウドファンディングをやってわかったことが、もうひとつあった。私たちに資金提供してくれた人たちは、WunderBarをもっと簡単に、もっと進化させてほしいと考えていることだ。おじいさん、おばあさん、または子どもたちでもスマートなものが作れて、モノのインターネットを楽しめるようにと彼らは望んでいる。

チョコレーバーの発想は、最初は単なるギミックだったのだが、やがてそれは、魅力的で楽しいブリッジになることがわかった。より身近で、企業や大学や、技術系でない人たちも、本当のモノのインターネットを作りたくなるような刺激を与えるものだったのだ。クラウドファンディングを開始してからまだ3週間にしかならないが、私たちのビジョンにぐんと近づいた感じがする。

– Jackson Bond

原文