本日(6/18)、National Day of Making(Makingの日)に、みんなが期待と不安で待っていたホワイトハウス主導による取り組みの全容が発表された。全国規模のMakerコミュニティの拡大と強化に、非常に多くの人たちが参加してくれたことを知って、とてもうれしく思う。
初めてのWhite House Maker Faireが開催され、この「アメリカの製造業における草の根のルネッサンス」をさまざまな形で推進するMakerに、多くの団体や企業が支援を約束してくれた。
まずはここに紹介するリストを見て、Makeの最新取材報告に注目してほしい。
(日本語版編注:原文が膨大な分量のために以下は抄訳となっています。すべての項目の見出しは訳出しましたが、後半部分の項目の具体的な内容は訳出していません。必要な場合は原文を参照してください)
概況報告書:オバマ大統領が初のWhite House Maker Faireを開催
Makerの国:未来を発明するアメリカの学生と起業家に力を与える
本日、オバマ大統領は初めてのWhite House Maker Faireを主催し、新しいツールや技術を使ってビジネスを開発し、科学、技術、工学、数学(STEM)における重要なスキルを学び、アメリカの製造業の草の根のルネッサンスを先導する学生、起業家、一般市民のみなさんと集います。
大統領の行動の年にあたり、また、製造業、イノベーション、起業家精神を刺激する機会の拡大に焦点を当てた今週、大統領は、より多くのアメリカ人が、年齢に関係なく、そうしたツールや技術を使ってアイデアを現実のものにする能力を高めるための、オバマ政権とそのパートナーによる新たな一歩を発表します。
White House Maker Faireにて大統領により立ち上げられた取り組みは、以下のとおりです。
- Makerによる新規ビジネスおよび新規雇用の創設を支援する。13以上の政府機関と、Etsy、Kickstarter、Indiegogo、Local Motorsといった企業は、Makerへの一連の支援サービスを提供します。これには、スタートアップ向け助成金の拡大、アメリカ製造業と主要小売り業者とのつながりの強化、ビジネス指導およびトレーニングが含まれます。
- Makerになる機会に恵まれた学生の数を劇的に増やす。教育省と5つの機関は、150以上の大学、130以上の図書館、Intel、Autodesk、Disney、Lego、3D Systems、MAKE(Maker Media)といった主要企業とともに、より多くのメイカースペースの創設に関与し、作ることを教える教育者を増やし、学生たちが自分たちのアイデアを実現できるようツールや指導にアクセスしやすくします。
- Makerたちに私たちの喫緊の課題に挑んでもらう。患者のケアを支援する新しいツールを開発しているMaker看護師たちや、宇宙開発に参加するMakerたち、世界でもっとも弱い立場の人々の生活を改善するための低コストな技術を、国内や海外で開発するMakerたちの力を借ります。
これまでずっとアメリカは、機械職人、発明家、起業家の国でした。近年、3Dプリンターやレーザーカッターや簡単に使えるデザインソフトやデスクトップ工作機械といった技術が利用できるアメリカ人の数が増え続け、さらに多くの技術が日に日に開発されています。こうしたツールによって、ほぼあらゆるものをデザインして作ることができるアメリカ人が増えています。
メイカームーブメントの盛り上がりにより、アメリカには大きな好機がもたらされました。インターネットとクラウドコンピューティングがデジタル系スタートアップの敷居を下げたように、生産の民主化のための新しいツールがアメリカの製造業復活を助ける新製品の開発のための基礎を固め、全国規模で製造業におけるイノベーションと起業を推進しています。
全国のメイカースペースやMaker Faireなどのイベントを通して利用の機会が拡大しているこれらのツールは、スティーブ・ウォズニアクとスティーブ・ジョブズがHomebrew Computer Clubのメンバーだったときに最初のアップルコンピューターを開発して販売したのと同じように、新世代の起業家を刺激し、Makerたちに製造業スタートアップの創設を促します。指導者や教育者がそれを「伝授」することで、少年少女たちに、発明、研究、STEM教育による重要なスキルの習得に対する意欲を持たせます。
初めてのMaker Faireは、大統領がピッツバーグのTechShop(個人が製品を開発しテストできるメイカースペースであり製造工房)を訪問した翌日に開催されます。訪問の間、大統領は、政権と90名を超える市長による製造業のイノベーションと起業への支援を強調しました。その取り組みに関する詳細は、こちらとこちらをご覧ください。
第一回 White House Maker Faireの詳細
第一回 White House Maker Faireは、25を超える州から100名以上のMakerを迎え、メイカームーブメントによって開花した驚くほど多様な創造性と革新性を代表する30を超える出展が行われます。White House Maker Faireを見学したあと、大統領は、起業家、学生、業界のリーダー、市長、NPOの代表者たちに向けて所感を述べる予定です。おもだった出席者、出展者、その他の招待Makerの経歴はこちらをご覧ください。
本日行われる発表
新しい業界や雇用を生むMaker主導のスタートアップ支援への新しい取り組み
レーザーカッター、CNCルーター、3Dプリンターなどのラピッドプロトタイピングのための新技術が、プロトタイプ開発と製造業の起業のコストを劇的に低減させました。速くて安価なテスト、ティンカー(修正)、モニター、カスタマイズが可能になったことで、アメリカ国内の市場に近い場所での製造が優位となり、製造業の起業とイノベーションのドアが開かれます。こうした新技術の力が、新ビジネス立ち上げ、雇用創出、そして将来的には新しい産業の開発の機会をMakerに与えます。
こうした機会を活かすために、オバマ政権は本日、次の発表を行いました。
- Manufacturing Extension Partnership(製造拡張パートナーシップ) は、DIYからMade in the USAまでのスケールのスタートアップを支援します。Etsy、Kickstarter、IndiegogoなどでDIYプロジェクトとしてスタートしたビジネスを支援し、事業規模の拡大を進めるなど。
- Small Business Administrationは、Maker起業家のためのスタートアップアクセラレーターの追加支援を行います。2,500万ドル規模のアクセラレーターコンペを実施するなどして、革新的なハードウェア系アクセラレーターを支援。
- 米国特許商標局は、Makerスタートアップとスモールビジネスに対して新たな支援を行います。特許、知的所有権に関するMaker向けの相談窓口を開設。中高生のMakerに向けた起業教育。中学高校の教師に向けた特許と知的所有権に関する教育など。
- 11の行政機関が協力して、中小企業革新研究(SBIR)と中小企業技術移転(STTR)の各プログラムを通して年間25億ドル規模の助成金をMakerイノベーションを支援します。個人や小さなグループによるデザインの多様性を導く次世代の技術を支援。次のようなものがある。
- 国防省は耐火金属部品の安価な製造法などの提案のために30の製造技術を公開。
- 全米科学財団(NSF)は3Dプリンターなどの積層造形技術を応用した革新技術を募集。
- NASAは3Dプリンター用プラスティックの再利用のためのリサイクル、再生技術に出資。
- 農務省は農業系およびMaker系学校と大学を刺激するための2つの新しいコンペを実施。学生たちに農業研究事業団が持つ技術の商品化やプロトタイピングのアイデアを競わせ、農業系の起業や食料問題への取り組みを促す。
大統領の呼びかけに応えた企業の取り組み
- Local Motorsは今後10年間でマイクロファクトリーを100件、新設し製造業のイノベーションを加速。
- Indiegogoは、アマゾン、インテル、オートデスクと協力してメンバー向けのスタートアップ・コンペを実施。
- TechShopはセントルイスとロサンゼルスに出店を発表。
- GrommetはMakerによる新製品と小売店舗との効率的な架け橋となって小売り業の改革を支援。
- インテルはアメリカ国内に6つのMaker Cityを指定し、教育、小規模な製品デザイン、開発、製造を支援。
- Kickstarterはメイカースペース専用のカテゴリーを新設。
- Etsyは2015年中にCraft Entrepreneurshipプログラムを10の街に拡大し、カリキュラムを公開して、芸術的スキルを引き出すことで失業者の起業を支援。
- Trimble Navigationはクラウドベースのソフトウェアと3Dプリントツールを使ってMaker向けの無料ソフトウエアサービスを拡大。
- Google、マイクロソフト、EsriはMaker同士のつながりを強め、新しいメイカースペースを開設し、既存のメイカースペースを探しやすくする。
より多くの学生に起業意欲を起こさせ準備できるようにするための新しい取り組み。
メイカームーブメントには、アメリカの学生たちの想像力を膨らませ、未来を発明するスキルを身につけさせる力があります。手を動かす教育とモノを作ることは、創造性、問題解決力、協調性、自己表現力を高めるばかりでなく、少年少女たちのSTEM(理系分野)への興味と製造業への就職意欲を高めます。
より多くの学生が、必要なツールや指導者や場所に出会えるようにするために、オバマ政権は次の発表を行いました。
- 教育省は、そのパートナーとともにMake Over(作り直す)チャレンジを立ち上げ、学校により多くのメイカースペースを創設する。地元企業の協力により、市民大学や高校の技術室を21世紀型のメイカースペースに作り直す計画。
- 図書館情報サービス機構(IMLS)とそのパートナーは、作ることをサポートするプログラムを発表する。メイカースペースを設けたり、作ることに関連する優れたプログラムを行った図書館や博物館に対して100万ドルの賞金を出す。Maker@ Your Museum and Libraryツールキットを提供する。これに応じて各地で行われた取り組みには、次のようなものがある。
- Kid Museum:メリーランド州モンゴメリー郡の子ども博物館7,500平方フィート(約670平方メートル)の子ども向けメイカースペースを開設。
- The New York Hall of Science:年間約50万人の来場者に、Make Academy、Little Makers、SciPlayなどのプログラムを通して作って遊ぶ体験を提供する。Maker Mediaとの協力で9月にWorld Maker Faireを開催する。
- 全米科学財団(NSF)は、作ることを通したSTEM教育とイノベーションの研究を行う。子どもたちの理系分野への興味を高め、市民科学、市民探検を推奨する。デザイン、プロトタイピング、アドバンスト・マニュファクチャリングの研究を支援する。来年は、Maker、研究者、製造業者、図書館、博物館関係者などを集めてMakers Summitを開催する。
- DARPAは、1,250万ドル規模のMENTOR2プログラムの一貫として、初めてのMaker関連の賞を創設する。このプログラムは、軍隊で働きたい学生や、すでに軍隊に所属している学生を対象に、最新ツールを使ったデザイン、プロトタイピング、製品評価を通じてエレクトロメカニックシステムの理解を深めさせようというもの。
- スミソニアン博物館は、膨大な歴史的資料を使って数年間におよぶMaking Initiativeを実行する。スミソニアンの膨大なコレクション、知識、人材を駆使して今後5年間で、すべての年代のMakerに対して、歴史、現在の問題、未来を学んでもらう。手を動かして学ぶ機会を増やし、所蔵品の3Dデータ化も進める。
- 教育省は、21st Century Learning Centers (21st CCLC)を通して、放課後や夏休みの活動に対してオバマ政権で最大の投資を行う。STEM教育の一環として作る教育方法を開発する。IMLSと協力して、学校のメイカースペース利用を推進する。
- 農務省と4H Clubとのパートナーシップによる農村地区に住む27,000名以上の学生に発明と作ることへの刺激を与える。農村部の子どもたちにも手を動かして作る教育を行おうという取り組み。移動メイカースペースや放課後の学校を利用する。
一般企業も大統領の呼びかけに応じています。
- コロンビア大学からカリフォルニア工科大学まで、150以上の大学の300万人以上の学生たちが、大学や彼らのコミュニティでMaking活動を推進。 アメリカのさまざまな高等教育機関が大統領の要請に応え、Makingを通じた教育、メイカースペースの普及、学生の起業などへの支援を表明。次のような取り組みがある。
- Case Western Reserve University:Think[box]という5万平方フィート(約4,600平方メートル)のメイカースペースを新設。国内の製造と雇用を創設する。
- Carnegie Mellon University:メインキャンパスとサテライトキャンパスに500万ドルをかけてメイカースペースを創設。インテルと共同で小学校から高校までの先進的な作る教育を行う。
- The Massachusetts Institute of Technology:学内でのMaking活動に関する詳細な白書を作成し、Maker主導のカリキュラム、学内でのメイカースペースの運用、学生主導のMaking文化について明らかにする。
この他、150以上もの大学で行われている取り組みは、こちら。
- 国内125の図書館がMakingの支援のために結束。地上の小さな公共図書館からアメリカ最大の図書館までが Making 支援を表明。次のような取り組みがある。
- Allen County Public Library:地元の非営利メイカースペース、TekVentureと協力して、図書館の近くに24時間対応の大型のメイカースペースを開設する。
- Chicago Public Library Maker Lab:女性やマイノリティーのMakingへの参加に力を入れていく。
- Broward County Library:学生のための理系活動を支援するCreation Stationを開設。
- East Baton Rouge Parish Library:2014年9月にMini-Maker Faireを開催する。
125のすべての図書館の取り組みのリストはこちら。
- インテルは全国のメイカースペース展開を拡大し、Intel Computer Clubhousesのネットワークを通じてさらに25,000人の若くて精力的なMakerを参加させ、高等教育も拡大する。
- 3D Systems、コカコーラ、will.i.amは、3,000のすべてのFIRST Roboticsチームが3Dプリンターを使えるよう、1500台の3Dプリンターとキットを提供する。
- ディズニーは若者の創造性を育てるための体験、リソース、ツールに2,000万ドル以上を投資。
- シェブロンはFab Foundationに1000万ドルを寄付し、新しく10件のFab Lab開設を目指す。
- CognizantはMaking the Futureプログラムを通じたMaker支援のための投資を3倍に増額し、今後3年間で200のコミュニティを援助する。
- オートデスクは次世代の労働力を育てるための子ども向けMakerプログラムを立ち上げる。
- LEGOは Junior Maker Programを発表。国内の750の図書館にMakingツールキットを配布する。
- Maker Education Initiative(Maker Ed)は子ども向けメイカースペースの普及のための新規キャンペーンを立ち上げる。
- 100Kin10ネットワークは機運を高めて、優れた教師を支援し、子どもたちをMakerに育てる。
- MacArthurとそのパートナーはCities of Learningを拡大し、Makingバッジをサポートする。
- MozillaはMaker Partyキャンペーンの新パートナーを発表し、Makingと学習を応援。
- Brit + Coはあらゆる世代のMakerとつながる取り組みを開始。
- マスターティーチャーがMakingカリキュラムを作成して、手を動かすプロジェクトベースの科学学習に関する新しい基準を支援する。
- Digital Harbor Foundationは 新しいCenter of Excellenceを開設し、学校でのMakingを支援する。
Makerの創造性とスキルを結集して喫緊の問題に挑む新たな取り組み。もっとも緊急の問題の解決には、すべての年代のアメリカ人の情熱と創意工夫とスキルが必要です。こうした市民の力が、新鮮な視点から問題に取り組み、新しい仲間のネットワークを築き、新しい解決策のためのツールをデザインします。この積極的な市民とツールが出会うことによって生まれるMakerの力が、大きな問題に立ち向かおうとする多くの国家機関や民間企業のパートナーたちが強力な助けになると頼りにするところです。
本日発表されたおもな取り組みは次のとおりです。
- USAID、World Bank、Lemelson Foundation、インテル、その他の企業が、人々の暮らしと健康を増進させるために世界のMakerを支援。
- NASAとそのパートナーは、宇宙の可能性を広げるために、新世代の宇宙愛好家とMakerを支援。次のような取り組みがある。
- 国際宇宙ステーションで3Dプリントを行う “Future Engineers” プリントチャレンジ。
- 21組の未経験者を対象としたCubeSatの放出。
- 地場の材料から家を作る積層造形コンテスト。
- 政府機関はラピッドプロトタイピングを前線に持ち込み、重要なミッションにプレッシャーをかける。
- 国土安全保障省科学技術局はGovernment Maker Corpsプログラムを立ち上げ、行政サービスにあたらせる100人以上の機械技師やイノベーターを募集。
- NIHは、初の政府出資による3Dプリント可能な生物科学および生物医学ファイルのデータベース、NIH 3D Print Exchange(3Dprint.nih.gov)を立ち上げる。
- 新しい委員会とツールによって、看護を改善する革新的な看護師を支援。
- Global Minimumがアフリカの300名以上の若いMakerを支援。
[原文]