エコロジーやサステナビリティに関する研究やファブリケーションに特化したGreen Fab Lab(第一回目はこちら)。世界各地に広がっているFab Labだが、各々違った運営形態があり、Fab Lab Barcelonaの場合は建築系大学院のIAACのサポートを受けて運営されている。その下でGreen Fab Labはバルセロナ市の協力を受けたBarcelona Smart Cityというプロジェクトの一部という位置づけになっている。そしてバルセロナ近郊の国定公園の敷地を提供され、豊かな自然の中で研究に打ち込んでいる。
Green Fab Labで実際に研究生活を送っているのは、Green Fab Labの研究プログラムのメンバー、授業の一環で訪れるIAACの学生たち、そしてMITのサポートを受けて運営されているFab Academyの学生たちなどだ。彼らが数か月単位で入れ替わりで入る他に、夏場に短期間の合宿などのために内外から学生が訪れることもある(最大30~40人ほどが宿泊できる)。
ラボに向かう途中の山道で不法投棄された冷蔵庫を見つける。しかし、これもリサイクルの対象に。ともかく研究生活というと運動不足で不健康になりがちだが、皆若いだけでなくとても健康そうだ。大きなラボラトリーのスペースに5名ほどのメンバーがいるが、必ずしも農業やエンジニアリングが専門というわけではなく、それぞれのプロジェクトに様々なバックグラウンドを持ったメンバーが配されている。 その他に、この施設には地元の常駐スタッフ2名が住んでいる。
Fab10の時の写真。このLabのスペースを見学しに世界中からFab Labのメンバーたちが来ていた。
キノコを人口的に繁殖させるためのプロジェクト。どのような品種がどのような状況に適しているかを調べている。
Labの実習生の研究プレゼンテーション。この日のテーマは周辺の地形データを使った日照量や水量などのシミュレーションについて。各要素をモジュール化してパラメトリックに数値を変化させ、どの場所にどういった農作物を育てるべきか最適化を試んでいる。発表者の彼女は元々の都市のランドスケープについて専門に研究していたそうだ。
レーザーカッターでカッティングして作った世界各地の様々なタイプの形態の養蜂箱。といっても蜂蜜を取るためではなく、バルセロナの生物学研究所と連携して蜂の生態を調べるOpen Beehive Projectのために作られた。巣箱の状態は各種センサーとArduinoによってモニタリングされる。
苔を繁殖させて発電させる装置。水分や温度など生育条件をArduinoを使って管理する。
こちらも苔を使って発電するために制作された装置の様々なプロトタイプ。
淡水中で藻を繁殖させるため型。
水中の成分の条件を変えて、水中の藻がどのように繁殖するかを調べている。
日本の農業では異端視されることもある福岡正信の自然農法の本を見せてくれた。ヨーロッパのエコロジーに関心のある者の間では人気があるが、実際にFood Labと呼ばれる農園で様々な作物を育てている(前回分参照。)
エコロジーには関係ないが、とにかく作業スペースが広く取れるので、Fab Lab Barcelonaメンバーが市内にあるFab Labでは手狭でやりにくい作業をこちらに持ってきて作業していた。イタリアのディスコに納入する照明器具だとか。バルセロナは音楽関係のMakerも多い。
先ほど照明器具を作っていた男性が帰り際、Beehive Projectの巣箱に取り付ける基盤の加工に失敗したLabのメンバーに機械の癖や使い方のコツを指導してあげていた。こういった交流は、様々なバックグラウンドを持った者同士が出入りするFab Labらしい。
「現代社会では消費とクリエイティビティが分離してしまっている。そこを考えなければいけないと思っている。」Fab Labバルセロナの代表、Tomas Diezはなぜ今Fab Labでエコロジーなのか、その理由についてこのように語っている。
引き続き、このユニークな場がどのように活用されていくか、今後も機会を見てその進展をレポートしたい。
─ 類家 利直