Crafts

2015.08.28

金継ぎ — 壊れた器を修復する日本の技

Text by Sophia Smith
Translated by kanai

kintsugi-1

手が滑ってマグカップをキッチンの床に落として割ってしまったとき、どんな気持ちがした? 少なくとも、ビックリしたのと面倒だと思う気持ちが入り交じった感じだったと思う。それがもし、家宝だったり、思い出の品物だったりしたら、ホウキで破片を掃除するときに、罪悪感と残念な気持ちが加わる。

日本では、破片を捨てるかわりに、500年続く伝統の金継ぎ技術で修復する。漆と金、銀、またはプラチナで破片をつなぎ合わせるのだ。

Daniel Evansが監督した下のVimeoビデオでは、まず日本文化における金継ぎの重要性が解説されている。27歳という京都の最年少金継ぎ職人、下出宗明は、日本文化において金継ぎは「物に宿されている精神的な背景や歴史を理解しているので、とても重要なのです」と語っている。これは、「古いものや壊れたものに美を見いだすこと」と下出が解説する「侘び寂び」の哲学に通じるものだ。

kintsugi-2

欧米の一般的な認識では、物が壊れるとその価値も失われるとされている。金継ぎの職人も、それを愛でる人も、永遠に続く消費主義は精神的な豊かさをもたらすものではないと教えてくれている。

金継ぎの技には、買い換えるのではなく、畏怖し、大切に思い、修復する哲学が込められている。一度壊れて、その割れ目を金で埋められた器は、それ自身の歴史の証だ。下出はこう指摘する。「金継ぎの重要性はその見た目にあるのではありません。その美と価値は、それを見る人の中にあります」

kintsugi-3

日本人以外のMakerには理解できないかもしれないが、私たちも、壊れたものの可能性に気づけば、買い換えるのではなく、アップサイクルしたり、再利用したり、作り変えたりしてその哲学を実行している。

下出はこう話す。「自分で器を修復するのは、ひとつの美しい生き方です」

Kintsugi: The Art of Broken PiecesGreatcoat FilmsVimeo

原文