2015.12.02
9ドルのC.H.I.P.対5ドルのPi Zero:10ドル以下コンピューターの徹底比較
今、5ドルのPi Zeroと9ドルのC.H.I.P.という、Makerのための10ドル以下のコンピューターが発売されている。インターネットでは、どちらが速いか、安いか、プロジェクトに適しているかなどの論争が起きている。あまり建設的でない論争もあるが、建設的でなければならない必要もない。とにかく、この2つのボードの長短を探ってみよう。
スペックの比較
Pi ZeroとC.H.I.P.のメインプロセッサーはほぼ互角。どちらも1GHzで駆動し512MBのRAMがある。ただし、C.H.I.P.のほうは新しいARMv7アーキテクチャーを採用している(Pi Zeroは古いARMv6アーキテクチャー。混乱するのだが、ARM11とも呼ばれている)。どちらもUSBから電源を取るが、C.H.I.P.はリチウムポリマー電池が使え、充電回路も内蔵している。Pi ZeroはOSとアプリケーションのストレージとしてmicroSDを必要とするが、ソフトウェアの交換や同じサイズのメモリーの拡張にも使える。C.H.I.P.には4GBのNANDフラッシュストレージが内蔵されていて、メモリーにOSをロードした状態で出荷される。拡張にはUSB(SDよりも高速)と外部ドライブを必要とする。
Pi Zeroには空のI/Oピンコネクターが40カ所ある。一方C.H.I.P.のI/Oは2列の40ピンメスヘッダー(合計80)で、アクセスが簡単になっている。PiにはHDMI miniからビデオ出力ができ、コンポジットビデオ出力も可能。ただし、自分でハンダ付けをしなければならない。C.H.I.P.にはHDMIがない(HDMIアクセサリーボードがある)が、TRRSジャック(ヘッドフォンジャックのようなもの)でコンポジットビデオ出力が可能だ。
この2つのボードのいちばんの違いは、接続性だ。C.H.I.P.にはWiFiとBLEが内蔵されており、Pi Zeroにはアクセサリーを追加しなければインターネットに接続する方法がない。これを可能にしようとすると、Zeroのコストは跳ね上がる。WiFiドングルだけでなく、それを使えるようにする電力供給型のUSB ハブ、キーボード、マウスも必要になるからだ(周辺機器用のUSBポートと電力用のポートが必要なため)。
考え方の違い
この2つのボードの論争は、開発の経緯にも及んでいる。既存の製品から部品を削除して安くするのがよいのか、それとも、高機能で安い製品を最初から開発するのがよいのか。
Raspberry Pi財団は、既存の製品から部品を取り除いて安い製品を作った。Pi Zeroは、コネクターの少ない小さなボードだ。CPUはRaspberry Pi B+よりも高速な300MHzだが、それはソフトウェアの設定によるもので、同じ設定がPi B+にも行える。
かたやNext Thing Co.,は、製品ラインナップにこの製品ひとつしかない。C.H.I.P.は、規模の経済と、中国の深センでのサプライと製造のパートナーと密接に開発を行ったことによって安価になっている。
今はこんな状況だ。6カ月前、Next Thing Co.は9ドルコンピューターのKickstarterキャンペーンを行い、200万ドルの寄付を得た。現在ボードは寄付者に対して出荷されている。一般の予約受付はサイバーマンデー(11月第四木曜日)に開始されている。
一方、この前の木曜日には、Raspberry Pi財団が5ドルコンピューター、Pi Zeroを発表した。それはMagPiマガジンの付録となって一気に普及し、小売店では発売翌日に完売となった。
所有コストと小売り価格
C.H.I.P.もPiも、実際に使うとなると、本体価格以上のコストがかかる。電源ケーブルやキーボード、マウス、ディスプレイなどは、どちらにも必要だ。しかし、比べてみると、5ドルのPi Zeroのほうが、C.H.I.P.よりも所有コストが高いことがわかる。
実際の運用コスト
Piを使うためのコストがいくらかかろうが、C.H.I.P.のHDMI拡張ボードを買う必要があろうが、これらの製品が存在することが素晴らしい。ほんの7カ月前、1GHzのコンピューターが10ドル以下で発売されるというニュースだけでも熱狂したものだ。これらのボードを実際に使用するには周辺機器が必要になるが、総額はいたって安価だ。
コミュニティ
最後に、コミュニティを比べてみよう。Raspberry Piは2012年に登場し、何百万という数が普及している。使用可能なソフトウェアは数知れない。さまざまな問題に対処してくれるユーザーのコミュニティも巨大だ。
C.H.I.P.は新規参入組だが、大きな期待が寄せられていた。これは、Linuxとオープンソースソフトウェアとハードウェアの強力な関係に支えられている。大きな支持を得られることだろう。しかし現在のユーザーは、クラウドファンディングの寄付者のみだ。その足下が成長するには、ちょっと時間がかかる。
さて、この安価でパワフルなデバイスがどう成長するだろうか。みなさんなら、どんなプロジェクトに使ってみたいか。コメントをよろしく。
[原文]