2016.01.25
BB-8の3Dプリントで学んだこと
『スター・ウォーズ』の予告編で、BB-8が転がっていく場面を見て、どうにか自分でも作れないかと考えるようになった。発泡スチロールや粘土なども試してみたが、どれもうまくいかなかった。
そのうち私は、新しくできたBB-8 Builders Clubにたどり着いた。これはFacebookのグループで、当時はまだメンバーは数人しかいなかった。現在は、映画とそっくり同じドロイドを作りたいという熱心なメンバーで数千人規模になっている。彼らは、写真を見たり、デジタルを駆使してサイズを割り出すなど、驚くべき方法でBB-8の正確な寸法や細部を調べ上げている。鍵となったのは、使用されているパーツを見つけることだった。それがわかれば、他の寸法も計算できる。
このクラブを立ち上げた2人の創設者は、3Dプリント用のパーツを、ぴったり組み立てられるよう正確に作るためのアイデアをやりとりしていた。そこから、私が必要としていたものが生まれてきた。クラブのメンバーに3Dプリント用のパーツのファイルが公開されると、私はいち早くそれに飛びつき、BB-8の里親になろうと製作を開始した。
最初のパーツ(メインのレーダーアイ)をプリントしたとき、そのデータの細かさに驚いた。それとともに、詳しい説明書まで作られていた。
私は自分のオンラインショップで3Dプリントしたパーツを販売したことがあるので、プリントベッドから取り出したばかりのパーツは、そのままでは飾ったり色を塗ったりできる状態ではないことをよく知っていた。だが、あの悪名高き「等高線」効果を削り取ることを考慮に入れたサイズまでは考えたことがなかった。
プリントしたBB-8のレーダーアイを紙ヤスリで磨き、表面を滑らかにする作業の間、この先のことが思いやられた。オービタルサンダーでひとつのパーツを完全に満足のいくまで磨きあげるのに35〜40分かかった。このとき私は、製作を続けることを決意した。このやり方で一体どうなるのか、やってみることにしたのだ。
頭部(我々はドームと呼んでいるが)は、パネルの状態で少しずつ形になっていった。プリントに14時間。最初のパネルが磨ける状態になった。そして2枚目、3枚目、4枚目が準備できた。それぞれを研磨しながら、この作業が一生続くのではないかという気になった。
BB-8のドームの上の方には、銀色のリングがある。我々はそれをパイパネルと呼んでいる。これは、磨いた金属に見えるように仕上げなければならない。パイパネルをプリントしたあと、クラブのメンバー数人から話を聞き、それまではやってこなかった作業を行うことにした。バフを使った磨きだ。
おお、このペイントはうまくいった。指で塗料を塗りつけ、ところどころ擦って、擦れた痕のようにした。擦った結果、熱によって塗料の成分が変化して、素晴らしいシルバーメタリックの感じが出た。
私はこのパーツをまた下地が出るまで磨いた。完全にプリントの痕が消えるまで、何度も磨いた。
この時点で、これまでに仕上げたパーツの組み立てを開始した。最初は、ドームの4枚のパネルだ。
それから、パイパネルとドームの頂点のパネルにそれぞれ設けられている穴に磁石を埋め込んだ。これは、簡単に取り外してドームの中に電子部品を取り付けやすくするための工夫だ。ドームのパネルを組み立てると、つなぎ目がわからなくなるように磨いた。模型用のパテをたっぷり使って、あの頼りになるオービタルサンダーで研磨したら、つなぎ目はきれいに消えた。
そうして表面が滑らかなドームができた。これに下塗りを1回行ったら、まるで最初からひとつの部品だったかのように見えた。プリントの痕がしっかり消えるように、この下塗りと研磨の工程を5回ほど繰り返し、1回目の白を塗った。
「おお、まるでひとつの部品みたいだ!」と私はこの時点で大いに喜んだ。しかし、時間は無駄にできない。BB-8のオレンジ色の塗装に入らなければならない。近くの金物屋へ行き、そのときはパーフェクトと思えたスプレー塗料を買ってきた。2回塗りを終えたところで、ドームに蛍光オレンジの線を入れた。
ここで考え直す。仲間に話を聞いたり、おしゃべりをしているうちに、パントーンの色がいいということになった。なんとありがたいことか。私はそれから24時間以内に、正しいオレンジ色の塗料を手に入れて、彼の蛍光色の線を塗り直すことができた。
成功だ! 色がぴったり合って、すべてが映画と同じに見えてきた。
しかし、時間がない。この時点でもう2015年の11月。映画のプレミア公開の日が迫っている。急いで次の部分に移らなければ。私はDMMのプリントを開始した。クラブのメンバーでない方に説明すると、これはドームの底にあたる部分だ。磁石とベアリングが組み込まれて、ドームが胴体の上に「浮かんでいる」ように見せるためのパーツだ。これをプリントするようプリンターを設定すると、私はドームのペイント作業に集中した。
次なる作業はウェザリングだ。私は自問自答した。「BB-8は砂漠で暮らしている」(そう思った)「どんなふうに汚したらいいんだろう?」映画のスクリーンショットを調べ、時間のかかるプロセスに入った。茶色を薄く塗って、すぐにキッチンタオルで拭き取る。もっとも汚れるだろう、またはオイルが滲み出るであろうと思われる部分には、それを何度か繰り返して層にする。
すべてを組み立てるときがきた。BB-8の磁石マウントをプリントすると、私はそこに超強力な磁石と、テフロンのボールを埋め込んだ。必要なパーツを接着剤で固定すると、驚いた。転がるメカニズムと磁石を組み込まれたBB-8の頭部が完成した。すごくいいじゃないか!
ここで手を止めるわけにはいかない。よりハイエンドなプリンター、Lulzbot Taz 5を購入したあと、ボディのパネルをプリントするのにいちばん適したプリンターを探すことになった。それが厄介だった。それから数日間、私は失敗プリントと、いまひとつのプリントに悩まされることになる。やがてそれも解決し、私はパーフェクトなパネルをプリントを開始した。
毎日たくさんのパネルがプリントされる。お客さんから依頼を受けたパーツをプリントする合間に時間を作らなければならない。オレンジのリングは毎日4分の1ずつプリントされた。中央の円形は半分ずつ。白い「三角形」は3分の1ずつだ。
しばらくすると、パネルの山ができあがった。そろそろ作業に取り掛かるときだ。再び、あの頼りになるオービタルサンダーが登場だ。パネルの各所を磨いて磨いて磨き抜いた。そして、すべてがぴったり合うかどうか、試しに組んでみた。
他の仲間たちの間では、アメリカのメーカーが作っているある特定のアクリルのボールを使うのが普通になっている。これを使うかどうかは自由なのだが、これは実際に映画に使われているものだ。型で作られているので、サイズが一定だ。半球が2つという形で売られている。2つ合わせると、ほぼ真球に近いボールになる。これにプリントしたパネルを貼り付けていけばよい。
しかし、私はできるだけ早くBB-8を完成させたかった。それにアクリルボールの膨大な費用を考えると、代わりの方法を探さざるを得なかった。インターネットで探してみると、同じサイズのポリスチレンボールがあった。臨時のボディの土台に使えそうだ。少なくとも、アクリルのボールをアメリカからイギリスに取り寄せることができるようになるまで使える。それはまた、BB-8をリモートコントロールにはできないことを意味していた。ただの置物になってしまう。しかし落胆はしなかった。それでも、私はフルサイズのBB-8を作っている。置物になんかするものか。
ボディ用のボールが届いた。それはびっくりするほど頭部とのバランスがよかった。ドームはボディの上に、ほぼ正確な高さに「浮かんで」くれた。次なる作業は、ボディ用のパネルを仕上げ、塗装して組み立てることだ。
毎晩毎晩プリントし続けた結果、中央のパネルのセットと、オレンジのリングが揃った。だがもう12月。映画が公開される前にBB-8を完成させることはできなかった。
プレミア公開には間に合わなかったが、順調に製作が進んでいる。あとは白い三角形をいくつかプリントするだけだ。すぐにボディを完成させて、目の前で私のBB-8を愛でることができるようになる。
作業はつづく……
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