2016.06.10
Maker FaireはいかにMakerコミュニティに貢献しているか
今年のMaker Faire Bay Areaでは、例年のとおり日曜日の朝にアダム・サベージが登場して、「電気キリンの上の説教」とも呼ぶべきスピーチを行った(下のビデオ)。彼は電気キリンのRussellの上に立ち、集まったファンたちに語りかけた。メイキングの価値とそれが彼の人生に与えた影響について、心に残る話をユーモアを交えて語ってくれた。話が終わり、質問コーナーになった。すると、ひとりの若い女性が彼にこう質問した。自分のやっていることを悪く言われたらどうするかと。アダムはしばらく考えてから、キリンから降りてきて、その女の子を抱きしめた。
彼はまた話に戻った。重要なのは、クリエイティブになるためのサポートが必要だということ、そして、サポートされていると感じることだという。彼は自分にはサポートがないと感じていたころのことを振り返って言った。そしてそれは、彼自身が他人をサポートしていない証拠だと気がついた。互いにサポートしあうことが、どれほど大切かを彼は強調していた。
彼の話は、人と違うことをしようとしている人たち、クリエイティブなリスクを冒している人たち、成功したり失敗したりしている人たちの心を打った。私もそのひとりだ。彼の言葉を思い返すと、Makerコミュニティは、たしかに大勢の人たちがサポートし合って成立している。互いの作業を助け合い、自分が考え、作り、形にしたものが、すべての人たちに影響すると信じる人々の集まりだ。
日曜日の夜、Maker Faireが終わったあと、このイベントを支えてくれた人たちのためのパーティーが開かれた。そこには、Maker Faireに協力してくれた熱心な人たちが大勢いた。大切なのは単に彼らの労力だけではく、イベントを作ろうと思う人たちが、来場者ともいっしょになって、どのように協力し合ったかだ。パーティーで、私はアダム・サベージの言葉を借りて短いスピーチを行った。Maker Faireがこの協力的なMakerのコミュニティを、ベイエリアだけでなく世界中に育てる。Makerたちに感謝し、この週末、彼らを世話してくれたことが、このコミュニティの助け合う文化をさらに育てることになると信じると私は話した。
私たちのコミュニティにおいて、協力的であることは大変に重要だ。だから、新しい人も入りやすいし、みんなも歓迎する。やったことのないことがやれるという自信がつき、自分の能力に対する新しい信頼も生まれる。
Maker Faireは、ネガティブではなく、ポジティブな人の集まりだ。楽観主義に溢れている。それは、自分に自信を持っているだけでなく、他人のことも信頼しているからだ。
だからこそ、Maker Faireはこの11年間、力強く開催されてきたのだ。それは一時的なものではなく、トレンドでもなく、成長し広がる本物のムーブメントだ。今年は世界中で190以上のMaker Faireが開催される。そのひとつひとつで、最初のMaker Faireで見たのと同じ情熱と楽観主義が育まれるのだ。
それは私たち人間にとって、ごく根源的なものだ。私たちは、意味のある、私的なことをしたいと思う。同じ興味と情熱を持つ人たちとつながりたいと思う。
ここに、Maker Faire Bay Areaのお土産を列挙しよう。
・ 1300組のMakerが出展してくれた。すべて見て回るには時間が足りない。私は終わってからビデオで、この3日間で見られなかったものを見た。
・ 金曜日には4,000人の小学生を招待した。彼らは70台ものバスを連ねてきた。この機会がなければMaker Faireに来なかったであろう子どもたちが大半だ。Maker Faireを見て、肌で感じてほしい。
・ コミュニティは独自の習慣を生み、それに依存するようになる。私たちの場合は、金曜日の夜のMakerのためのパエリアディナーがある。多くのMakerたちが育っていったが、このディナーは今でも同じ感覚だ。実家に帰ったような、いろいろな意味で私たちの栄養になってくれる。
・ オープンであること、そして教え合うことがコミュニティを形成する。そして、協力がコミュニティの存在意味を強化する。
・ Makerも見学者も、人はいろいろなところから集まってくる。私が面白いと感じたのは、世界のいろいろな地域から来たMaker同士が知り合うなどして、Makerたちがより深くMaker Faireに参加するようになることだ。私は韓国、中国、シンガポール、エジプト、日本、イタリアのMaker Faireを見学して、Makerたちに会ってきた。
・ 私はパキスタンから来た女性司書に会った。彼女たちはMaker Faireを見て大変に驚き、彼女たちの国でどのようにしたらMakerのコミュニティが作れるかを知りたがっていた。
・ 今年は、前年よりも多くの大学がMaker Faireに参加した。MIT、スタンフォード、カリフォルニア大学バークレー校などだ。メイカースペースは、大学のキャンパスでも必須の施設になっている。もう単に研究者や教師のためのマシンルームではない。学生たちにも開放され、授業以外にも利用されるようになった。
・ 幼稚園から小学生までの見学者も、Makerでもある教師に連れられて大勢来てくれた。Makerとして出展した子どもたちも急速に増えている。
・ 米国エネルギー省や、多くの国立研究所もMaker Faireに参加してくれた。彼らは、Makerコミュニティに加わって、この社会が抱える多くの問題解決を手伝ってもらおうと考えている。
・ 同様に、産業界も、イノベーションの源としてMakerの価値に気づき始め、コミュニティに参加したいと考えている。
Maker Faireが非常に多くの人たちを集め、アート、科学、技術、ビジネス、クラフト、食物、仕事、遊びといったこの社会の多くの分野のバランスをとる力があることには驚くばかりだ。私は、このイベントを作ってくれたすべてのMakerと関係者に、そして、私たちの仲間となって、メイキングとMakerコミュニティを称賛してくれるすべての人たちに感謝したい。
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