2016.07.04
WOVNS:デジタルデザインをオーダーメイドでジャカード織りの生地にするサービス
DenaとChelseaのMolnar姉妹が立ち上げたWOVNSは、ジャカード織りという工業用の手法を、みなさんの手の届くものにするものです。ShapewaysやOSH Parkといったプラットフォームと同じように、WOVNSは個人がアップロードしたデジタルファイルからカスタム製品を製作します。WOVNSの場合は布製品です。
WOVNSは現在、クッション、枕、バッグ、スカーフ、ひざ掛け、ドレス、その他の家庭用雑貨や布製品に使用できる生地を提供しています。ジャカード織りの生地は、DIYプロジェクトにもユニークな布製品を製造したい人にも向いています。WOVNSができる前までは、ジャカード織りは大量生産の業務用に限られていました。しかし、多くの人から上手に注文を受けることにより、WOVNSは1ヤード(約90センチ)からの注文生産を可能にしました。現在はKickstarter キャンペーン中で、バッカーには一足早くWOVNSプラットフォームにアクセスしていただけるようになっています。私たちは、MakerコミュニティにWOVNSを広め、新しいユニークな分野をMakerにもたらすことを願っています。
スケーラブルな製造
通常のデジタル製造とは違い、ジャカード織りはスケールの調整が可能です。3Dプリントやレーザーカットなどのオンデマンドの製造サービスの場合は、大量生産には向いていません。たとえば、ひとつプロトタイプを作ってから、射出成形など別の大量生産方法で製造するのが普通です。そこでは、まったく異なるデザイン上の制約が生じます。そこがプロトタイプの難しいところです。大量生産する場合にどこに問題が生じるかを予測しなければならないからです。
それとは対照的に、WOVNSは大量生産に使用されるものと同じ業務用のジャカード織機で生地を生産します。つまり、1ヤードのプロトタイプと何百ヤードもの大量生産品とがまったく同じ品質、同じ仕上がりで作られるということです。これによく似たものとして、プリント基板があります。OSH Parkなどは個人から小口の注文を受けて作ったものと、まったく同じものを大量生産してくれます。こうしたジャカード織りのスケーラビリティが、WOVNSの利用者に、新しいデザインの実験から、アパレルのカスタムラインや家庭雑貨製品などの大量生産までを簡単にできるようにしているのです。これは、オリジナルの生地でDIYプロジェクトをしたいと考える人だけでなく、プロのクラフターやブティックデザイナーにもアピールする点だと思います。
ジャカード織りについて
ジャカード織りでは、個々のデザインが生地自体に織り込まれます。それは、現代のコンピューターの先祖とも呼ぶべきジャカード織機によって実現しました。ジャカード織機は、数百数千本の糸を個々にコントロールして、デジタルデザインを忠実に再現していきます。1本ずつの糸がコントロールされるため、ジャカード織りは、驚くほど複雑で細かいパターンを作り出すことができるのです。
ジャカード織機は1801年に初めて公開され、最初はパンチカードが使われていました。プログラム可能なコンピューターの概念を提唱した一人であるチャールズ・バベッジは、これに影響を受けました。現在、ジャカード織機はデジタルファイルで制御され、PhotoshopやGIMPといったデザインソフトウエアやコードでデザインを作ることができます。
コンピューターによるテキスタイル
ジャカード織りの生地はコンピューターによるデザインとの相性がよく(プログラムでパターンを作るからです)、どちらも、細かくて複雑な形状やユニークなデザイン、テーマに沿ったバリエーションなどを得意とします。加えて言うなら、生地のパターンを作ることは、プログラミングの初心者や、これまでプログラムに興味のなかった人たちにプログラムを教えるよい機会となるでしょう。
ジャカード織機は、標準的な2D画像を入力として使うため、ごく簡単なプログラムでも、物理的にリッチな結果を作り出すことができます。そこで、WOVNSではProcessingを使ったコンピューターによるパターンの作り方のチュートリアルを提供しています。また、いろいろなプログラミングのコンセプトやデザイン上の可能性についても多くの情報も公開しています。WOVNSでは、Processingを採用していますが、これはプログラミングを始めるのに最適なプラットフォームであり、グラフィックを作るのに適した、シンプルながら表現豊かな言語だからです。
私たちのインスピレーション
WOVNSは、建築や工業デザインなどの分野で発達したデジタルファブリケーションに影響を受けました。デジタルデザインを即座に簡単に物理的プロトタイプに変換する技術を見て、同じことを生地の世界でもできないかと考えたのです。
また私たちは、MITメディアラボのHigh-Low Techグループの創設者、Leah Buechleyにも影響を受けました。Leahの作品は、いかにしてデジタル技術とコンピューターが、さまざまな分野で応用できるか、そしてそれを使ってクリエイティブなテクノロジーに人々を招き入れる方法をデモンストレーションしています。WOVNSもその精神を受け継ぎ、プログラミングとデジタルデザインと人々との関連性を示すことができればと考えています。WOVNSとジャカード織りは、デザイナーやプログラマーにとって、テキスタイルや布製品の世界に参入するための素晴らしい入口になるでしょう。
WOVNSに関する詳細
WOVNSをもっと詳しくお知りになりたい方は、私たちのウェブサイトへお越しください。そこでは、生地と色のパターンもご覧いただけます。お気に召したなら、Kickstarterのバッカーとなっていただけると幸いです。WOVNS を実現させてください。
[原文]