ソニー・グローバルエデュケーションからロボット・プログラミング学習キット「KOOV」が2月18日に発売された。2020年の小学校でのプログラミング教育の導入を控え、子どもたちがロボット制作を通じて、プログラミングを体験できるように開発された教材だ。半透明のカラフルなブロックと、モーター、LED、センサーなどの電子パーツを組み合わせてさまざまな形を作り、専用アプリでプログラミングすることで、自分のロボットを動かして遊べる。
KOOVには、302ピースのブロックと全24個の電子パーツがセットになった「アドバンスキット」(49,880円+税)、107ピースのブロックと基本の電子パーツ16個が入った「スターターキット」(36,880円+税)、スターターキットに後からブロックや電子パーツを追加できる「拡張パーツセット」(21,880円+税)の3製品がある。今回はレビュー用に「アドバンスキット」を借りた。
アドバンスキットは、スターターキット(上)と拡張パーツセット(下)の2箱セット。
3次元ブロック造形で立体感覚が身につく
KOOVのブロックは、立方体、ハーフ、三角など7種類の形状があり、連結させるための突起は1個または2個でブロックによって位置が異なる。
半透明が美しいブロック。形は7種類。
レゴブロックは上下が決まっているので単純に積み上げていけばよいのだが、KOOVはブロックのどの面と連結するかによって形は変わり、3次元的にデザインしていく面白さがある。
その分、初めてブロックで遊ぶ子どもにとっては(大人にとっても)ハードルが高いとも言える。そこで助けとなるのが、専用のKOOVアプリだ。Windows、Mac、iPadに対応し、KOOVサイトでメンバー登録するとダウンロードできる。
KOOVアプリでは、まずプレイヤーの分身を登録する。ニンテンドーWiiのMiiやPlayStationのアバターのようなものだ。
プレイヤーの顔や髪型、服装を設定する。KOOVのブロックに合わせて、キャラクターも半透明だ。
アプリには、「がくしゅうコース」「ロボットレシピ」「じゆうせいさく」の3つのメニューがあり、ゲーム感覚でステージを進めていくことができる。
「がくしゅうコース」「ロボットレシピ」「じゆうせいさく」の3つから選択。
がくしゅうコースは、いわばチュートリアルだ。プログラミングとは何か、電子パーツの制御方法、ブロックの組み立て方の練習など、それぞれ短いステップで、ていねいに解説してくれる。ひとつステージをクリアするとバッジがもらえてマップを先へと進むことができる。ひとつひとつのステージは短く、ミニクイズや豆知識などもあり、あらゆるレベルの子どもたちをひきつけ、飽きさせないように導いてくれる。
プログラミングと電子制御の基本をゲーム感覚で学べる「がくしゅうコース」
プログラミング環境は、Scratchによく似ており、ブロックをドラッグ&ドロップで組み立てていく。最初のミッションは、LEDの点灯や点滅だ。小学校理科の初期の授業で、豆電球を電池ボックスやスイッチにつないで点灯を学ぶのに似ている。
ここでは、バッテリーボックスとLEDパーツを本体(コア)の接続ポートにケーブルでつなぎ、プログラムでLEDのオン/オフを制御する。そして、「ずっと」(繰り返し)や、「〇びょうまつ」(タイマー)を使って点灯や点滅を試しながら、プログラミングの考え方を学んでいく。
「はじめてのロボットプログラミング」コースでは、簡単なブロックとプログラムを組み立てながら、電子パーツの制御の基本を学ぶ。
だいたいブロックや電子パーツの使い方がわかったら、「ロボットレシピ」か、「じゆうせいさく」へ進もう。
ここでは、ロボットレシピから「イヌ」を作ってみた。サーボモーターを前足、胴体、後ろ足にそれぞれ組み込み、胴体のサーボモーターで左右の足を上げ下げし、前後の足のサーボモーターを回転させることで、トコトコと前進させるロボットだ。ブロック65個、サーボモーター3つを使用し、30センチほどの大きさになり、作り応えがある。
ブロックの組み方が3Dアニメーションで表示され、ドラッグで回転させながら、連結方向を確認できる。
デバッグしながらロボットとプログラムをカスタマイズ
ブロックが組みあがったら、プログラミングだ。とはいえ、基本のプログラムはすでに完成しているので、速度や回転軸の角度などのパラメーターを変えて、自分なりにカスタマイズしていくと面白いだろう。テストモードでは、プログラムを1行ずつ、ステップインで動かして試せる。いわゆるデバッグ作業だ。プログラムにつまづいたときに、失敗の原因を自力で見つけて、試行錯誤しながら問題を解決する力が身に付くようになると理想的だ。完成した制作日誌を登録すると、写真や動画、感想のコメントをKOOVメンバー間で共有できる。
レシピのロボットをカスタマイズするとさらに愛着がわく。飼い犬に似せて頭の形や配色を変え、さらに人の気配を察すると、頭のランプが光り、動き出すようにカスタマイズしてみた。
赤外線リフレクターが感知するとLEDが点灯して、歩き出すプログラム。
上手く動いたら、プログラムをコアに転送すると、PCやiPadなしで動かせるようになる。
KOOVは、レゴのWeDoやArduino互換機など、これまでのロボットプログラミング教材に比べると、より親しみやすく丁寧な作りという印象を受けた。子どもが独学で電子制御とプログラミングの仕組みを学習するのには最適だ。ブロックやパズルに興味のない子どもでも、立体造形や理科への苦手意識を克服できるかもしれない。KOOVはパーツの種類がまだ少ないが、これを入り口としてプログラミングに興味を持つことができれば、将来ArduinoやRaspberry Piなどを使って本格的なロボット作りを行うこともできるだろう。子どもだけでなく、過去にプログラミングや電子工作に挫折した大人にも勧めたい。