バイオ工学は大変にパワフルな技術だが、それは実験ができる機材を所有し、使える人だけのものだ。DIYbioムーブメントは、豊富な資金を有する世界の研究所が使用している機材や技術を、興味はあるが研究する手段を持たない一般の人たちに提供しようと努力している。
そうした機材の中に遠心分離機がある。遠心分離機には、用途に合わせてさまざまな形や大きさのものがある。大型のものになると、回転数、重力、時間、さらには温度まで正確にコントロールできるものもある。また、DNAの抽出や試験管の内容物を攪拌するためだけのシンプルで小さなものもある。
この3Dプリントで作るDIYbioミニ遠心分離機は、後者にあたるものだが、大学の生物学研究室でも実際に使われている。作り方も簡単だ。この記事を読んだあと、改良のアイデアが思いつくかもしれない。または、これまで手の届かなかった機材も3Dプリントで作ってみようと思えるかもしれない。
部品のプリント
F.Labの遠心分離機のThingiverseページを開き、STLファイルをダウンロードする。サイズの関係で、数回に分けてプリントする必要があるだろう。だが、そこで私たちがやったように、色を変えることもできる(図A)。インフィルは30パーセントを推奨する。脚は4つプリントすること。
Arduinoにプログラムする
組み立てを行う前に、Arduinoにプログラムをしてテストをしておくことをお勧めする。下のコードをArduinoにアップロードしてほしい。配線は図Bの配線図のとおりに行う。ただし、3本のドローンモーターの配線とESCは仮接続にしておくこと。組み立ての途中で一旦外す必要があるからだ。
#include Servo myservo; int potpin = A0; // 可変抵抗に接続するアナログピン int val; // アナログピンの値を読み出す変数 int listo = 13; void setup() { pinMode(listo, OUTPUT); digitalWrite(listo, LOW); myservo.attach(9); //pin de control al ESC arm(); // Función para armar el esc } void loop() { digitalWrite(listo, HIGH); //Sierra preparada LED intermitente delay(200); digitalWrite(listo, LOW); delay(200); // 改変抵抗の値を読み込む (値は0から1023) val = analogRead(potpin); // モーターに対応させるためにスケールする。Limitado a 100. val = map(val, 0, 1023, 55, 140); myservo.write(val); } void arm() { //Función de armado myservo.write(0); delay(1000); myservo.write(30); delay(3000); }
注意:ArduinoとESCの代わりにサーボテスターボードが使えるという指摘があった。私たちは試していないが、初心者にはそちらのほうが簡単かも知れない。そちらを使う場合は3Dモデルを変更する必要がある。そのためのSketchUpファイルも含めておいた。
遠心分離機の組み立て
ドローン用モーターをモーターマウントにネジで固定する。そして、14×3ミリのボルトとナットを使って、モーターマウントをケースのカバーに固定する(図C)。
モーターの3本の配線をケースカバーの楕円の穴から下に通し、ESCと接続する(図D)。これで、残りの配線をすべて処理できる。配線図をよく見て、慎重に行ってほしい。
配線ができたら、ケース左側面の裏にあるノッチにロッカースイッチを丁寧にはめ込む。同様に電源用アダプターもはめ込む。配線した可変抵抗をケースカバーに取り付け、ケースの右前方の溝に入れ込む。
Arduino Nanoも配線し、中に入れ込むか(図E)、ケース右側面のmini USBターミナル用の穴の近くにプラスティック片を接着または摩擦溶接して、固定してもよい。
この遠心分離機はまだプロトタイプだ。なので、配線を入れ込むときは慎重に行ってほしい。きれいにいかなくても気にすることはない。ケースカバーを閉じるときに配線に露出部分がないか、線を挟んだり折り曲げたりしていないかを確認すれば大丈夫だ。
脚をワッシャー代わりにして、ケースカバーをケース本体に3本のネジを使って固定する。可変抵抗の軸にノブを取り付ける。このとき、ゆるいようならボール紙などを挟んで調整する。ローターをモーターの軸に差し込み、ナットを締めて固定する。きつく締める必要があるが、締めすぎには注意してほしい。
最後に、22×3ミリのボルトとナットを使ってケースの背後に蓋を取り付ける。持ち運びするときは、正面の固定具で蓋を固定する(図F)。
遠心分離機を使おう
遠心分離機の使い方には、ちょっと難しい点がある。ESCは、高価なドローンのように、すべての操作を解釈して実行してくれる。荷重がかかり過ぎたり、荷重の変動が激しいときなどは、ESCが自動的にモーターを止めて、ESCはリセットされる。コツと注意点を下に示そう。
・ロッカースイッチを入れて遠心分離機を起動すると、ESCはビープ音を発してキャリブレーションを行う。
・ゆっくりとノブを半分のところまで回すと、回転が始まる。さらにノブを回すと回転速度が上がる。
・1分から2分以内の運転を推奨する。私たちは携帯電話のストップウォッチアプリを使って時間を計っている。運転中は必ず蓋を閉じること。
・必ず、ローターのバランスをとること。使用する試験管が1本だけのときは、空でもいいので反対側にもう1本入れておく。ローターの負荷のバランスが悪いと、最悪、破壊されてしまうことがある。
さらに進めて
遠心分離機の他にも、私たちは磁気攪拌機や電気泳動システムも作っている。これに私たちの試験管立てを加えれば、基本的なDNA抽出や分析が行えるようになる。
遠心分離機を作りたくなった? ProgressTHでは、ドローン用モーターを可変抵抗でコントロールする場合の、もっとよい方法を探って欲しいと考えている。「現在のところ、回転を始めるときに予測不能な動きをすることがある。ESCは、モーターがまだドローンに乗っていると思い込んでいるからだ。スタートするときは、ノブをほんのわずか右に回してからスイッチを入れるのがよい。さもないと、一度シャットダウンして、再びスタートするようになるからだ。もっと上手にコーディングができる方、Arduino Nanoの問題を解決できる方に協力してほしい」
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