Crafts

2017.06.28

技術大好きなニットデザイナーがデスクトップ完全自動編み機Kniterateを使う

Text by kanai

自動デスクトップ・ニット編み機には一般人の需要などないと懐疑的だった人たちも、Kniterate(ニッタレイト)のkickstarterキャンペーンで、最初のゴールの6倍にもなる63万6,130ドルを集めたことを知れば、考えを改めるだろう。このクラウドファンディングに寄付した人たちは、予想販売価格よりもずっと安い5,000ドルで、このマシンを手に入れることができる。

Kniterateが成功するためには、小さな的を狙わなければならなかった。工業用のニット編み機は、価格が数万ドルもするが、その代わり、Kniterateと同じ作業を短時間で済ませてくれる。Kniterateよりも安いものを探そうと思えば、国際的なオークションサイトで、同等の製品がわずか数千ドルで見つかる。

デスクトップ3Dプリンターの製造業者が突き当たった問題が、有効なビジネスモデルを維持しながら期待に応えることだったとすると、Kniterateも、言うなれば毛糸玉を使う3Dプリンターの市場で舵取りをしてゆくことになると考えられる。家庭向けのコンパクトなサイズで、使いやすいインターフェイスを備えているというだけで、Kniterateが一般消費者向けの市場で成立するのだろうか。このほど実現したニューヨークで活躍中のニットウェアデザイナーとのコラボレーションに、その答がある。

Lindsay Degenは、Parsonsデザイン学校、Pratt Institute、Rhode Islandデザイン学校でニットウェアのデザインを教えるかたわら、業務用ニット編み機、Stollの技術デザイナーおよびクリエイティブ技師を務めている。多様な経歴を持ち、遊び心のある衣服デザインと技術の統合を重視する彼女は、ニット編みの師として知られており、Kniterateを試してもらう人物の候補としては完璧だった。「技術系スタートアップ(Kniterateもそうですが)は、一般にクラフトとは接点がありません。手で触ることができ、歴史も深いクラフトの世界と技術の世界とのつながりは希薄です」とDegenはKniterateとのコラボレーションに対して懐疑的な気持ちを述べた。

Kniterateはまだ一般に販売されておらず、コラボレーションの間、Degenは実際にそのマシンを触ることができなかった。なので、彼女はKniterateにデザインの基本的なプログラム方法を教えることにした。「マシンが自動的に形状を読み取れるようにした画像ファイルを送りました。マシンは、画像をピクセルごとに読み取って、色と形状を把握します。ファイルを作るときは、背景色を決めることで、ピクセル単位で形状を示します。いろいろなことができるのです」とDegenは説明する。

業務用のマシンを自由に使うことができ、家にも自分のマシンを置いているDegenにとって、単に自分のデザインを編んでもらうだけでは意味がない。それより、Kniterateに何ができるのかを彼女は知りたかった。「難しい課題を出したのですが、Kniterateはそれを実現して見せました。さらに、重さの異なる複数の毛糸を使うこともできたんです」とDegenは言う。彼女によると、Kniterateはこのコラボレーションから多くを学んでいるという。「彼らは私に2種類のニットを送ってきました。最初の確認用と、2回目の確認用です。最初のニットに対して出した意見が、2回目のニットに反映されていました」

Kniterateは、なんでも編むことができるが、そのコンパクトなサイズと機械編みの方式のために、ある程度の制約がある。たとえば、帽子やスカーフのようなものならマシンから編み出されたものをすぐに着用できるが、セーターの場合は部分ごとに編んで、後から縫い合わせる必要がある。

そのように、後から縫い合わせなければならないこともあるが、それぞれの部品は、ピッタリ合うように正確に編み上げられる。この工程は普通の家庭用編み機の場合と同じだが、自分で形状を調整する必要がない。「本当にできないことは、インターシャ編みと、段の途中での引き返し編みです。それ以外は、とても高速に編めました。仕様に気を遣うことはありませんでした。プログラムにすべて設定されているからです。いろいろな色を使いたいという指示にも、彼らは戸惑うことがありませんでした」とDegenは語っている。

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Degenは、彼女が製作した画像を編み上げたKniterateの精度と品質に驚いたそうだ。Kniterateの本当の利点は、デザイナーが自分のデザインを、業務用のニット編み機に読み込ませるプログラミングコードに変換する技術者の手を借りることなく、編めることにあると彼女は言う。「Kniterateは、通常の業務用編み機と比べて、ずっと直感的に使えます。プログラムの必要がないので、デザイナーには最高です。業務用のデジタル編み機の場合は、sintral(ニット編み用プログラム言語)を理解する必要がありますが、それはマシンごとに異なります。1つのブランドのマシンでプログラミングを覚えたとしても、他のマシンが使えるようになるとは限らないのです」と彼女は説明してくれた。

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「現在、Kniterateはひとつのゲージにしか対応していません。そういう特徴はありますが、それは今私が家で使っている編み機と同じゲージだったので、都合に合わせて、あちらを使ったり、こちらを使ったりしています」

Kniterateが一般向けに市販されて、ニット製品が作れるようになるのは素晴らしいことだ。今のところは、機械編み愛好家を少なくとも一人、ファンに取り込んだ。「いくつかサンプルを作るだけでも、完全に元が取れると思っています。絶えずサンプルを作り続けている私にとって、それはとっても価値のあるものです」と Degen は言う。

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原文