2018.03.23
発酵シーンに変革をもたらすFood Makerたち
シンガポールからアメリカ、そしてヨーロッパ全体に向けて、Edible Innovations(食べられるイノベーション)は、生産から流通から販売までのあらゆるステージで世界の食料システムを改善しようと考えるFood Makerたちを紹介しています。私たちといっしょに、この産業の大きな流れを、Makerの視点で探ってみませんか。優れた教育的な核を持ち、未来への偉大なる挑戦のための主要なツールとしてフードイノベーションを推進するFood Innovation ProgramのChiara Cecchiniが、世界のFood Makerたちの顔、話、体験を紹介します。
今日は発酵に関するお話。複雑な物質を単純なものに変化させる魔法のプロセスだ。発酵については、この数カ月の間に何人かの人に話を聞いたのだが、今回紹介するのは、発酵をまったく新しい方法で実践している3人のMakerたち。なぜって? Food Makerにとって、多様性は大きな柱の1つだし、Makerの文化の新しい流れを学ぶチャンスだからだ。
Jose de la Rosa(ボローニャ)
私は、Future Food Instituteのスタッフであり、Shiliao.Boの協同創設者でもあるJose de la Rosaに会った。「かつては生物学者だったが、今はフード・サイエンティストと呼ばれたい」とJoseは言っている。彼はScuderia Future Food Lab(スクーデリア未来食品研究所)でFermentation Lab(発酵研究室)の責任者として働いている。その研究室からShiliao.Boが生まれた。Shiliao(食療)とは中国の思想で、「食は生命なり」という意味。「つまりは、このScuderia Future Food Labのレストランやカフェから出る食品の屑や食べ残しを、すべて再利用しようということです。不必要な廃棄物を見直して、食品の栄養素を高めます。最終的には、生の食材を発酵によって変化させ、価値を高めることを目指しています。アロマウォーターとかハーブティーとか」とJoeは話している。
Joseの友人であり同僚であり、これまた大変に熱心なFood MakerであるFrancescoは、薬草に関する知識が豊富で、その革新的な栽培と収穫の方法について研究している。彼は、生の素材の栄養価や収穫量を高めることを目指してきたが、現在は、Future FoodでEdu&Lab Innovationの責任者を務めている。
Joseの目標は、発酵を利用して「食品に命を与え、恩恵を高めること」だ。その夢を現実の研究室で追求している。フード・メイカースペースは、実践的な経験を積み重ね普及させるために、大変に重要な場所であることを私は知った。Joseは本当によくがんばっている。
Sacha Laurin(サクラメント)
Sachaがコンブチャ(訳注:アメリカでは紅茶キノコのことをコンブチャと呼んでいます)のワークショップに招いてくれた。Sachaについては、以前の「食べられるイノベーション」でも紹介したが、彼女はチーズとコンブチャのMakerで、発酵食品の大ファンだ。 以前、彼女に会ったときは、スコービー(バクテリアとイーストの共生培養)から衣服を作る工程について話を聞いた。自然が与えてくれる産物を再利用するという、クリエイティブで効率的な手法だ。しかし、Sacramento Natural Food Co-op(サクラメント自然食品生協)を訪れたとき、彼女の活動には広大な土地と教育が欠かせないことを知った。すべては、1972年に食品購入クラブとして始まった。2001年にスペースと料理教室を開き、現在は新しい場所で新しいプロジェクトを始めている。そこで、カリフォルニアに住んでいるFood Makerのみなさんにお知らせ。サクラメント自然食品生協ではSachaを講師として、発酵食品とコンブチャ作りのための、めちゃくちゃタメになる2時間のワークショップを開催する。近くに住んでいて、これに興味のあるFood Makerなら誰でも参加できる。
Girish Mithran(香港)
私はインド人Food MakerのGirish Mithranとワンチャイでお茶をした。彼は、2人の友人やビジネスパートナーたちと、一般向けの自動ヨーグルトメーカー、Yomeeを開発した人物だ。Girishによると、そもそものはじまりは、家庭で完璧なヨーグルトが作れないかという疑問からだった。彼らの答は、発酵プロセスを管理することで、ヨーグルト作りを自動化し簡単にするというものだった。まずミルクを15分間沸騰させて、46℃になるまで冷ます。そして、Yomeeに培養菌の入ったカプセルをセットすれば、あとは機械が6時間、適温を保ってくれる。その間に、生きた培養菌がミルクをヨーグルトに変化させるのだ。最初のプロトタイプは2016年に完成したが、その後の18カ月は、ハードウェアと培養菌のカプセルのデザインに費やしたとGirishは話している。現在はクラウドファンディングで支援を集め、試作段階から製品化へと移りつつある。
この3つの話は、どれも違っているが面白い共通点がある。発酵食品は、世界中のあらゆるところに存在し、より多くのMakerたちがそこに手を付け始めている。発酵食品のためのメイカースペースを立ち上げたり、より身近なものにするためのデバイスを開発したり。つまり、あなたもその一人になれるということだ。
[原文]