シンガポールからアメリカ、そしてヨーロッパ全体に向けて、Edible Innovations(食べられるイノベーション)は、生産から流通から販売までのあらゆるステージで世界の食料システムを改善しようと考えるFood Makerたちを紹介しています。私たちといっしょに、この産業の大きな流れを、Makerの視点で探ってみませんか。優れた教育的な核を持ち、未来への偉大なる挑戦のための主要なツールとしてフードイノベーションを推進するFood Innovation ProgramのChiara Cecchiniが、世界のFood Makerたちの顔、話、体験を紹介します。
職場の近くに住むという利便性は、緑に囲まれた自然な生活とは相容れない。都市の住民のほとんどは、地方の社会から都会に移住するときに、その犠牲を払っている。都市住民が、郊外や農村の人々が日々楽しんでいる豊かな緑と決別してしまうのは悲しいことだ。だが、オークランドに住むMaker ProのJames Huntは、工業都市の都心部に住むことは、必ずしも自然と分かれることにはならないと考えた。そして、アーティスティックで、シンプルな、植物を育てる方法を考案した。
Huntの都市生活を改善しようというアイデアの素は、彼の子ども時代にあった。子どものころから、彼はBMXやスケートボードのためのランプを作っていたのだ。それを再利用して、自分だけの遊び場を作ったりもしていた。また、ドバイ、ベトナム、ポーランドに住み、人々の土地の再利用方法に対する深い思いを体験してきた。その経験から、彼はFlorae & Companyを創設した。美しいプランターを作って、街の通りに並べたいと考えたのだ。彼にとって、オークランドは、新しい想像的なものを、現実的で文化的な人間のためにデザインし作り上げる場所を意味している。
いろいろな国で暮らした経験が都市生活を改善するための刺激となったHuntは、持続可能で植物栽培が楽しめる小さな箱をデザインした。この箱には、スクエア・フット・ガーデニング(1平方フィートのガーデニング)、上質な土作り、狭い土地での植物栽培といった、異なる文化の栽培技術が詰め込まれている。HuntはこれをGreenCubeと名付け、ガーデニングに適した土地は持たないが緑を欲している人たちに向けて販売を開始した。
これは高床式のプランターで、形やサイズには数種類の選択肢がある(標準は土の深さが25センチ、外寸が90×90×90センチ)。好みに応じて色や絵を加えることができる。その仕組みにも目を見張るものがある。都市の生活は、非常に忙しいが緑を欲するという二面性があることをHuntは理解している。そのためGreenCubeは、クリーンなエネルギーと資源を利用して、ほとんど世話をしなくてよい構造になっている。プランター本体はオーガニックな材料で作られ、そこに、土を透過した水を汲み上げて、再び土に与える自動灌漑システムが備わっているのだ。動力はソーラーパワー。これで植物は健康に丈夫に育つ。
このプランターの利点は、忙しい日常生活の流れを阻害することなく、いい香りの花や植物が育てられるところにある。Hunt はこれが、忙しい街に住む人たちの心の健全化に役立てればと考えている。庭園を造ったり自然に囲まれることが、健康に良いという心理学の研究結果が多くある。外へ出て自然と触れ合うことで、不安や鬱を抑制できるという。私たちの日常生活に自然を採り入れるというシンプルな行動が、私たちに良い効果をもたらしてくれる。植物は、私たちの気持ちを高めてくれるだけでなく、エネルギーレベルも高めてくれる。都会で暮らし、自然の中へ出かけるのが難しい人々のために、GreenCube は自然を持ってきてくれるのだ。
花ばかりではない。GreenCubeは、1日25グラムの野菜も収穫できる。これは1日に必要な1人分の野菜としては十分な量だ。食料を生産してくれて、しかも面倒を見る手間がかからない。これは小さな勝利だ。Huntはこの勝利をすべての顧客と分かち合い、街で野菜を育てることがいかに簡単であるかを周知したいと考えている。
GreenCubeは、都会の生活に彩りと自然を投げ込んでくれる。手入れも簡単にできる。よく目立ち、街を楽しくしてくれるデザインが素晴らしい、街によく馴染むプランターだ。昔ながらの耕作と、新しい都会での暮らしが、このカラフルな箱の中に収まっている。自律型のガーデンを作ることで、Huntはガーデニングの癒やしの効果を、どこに住んでいようが、届けてくれるのだ。
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