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2023.10.26

走行する腹筋ローラー「アブライダー」の挑戦 ― Maker Faire Tokyo 2023 会場レポート #1

Text by Yusuke Imamura

腹筋を鍛えるローラー(アブローラー)に動力を加えて走行させようという、思わず「どういうこと?」と聞き返しそうになる展示があった。蕪木孝氏(@takashikaburagi)の「アブライダー」である。


「アブライダー」に使われた、ごく一般的なアブローラーの箱

アブライダーがどういうものかは、蕪木氏が実演している様子を見ればすぐにわかるだろう。


アブライダーの本体。アブローラーや電動ドリルを木枠にフィットさせるために3Dプリンタも活用した

アブライダーの動力は、電動ドリルの回転をチェーンでアブローラーに伝えることで得ている。電動ドリルのトリガーにはワイヤーがくくりつけてあり、そのワイヤーはアブローラーのハンドルに取り付けられた自転車のブレーキレバーにつながっている。ブレーキレバーを握ると、ワイヤーを通して電動ドリルのトリガーが引かれて回転するしくみだ。走行スピードはブレーキレバーを握る力で調整できる。

下半身を支えているのは、板にキャスターを4つ取り付けたもの。アブライダー本体も含めて最低限の間に合わせにも見えるが、これで十分に機能する。

せっかくなので記者もアブライダーを体験してみた。

キャスターつきの板の中心に膝をつき、正座から少し腰を上げたような姿勢でアブライダーのハンドルをつかむ。ブレーキレバーを軽く握るとアブライダーが前に進み始め、それに従って全身が伸びていく。本来はこのまま体がまっすぐ横になってから進み始めるべきだが、筋肉不足の身にはとても無理である。腰が上がったままブレーキレバーをもう少し強く握ると、全身が移動を始めた。

しかしとても体がもたない。腹筋だけでなく全身がつらくなり、ほんの数秒で止めるしかなかった。進んだ距離は数メートルほどだろうか。アブライダーによって、使用者の筋力が移動可能距離に変換される。不思議な体験だった。

そして翌日には腹筋が筋肉痛になった。アブライダーをたった1回体験したこと以外に思い当たるふしはない。相当に体を鍛えていないと長距離の走行は難しいだろう。

「アブローラーに動力をつけて走行させたい。とにかくやってみたくて作った」と蕪木氏は語った。出展者コメントには「ボディビルダーがサーキットを駆け抜ける姿を見たい」と記されている。


開発時に想定していた姿勢。体が完全に伸びている。その上キャスターつきの板に乗せるのは膝ではなく、つま先だけにしたいと考えていた

果たして、この理想的な姿勢でアブライダーを乗りこなせるドライバーは現れるだろうか。いつかその日が来ることを期待したい。

思えば以前のMaker Faire Tokyo、さらにその前のMake: Tokyo Meetingの時代は、アブライダーのように初期衝動をそのまま具現化した作品が多かったようにも感じる。出展される作品のコンセプトや完成度が年月とともに高度化していくのは悪いことではない。一方で、風変わりなアイデアをとにかく形にしてみた作品も引き続き楽しんでいきたいと感じた。