Crafts

2011.09.05

Zero to Maker(ゼロからのMaker):作って学ぶ

Text by kanai


これから1カ月ちょっとの間、ちょっとヤル気のなかったMaker、 David LangがMakerカルチャーに身を沈め、我らの仲間、TechShopの寛大なるご協力のもと、できる限りの DIY スキルを習得していく様子をレポートします。彼は、何を学んだか、誰に会ったか、どんなハードルをクリアしたか(またはしなかったか)など、奮闘努力の過程を定期的に報告します。きっと面白いものになるよ。 – Gareth


上の写真は、Davidが関わることになったOpenROVプロジェクト。
もらった助言が身にしみてわかるまで、時間がかかることがある。また、ずっと後になってその本当の意味に気づくことがある。私はその瞬間を「だから(助言)と言ってくれたのか」モーメントと呼んでいる。
この前のコラムに書いたMake: SFミートアップ(みんなで MintyBoostキットを作った)の後も、そんな瞬間があった。あのとき作ったのは、とても単純なキットだったが、最初から自分で作ったことから、私は多くのことを学んだ。ハンダごてはどちら向きに持つかとか、ハンダ付けをする前にハンダごてのチップをきれいにする方法とか、経験豊かなMakerからすればなんでもないことだが、新入りには神経を使うことばかりだった。しかし、その場で習得できる小さな学習も大切だが、それと同じくらい重要な大きな教えに気づいたのは、その数日後、友人に私が作ったMintyBoostを披露したときだった。「ゼロからのMaker」の旅は、つまりは物を作ることなのだと。どんなに学びたいと思っても、実際に物を作らなければ学んだことが体に染みつかない。作ること、作り続けることを主にして、そこから学んでいくべきなのだ。
改めて言うほどのことではないかもしれない。これまでも、多くの経験豊かなMakerたちに言われてきたことだ。しかし、何が分からないのかも分かってないうちは、どんなプロジェクトを行うべきか、その見極めもつかない。物を作って学ぶことの大切さをしっかりと理解できたつもりだが、自分のスキルレベルに合ったプロジェクトを自分で探すのは、やはり難しい。それに、自分の興味を維持させるに十分な大胆なゴール、たとえば、それまで自分との関わりのなかった分野で自分の境界線を押し広げてくれるようなものが、そのプロジェクトにあるのかどうかを知る術がない。
私が見る限りでは、物作りのプロジェクトは大きく2つのカテゴリーに分類できる。「既知プロジェクト」と「未知プロジェクト」だ。既知のプロジェクトとは、前に誰かがやったことのあるものだ。きちんとした資料や説明も整っている。MintyBoostの組み立てはそれにあたる。既知プロジェクトは初心者に最適なように思える。道具の使い方を覚えながら、同時に自信もつく。既知プロジェクトなら、道具と材料と作り方の説明があればすぐに開始できる。一方、未知プロジェクトの場合は、どこにも説明書がない。それどころか、できるかどうかすらわからない。未知プロジェクトでは、本物の問題解決への挑戦であり、刺激的で魅力的(そして非常に恐ろしいもの)だ。未知プロジェクトには、普段と違ったデザイン思考が必要になる。
プロジェクトにはこの2つがあること、そして私が学びたいと願っていることを併せて検討した結果、OpenROVを作ることが、私にとっての大胆なゴールになるという結論に達した。このプロジェクトに関わっている連中とは、長い間親しくしているのだが、私自身がそのプロトタイプの設計や製作に実際に関わったことはなかった。そこを改めようと考えたのだ。大方の作業は終えているのだが、まだ解決しなければならない設計上の問題が山ほど残っている。まさにこれは未知プロジェクトの領域だ。ROV設計のすでに完成している部分は、私にとって、ツールの使い方や物の作り方を学ぶために理想的なものだ。そして、そこから先の設計に関する大いなる挑戦では、新しいアイデアが求められ、私の創造的境界線は押し広げられる。
私は TechShop で「ドリームコーチ」に会いたいと思っている。アイデアを現実化して、大きな未知プロジェクトのゴールを到達可能な小さなステップに分ける方法を教わるためだ。それについては、今後のコラムで報告していこう。今回は、プロジェクトのアイデアをいかに得るか、その方法を考えてみた。もちろん、これがすべてというわけではない。このほかに、よい方法を知っている人がいたら教えてほしい。
既知プロジェクトのアイデア
Make: Projects – DIYプロジェクトのサイト。出発点としては最適だ。電子工作、クラフト、料理などなんでもあり。すべてのプロジェクトがカテゴリごとに分類されているので、好きな分野から自分にぴったりのものが選べる。
講習会に参加する – 講習会のよいところは、経験豊富な先生から手取り足取り教えてもらえるところだが、自分のレベルに合った、適切なプロジェクトを選んで与えてくれるという点も大きい。私はTechShopの講習会に参加しようと思っている。サンフランシスコ在住の人にはお勧めだ。コミュニティカレッジもスキルを磨くにはいいところだ。
未知プロジェクトのアイデア
問題を持つ – やってみたいけどできないことや、欲しいツールがあれば、それが未知プロジェクトにつながることがある。必要は未知プロジェクトの母だ。このデスクトップ・クラゲ水槽のプロジェクトはその好例だ。Alexはクラゲを飼うための水槽が欲しかったのだが、どこにも売ってなかったので、自分で作ることにした(編注:Alex Andonのインタビュー記事が、Make英語版 Vol.27のここに載ってます)。
既存のプロジェクトや製品を改良する – 何かをもっと安く作る方法を探ったり、今あるものを必要に応じて改造するというのも、未知プロジェクトになる。OpenROVは世界初の潜水ROVというわけではないが、市販されているものよりも、ずっと安く手に入りやすいものを目指している。
「作って学ぶ」という考え方をどう思いますか? 作って学べるよい場所をご存じの方は、教えてください。
– David Lang
原文