2012.09.07
子供のための即席Makerスペースから学んだこと
この2週間にわたり、ニューヨークに本部を置く技術教育協同組合、HTINKに加盟するMakerや教育者たちが、ニューヨークのブルックリンにあるアートギャラリーを使って、即席の子供向け Makerスペース The Makeryを開設した。MakerBot Replicator、ビニールカッタ、ハンダ付けセット、エレクトロニクス、工作素材といった設備や材料のほかに、この施設の心臓部となっていたのは、ワークショップ環境だ。私たちは、子供のためのデジタルデザインおよび製作、フィジカルコンピューティング、コンピュータプログラミングといったワークスペースを10日間にわたって開催した。夜と週末は大人や家族連れにも門戸を開放して、ツールの使い方や材料の扱い方を学んでもらった。
Makeryの様子をおさめた写真のギャラリーはこちら。
今回、子供のための技術系ワークショップとMakerスペースの運営方法について学んだ点を、みなさんと共有したい。
- 小さく始める。開催前に大きな宣伝はしなかったが、ウェブサイトを立ち上げて、ツイートをいくつか発していた。これがよかったようだ。最初の1週間は、毎日2人から6人の子供たちがやってきた。そのため、大々的に宣伝する前に、小さな規模でワークショップを試すことができた。2週目には、一度に最大で16人もの子供たちを相手に行うことができた。
- フルサイズのワークショップを開催する準備ができたと確信できたなら、数ヶ月前から宣伝を開始する。
- 少数の子供に教えて、彼らに別の子供を教えさせる。子供たちは友だちに道具の使い方などを教えたがるものだ。道具の安全な使い方を心得た少人数の子供たちと始めることで、大人の助けをあまり借りずに、子供同士で教え合ってくれるようになった。
- 子供たちが大人に教えてくれる。実際、その週の終わりには、子供たちが3Dデザインや3DプリントやScratchのプログラミングやエレクトロニクスを、訪れた大人たちに教えるまでになっていた。
- 子供たちといっしょに作っている親たちも、ワークショップ運営者を援助してくれる。子供たちに付き添って、親が1日中ワークショップにいたことが何度かあった。この状態はつねに助けになる。子供たちには、親に手伝ってもらいたいときと、Makeryのスタッフに手伝ってもらったり教えてもらいたいときとがある。また自分だけで頑張りたいときもある。
- パソコンの画面で行う作業と実際に手を使う作業との両方を準備しておく。すべての日で、私たちは子供が選べるように作業のセットをいくつか用意しておいた。子供たちは、TinkerCADもMakerBotプリンタもビニールカッタもScratchもすぐに覚えた。しかし、粘土の回路やシルクスクリーンのTシャツや空気ロケットの発射台から飛ばすロケットの設計なども大いに楽しんでいた。
- 新しいアイデアを出し続ける。毎日続けて来る子供たちも多かった。そうしたリピーターも楽しめるよう、毎日異なる出し物を用意しておくことも大切だ。
- 十分なインターネットのバンド幅を用意しておく。3Dデザインを教えるときは、TinkerCADやウェブアプリを多用した。会場となったギャラリーでは、一部のパソコンで無線LANの通信状態が悪くなる事態が発生した。しかし、前向きに考ればなんでも対処は可能だ。私たちは急遽、WiFiホットスポットを買ってきて、アクセスポイントを増やすことにした。
- 可能なかぎりオープンソースやフリーソフトを使う。ここで覚えたことを、そのまま家でも続けて行えるようにするためだ。
- 普通の紙のプリンタも用意しておく。どうしても人気の3Dプリンタに目が向きがちだが、普通の紙のプリンタも大切だ。チラシがなくなったときに印刷したり、工作用の型紙を印刷したりと大活躍する。
- 年齢をうまく組み合わせる。The Makeryの平均年齢は8歳だったが、いちばん上は15歳のMakerだった。いろいろな年代の子供たちが肩を並べて作業することで、いろいろなアイデアが交わされて互いに助け合うことになる。年長の子供が年下の子供を教えると思い込むのは間違いだ。
- Makerスペースで起きたことはすべて記録しておく。私たちは、つねにカメラを持ち歩き、スペース内でのプロジェクトや活動の様子を撮影した。これは次回の開催の宣伝に大いに役に立つ。
- 遊べるオモチャをいくつか置いておく。私たちは、安いリモコンのヘリコプターを用意しておいた。1日の終わりに子供たちが疲れてきたころ、これを飛ばして(そして落として)遊べば、よい気晴らしになる。
- 親たちはいろいろと手を貸してくれる。活動に協力したいと思っている人たちのメールアドレスを聞いておこう。
- 常に整理整頓を忘れずに。朝の状態を保っておけば、午後の活動も楽にできる。1日が終わるとみんなくたくたに疲れる。材料などは使ったあとすぐに片付けるようにしておけば、また各活動のあとに片付けを行えば、最後の後片付けも早く済む。
だれでも気軽に立ち寄れて、デザインして作れる常設のスペースを作ることが私たちの目標だ。適当な場所が見つかるまでの間は、ニューヨーク周辺で、今回のような単発の即席 Maker スペースを続けよう思う。
次の開催が楽しみだ。テクノロジーを使った工作やクラフトをコミュニティに体験してもらえるワークショップの運営方法についても、もっと勉強したい。詳細をお知りになりたい方は、www.nycmakery.comにて、私たちのメーリングリストにご登録ください。9月28、29日のWorld Maker Faireにも出展します。
– Jaymes Dec
[原文]