Fabrication

2013.03.28

あらゆるものをうんと早く作る方法:Charles Guanインタビュー

Text by kanai

Charles GuanはMITを卒業して、この数年間、楽しくてビックリするようなプロジェクトを作り続けている。学生たちがいろいろなものを作っているMITのMakerスペース(クラブ)MITERSでも、Charlesは多くの影響を与えている。彼はMITで機械工学の講師を務めていて、学生たちの夢の機械の製作を手伝っている。彼は同じ質問を何度も何度も受けてきた。そこで、Instructableを使って、How to Build Your Everything Really Really Fast(あらゆるものをうんと早く作る方法:略してHTBYERRF)という説明書を製作した。それは、彼自身の、そして学生たちの人生をもっと楽にするためのものだ。彼が教えるコンセプトとテクニックは、さまざまな工具、おもにレーザーカッター、CNCルーター、ウォータージェットカッターといったデジタル工作機械を使った物作りにおける時間と頭痛を大幅に削減してくれる。

私は、彼が開発したテクニックを物作りの信念について話を聞いた。ここに掲載した写真はCharlesがHTBYERRFで使用しているものだ。ここでは、CharlesはMITの代表としてではなく、あくまで個人としての意見を語っている。

あなたご自身と経歴について簡単に話してください。

私はMITの機械工学部を卒業して、修士課程に進みましたが、今年やめました。機械工学研究室で学部の学生たちに教えたり、学生プロジェクトを支援することに専念しようと考えたからです。私は11〜12年、電気工学分野でいろいろ作ってきました(2000年、12歳のときから始めています)。BattleBot(戦闘ロボット)を数年間やって、小型電気自動車の設計もやりました。私の経験の大半は、独学で実践から学んでいます。

How to Build Your Everything Really Really Fastで想定している利用者は?

初めてか2台目のロボットを作った程度の、小さなメカニズムを作ったことがあるが、「ダクトテープと結束バンドとホームセンターで売っているアルミ板」あたりの段階で工作している人です。ロボティクスをやっている人なら、よくわかると思います。

これは「あらゆるものへの入門」を意図したわけではありません。それをやろうとすれば300ページを超えてしまいます。ネジとは何か、ドリルはどう使うかといった基本的なことを知っていて、さらに、ミルや、レーザーカッターやウォータージェットなどのRP(ラピッドプロトタイピング)ツールを見たことがあるか使ったことがある人を対象にしています。しかしすべての人がRPツールの経験を持っているわけではないでしょうから、できるだけRPツールを使わずにできる、押し出し材や棒材といった私が長年頼ってきた手法を思いつくかぎり示しました。それに加えて、RPサービスが普及してきたので、インターネットで初めて注文してみるというのも行き過ぎではないと考えました。昔に比べて、ずっと簡単になりましたからね。

ロボットやスクーターや電動ショッピングカートを作るのは楽しいですが、なぜ人は作るべきなのでしょうか?

私は、自分で呼ぶところの「ボトムアップ」教育、つまりチャレンジをして自分自身でスキルを学び取ることや、情報や知識にアクセスすることで触媒作用を受けることの価値を強く信じています。それは工学においてすらじつに「トップダウン」型の旧来式の教育からの脱却であり、それを補完するものでもあります。工学では、どんなに手を使う教育が行われていても、基本的に誰かから教わる形になっています。どのボタンを押すか、どの指示に従うかというようにね。

作ったり組み立てたりという習慣は何を生みますか?

自分から学ぶことの素晴らしい点は、自分だけの答を常に求めることであり、結果としての自分のハードルを上げていくことです。研究所の仕事を終えたら家に帰れるというようなものではありません。問題解決法、アイデアの概念化、そして何よりデバッグ、修理、メンテナンスのスキルを学びます。そして、作業過程の各ステージに対応できる心のツールチェーンができあがります。新しい技を発見し、他所から得た知識を応用することで自分のスタイルを発見します。プロジェクトのすべての開発ステージに参加することにより、工学とプロジェクトの開発過程に対するより深い洞察力と判断力が身につきます。

物作りには反復が重要ですか?

今の工学教育において、反復設計は軽視されていると思いますが、Makerやホビーストにとっては大変に重要です。一般的に、工学のクラスでは、何かを作るときに、作る前にシステムの部分的な分析と最適化を徹底的にやらされます。「理論の練習」では重要です。また、反復をしない状況では適切でしょう(ボーイングはランダムなアイデアを試すために13機の異なる747を作ったりしません)。しかしそれが唯一の道ではありません。

最初のバージョン、またはプロトタイプやモックアップが、システムの動きに関してたくさんのことを教えてくれる場合があります。思い通りに動かないときなどです。完璧な設計で、CADで数値的な分析の上に正確に組み立てたとしても、コンピューターはネジが外れるなんていうことは教えてくれません。または、あなたが設計に応用している他の人の(そのため工学的にあなたは手が出せない)プロジェクトでは性能が足りないとは教えてくれません。そして、変更したいすべての部分をバージョン2の設計に持ち込むわけです。

失敗の重要性は?

私たちは、あらゆる失敗は悪であり、なんとしてでも避けるべきものと厳しく教えられてきました。私に言わせれば馬鹿げたことです。何を作っても、大抵は失敗します。だから、あらゆる好機に学び、それを文書化して、自分がなぜ失敗したかを他の人たちにもわかるようにすることが大切だと考えます。

アクティブな創造力の価値は?

プロジェクトを作ることで創造力がかなり訓練されると私は思います。何かが動いたり動かなかったりしたときに、解決策を探す過程だけでも、創造的な頭の活動や頭の中でのシミュレーションが必要になります。素早く考えること、そしていくつかのアイデアを即座に思いつくことが、ブレインストーミングの世界の2つの座標軸になります。可能性のある解決策をいくつか頭のなかで回すことが大切です。私の経験では、こうした結果の見えないメンタルな作業を否定的に考えている人もいます。

私が考える、私のもっとも重要なスキルのひとつは、残念ながら教えることができないものなのですが、メンタルなマルチフィジックス・エンジンのようなものです。SolidWorksで私が何かを設計するときは、全体の時間の80パーセントは画面に向かって一生懸命に作業して、残りの20パーセントはときどきクリックするだけになります。私は頭の中に設計全体の文字通りモデルを持っていて、部品の組み合わせを変えたり、構造を動かしたり、メンタルな有限要素法モデルを動かして、うまくいかなかったり壊れたりしないかを試すのです。それをなぜSolidWorksの中でやらないのかって? 新しいパーツをモデリングするなどで時間がかかりすぎるからです。その間に、それを使って何をしようとしていたのか忘れてしまいます。人間の脳はスーパーコンピューターです。そっちを使わなくちゃ。

そこへ行くのにどうしたらいいかは説明できません。これは結局のところ、経験して想像する前の、見よう見まねの効用です。私はもっと若かったころ、BattleBotを設計するとき、何時間もかけて対戦の様子を頭の中でシミュレーションしました(今でもやってます)。BattleBotの古いテレビ番組やイベントのビデオを見て、金属がどのように変形するか、衝突したときにロボットがどのように吹っ飛ぶかなどを学びました。それが「物理エンジン」の一部になっているのです。それは、時間と実践を重ねるごとに、よくなっていきます。

数多くのイベントでデモをされていますが、それがどのように重要なのですか?

できるかぎり、私はプロジェクトを公開するようにしています。私が作るものには、たいてい車輪が付いているので、当然の結果として、街を走り回ることになります。そこで質問されて、20回も同じことを説明するのはフラストレーションが溜まります。しかしこの数年間、それを続けてきたことで、私は決定的なコミュニケーションスキルを身につけました。技術的な説明を、重要な部分を水で薄めすぎたり、または上から目線にならないように、技術者でない人たちにわかるようにどう言葉で表現すればよいかについてです。

作品の資料化でどのような苦労をされていますか?

自分自身の作品では、膨大な資料化の脅迫観念に助けられています。いくつかの場面で、私は2008年や2009年の特定のプロジェクトの写真を探すことがありました。最近では、モーターコントローラーの設計に関する資料が、改良や新しいボードの設計に役立ちました。振り返ることで、失敗したハックやうまくいかない部品構成などを繰り返さないようになります。

今やっていることは?

今、私はBattleBotの製作に乗り出すことで、少しだけ「ルーツに戻る」感じになっています。春には、 2.007Design and Manufacturing]の研究所セクションとして、私の2.00Gokartクラスが再び始まります。夏にも、交流学生を対象にしたクラスを行う予定です。

私は、人が何かを作って、そこから何かを学ぶのを見るのが好きなんです。それは、電子、メカニクス、意味のない照明付きのキネティック液体彫刻でもなんでもいいのです。これまで何も作ったことのない人は、作り始めて知識を取り込めるようになることは困難でしょう。しかし、最初の機械が動いたときは、最高です。

いろいろ話してくれて、どうもありがとう。

Charlesのサイトと彼の Instructablesを見てほしい。HTBYERRF (How to Build Your Everything Really Really Fast)が読める。MITERSの人たちが作っているものも注目。

– Chris Connors

原文