Fabrication

2014.10.22

自走式CNC、3Dプリントされたダフトパンクのヘルメットなど / Maker Faire Rome2014

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今年のMaker Faire Romeの会場となったローマのAuditoriumは音楽施設で、展示会用の施設というわけではない。そのため展示が広い敷地内のあちこちに広がり全エリア見るだけで大変だったが、一通り見た中で印象に残ったものとイタリアのMakerたちの様子を簡単に取り上げたい。

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自走式CNCミリングマシン、GOLIATH。オープンソースでドリルの他にペンやカッターなどにも持ち替えることができ、自走式なのでスペースの制約を受けずに加工を行える。

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Arduinoのコントロールで各パーツのLEDを光らせたり、こめかみの部分にあるセンサーに触るとレギュレーターによって羽根が開く構造になっている。医用生体工学の専門家でPhDを取り、現在彼女はポスドクとしてAtmelと協力して、このコスチュームのメカニズムをデザインしたそうだ。悪く言えば色物のように見えるが、彼女はとても熱心で、ひっきりなしに訪れる来場者に対して5分ほどのデモンストレーションを3日間ほとんど絶え間なく繰り返し行っていた。

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ローマ近郊の町、Ciampinoの工業高校の学生によるロボットによるサッカー。イタリアでもロボコンは盛んで、軽量級と重量級に分かれ、このロボットは軽量級で何度かチャンピョンを獲得している。

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ライトのついたボールを追いかけてゴールを狙う。このロボットはArduinoにボールを追いかけるためのIRセンサー16基、超音波センサー4基、サイドラインを認識するセンサー6基が搭載されている。

周りを見ても、操作している人が見当たらない迷いロボットがいた。自動で動いていたのか誰かが遠くで操作していたのかわからないが、付いてくる。こういう持ち主のわからないロボットを見かけたら、どうしたらいいんでしょうね。

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地元イタリアの各地のFab Labのメンバーたちに与えられた展示スペース、Rubikは会場の中心からかなり外れた場所にあり、彼らのスペースの前が陸橋になっていて、その橋の下はMaker Faireとは関係ないスクワット(非合法で空いている土地や建物を占拠するヨーロッパでは割とポピュラーな活動)の場所になっていた。自転車を修理してリサイクルする場所になっていて、カフェバーも併設されている。住んでいる者はいないが、すべて家具も自転車も修理する道具やノウハウを共有してリサイクルして作ったもので徹底したエコロジーの意識を持っている。「この場所に来て3年間、電気も水道も使っていない」と語り、こだわりをもっている。彼らもある意味地下活動のMakerで、Maker Faireのすぐ隣にこんな空間があるのも面白いと言えば面白い。

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地元ローマのFab Lab SPQWorksのブースは彼らのスペースが所有しているマシンのデモンストレーションに加えて、手作りの大きなタコやフィギュアなども置いていた。ふと、ある日訪れるとタコの前に一台テーブルが置かれ、LittleBits的な何かが置かれている。

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イタリア語訛りのない英語で「ハロー」と声をかけられたので、「あれ、あなたローマのFab Labの人?」と聞くと、はっきりしない返事。よくわからないまま、説明を聞くとSAMというKickstarterで現在出資を募っているプロジェクト(目標金額には既に到達)。LittleBitsと違うのは、ブロック同士は繋げず、各ブロックがBluetoothでコンピューターとつながっていて、ソフトウェア上のアイコンをドラッグする形で各モジュールが簡単にコンピューター上で結線される点。モジュール間に線を引かなくても、ある程度近づけるだけでつながるようになっていたり、とにかく簡単に使えるインターフェースで、よくできていると思った(アメリカのMakeによるビデオ)。

説明していた男性は東京工業大学に留学していたこともあり、ソフトウェアのインターフェースの開発には日本人スタッフも関わっているという。しかし、別れの挨拶を交わして1時間後に同じ場所を訪れるとテーブルが消えていて彼の姿はない。大小のブースがあるが、誰も移動して展示している人はいない。もしかして、これはゲリラ展示だったのか……?

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イタリア各地のFab Lab関係者は大体皆知り合いで仲が良く、会場はずっと犬が歩き回っていたり、とにかく自由な雰囲気。ゲリラ展示ぐらいでは皆動じない。運営側に悪気があったわけではないと思いたいが、展示スペースの場所の悪さ(自分も地図を見なければ辿りつけず、中心の方が人でいっぱいになっている時も、かなり空いていた)に驚きあきれたFab Labメンバーの一部は会期中に抗議と皮肉の意味を込めたハッシュタグ「#occupyrubik」(俺たちは場所を与えられてるわけじゃない、占領してるんだという意味)を用意して、会場でタグの書かれた紙を配布していた。

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Maker向けのマジックテープで道具類を入れるポケットを自由な位置に着脱できるエプロン。前述のローマのFab Labとは別のRoma Makersという団体の作品。ローマはFab Labが3つほどある。

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夜はフェンスを越えて空き地でみんなでバーベキューを始める。「昨日、Massimo Banziにインタビューしたよ」と話すと「きちんと知的な会話はしたのか」と尋ねられる。「僕はまあ知的に話せたと思うけれど?」と答えると、「お前じゃなくて、Massimoはちゃんと知的に話したのか?」と心配していた。英語で外向きに話している時とイタリア人同士でイタリア語で話している時は少し具合が違うようだ。

最終日の夕方にはローマ市長も駆けつけ、3Dプリントされたと思しきダフトパンクのヘルメットを被ってDJがEDMのヒット曲で場を盛り上げる。どう考えてもダフトパンクがかけるとはとても思えない選曲だったが。

混沌としながらも、3日間大盛況だったが、振り返ってみるとMaker Faire Rome “European Edition”と銘打ってはいたものの、ほとんどはイタリアからの展示。パリやバルセロナなどから若干数のグループは来ていたが、もう少し様々なヨーロッパの国のMakerの展示が欲しかったところだ。しかし教育活動の一環として、一日目の午前中は大型バスでかなりの数の小学生・中学生・高校生のグループがMaker Faireを訪れており、イタリアでの関係者の努力もあってMakeの活動が広く社会で認められていると思われる点は好ましいと思った。

編集部から:初出時に不正確な情報に基づいた内容を掲載し、関係者の方にご迷惑をおかけしてしまったことをお詫びいたします。

─ 類家 利直