Arduino.orgのZero Pro(左)とArduino.ccのArduino Zero(右)
家族の中で仲違いすることほど悲惨なことはない。たとえそれが、何年ぶりかでクリスマス休暇のために集まっただけの家族だったとしても、それがどこにどんな影響を及ぼすか知れない。
現在、Arduino LLC(Massimo Banzi、David Cuartielles、David Mellis、Tom Igoe、Gianluca Martinoによって2009年に設立された会社)は、Gianluca Martinoが設立したArduino Srlに対して訴えを起こしている。
もうひとつのArduinoであるArduino Srlとは、もともとはSmart Projects Srlという会社で、イタリア国内でのArduinoの製造を担っていた。そして、よく知られているほうの最初のArduino LLCは、開発、経理、周辺のオープンソースプロジェクト、コミュニティを担当している。
しかし昨年、Arduinoボードの方向性についてMartinoと他の4人の共同創設者との間で話し合った結果、MartinoはFederico MustoをSmart ProjectsのCEOに迎え入れ、名称をArduino Srlと変更することとなった。
Arduinoボード自体はオープンソースだ。これはこのグループ発足当時に決められたことで、デザインファイルを公開することにしている。だれでもArduino互換ボードを作ることができ、まったくのコピーを作ることもできる。ただし、Arduinoという名称、ロゴ、意匠は商標登録されている。もっとも、それが安い偽物の登場を完全に抑える力にはなっていないだけど、少なくともArduinoのロゴのあるボードはその来歴を確かめることができる。
残念なことに、その事情が変わってしまった。実際に何が起きているのか、または起ころうとしているのかははっきりわからないのだが、今、Arduino LLCのホームであるお馴染みのarduino.ccのサイトとは別に、新しいArduino Srlのホームであるarduino.orgサイトが立ち上がっている。どちらも、同じ商標、ロゴ、名称、フォントを使用している。製品名も(ほとんど)同じだ。少なくとも今現在、また少なくとも部外者にとって、Arduinoと名乗る会社が2つあり、その違いが明確にわからないということだ。
昨年の11月、MustoがArduino SrlのCEOに雇われたとき、la Repubblicaに話を聞いたところ、Massimo Banziは「E’ surreale quel che sta accadendo…」と言ったという。私のつたないイタリア語によれば、つまり、状況は超現実的だ、ということで、そう言いたくなるのも無理はない。
現在、この問題は、Arduino LLCがArduino Srlと共同被告人を商標侵害で提訴している第一巡回区控訴裁判所とマサチューセッツ地裁で審議されている。
そんな背景がありながら、long awaited Arduino Zeroが、Arduino LLCではなくArduino Srlから静かに発売になった。
昨年のMakerconで、Arduino ZeroはArduinoの未来として発表されている。フォームファクターは現在のボードと同じだが、32-bit ARM Cortex M0+コアを搭載して、これまでの8ビットArduinoよりも格段に高速になり、性能が上がる。
arduino.ccサイトではまだArduino Zero の発売については触れられていないが、arduino.orgサイトには新製品のページにArduino Zero Proが発売中として掲載されている。しかし、ここを見ても、在庫があるのかどうかはわからない。在庫状況についても、はっきりわかるようには書かれていない。もっとも、時間が経てば在庫の有無ははっきりするだろう。
arduino.orgのサイトには2つの新製品が掲載されている。Arduino Zero Proは「発売中」、Yún Miniは4月末の発売予定となっている。
興味深いのは、Arduino Zero Proとは別に新製品が発表されていることだ。これは以前に示されたArduinoロードマップにもなかった製品、Arduino Yún Miniだ。
今わかっているのは、このボードは4月の末に発売になるということだけ。しかし、この状況の背景に詳しい人にはわかるかもしれないが、このArduino Yún Miniは、Linino Oneボードに、基板の色が違うだけで、うりふたつだ。Yún MiniがLinino Oneをベースに開発されたことは考えられる。単にボードの色を青くしただけという可能性もある。いずれにせよ、すぐに判明することだ。
ともかく、今の状況は五里霧中でよくわからない。裁判所による何らかの判断が示されるのを心待ちにしているのは、私だけではないはずだ。この混乱の中でただひとつ確かなのは、何がどうなろうと、Arduinoを中心にして育ってきたコミュニティ(そして、小さなこのマイクロコントローラーをMOMAの常設展示品に加えるほまでにメジャーにしたコミュニティー)にとって、良い結果にはならないということだ。
訳者から:Srlとはイタリア語で有限会社のこと。LLCは英語で有限会社のこと。ややっこしい!
[原文]