Fabrication

2015.09.15

3Dプリントで作る圧入パーツのコツ

Text by Kurt Hamel
Translated by kanai

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「丸い穴に四角い杭を入れるなかれ」ということわざがあるが、これは、丸い穴には丸い杭をいれるべきであることを暗示している。これが隠喩的に文学的に使われるならば正しいと言えるだろうが、3Dプリントできっちり入る圧入部品を作る場合には、丸い穴に丸いピンはまずあり得ない。この記事を最後まで読めば、みなさんにも、最初からきっちり入る圧入部品を作るための数多くの知識が備わることだろう。

公平を期すために言うなら、丸いピンと丸い穴は、金属機械に使用する場合には、設計上適していることがある。永久または半永久的な接合においては、厳密な寸法と公差を元に穴とピンを加工することはよくある。それらはドリルプレスと旋盤で加工し、接合するときには油圧、液体窒素、トーチなどが使われる。

そうした加工ができる機械工房はないが、3Dプリンターしか持っていないという場合を考えてみよう。いろいろな事情で、プリント後にパーツを接合しなければならないこともあるだろう。それにはもちろん、いろんな方法があるが、ここでは圧入方式だけを考えることにする。私は圧入方式が好きだ。はめ込み(スナップ)式に比べてCADで簡単にデザインできるし、接着剤も必要ない。さらに圧入式なら完全に3Dプリントだけで作れるので、専用の工具もいらない。

まずは、私が数年前に始めたところから始めよう。それは私が初めて3Dプリンターを手に入れたころだ。そのとき考えたのが、下の図のような圧入式の接合部だ。私は、ピンをやや細めにして、横向きにプリントできるように片側を平らにした。だが、これは基本的に丸い穴に丸いピンのデザインだ。両端は面取りして、それを押し込むためのパーツも2つ作った。じつに単純なものだ。

Round Pin / Round Hole Press-Fit Design
丸ピンに丸い穴の圧入デザイン

ゆるすぎたり、きつすぎたり、6回以上作り直しをした結果、やっとピッタリのサイズに辿り着いた。私はこのデザインをいろいろなプロジェクトに使った(紫のパドルボートなど)。みなさんも、何度も作り直す覚悟があれば、ピッタリの圧入ピンを作れるようになるだろう。しかし、私は気がついた。プロジェクトによってピンの長さや太さなどの寸法が変わる。または、プリンター、素材、プリント方向の違いなど、プリントの条件が変化したときも、そのつど正しいサイズを見つけ出すために試行錯誤しなければならないと。

The 3D Printed Hamel Monohull Paddle Boat a Basic Press-Fit Design
3DプリントしたHamel Monohull Paddle Boat — 基本的な圧入デザイン

今年のMaker Faire Bay Areaで、Moat Boat Paddle Battleの出展者のひとりであった私は、レースコースに設置するカメラのマウントをどのように3Dプリントしたらいいかで頭を悩ませていた。私は圧入式にしたかったが、ピッタリのサイズを探るだけの時間がなかった。それが、別のデザインを考えるきっかけになった。

丸い穴に丸いピンのデザインには、二重の問題点があった。ひとつは、寸法の猶予が小さすぎることだ。気がつかないぐらいのほんのわずかの差で、きつすぎたり、ゆるすぎたりしてしまう。ふたつめは、そのピッタリのサイズが見つかったら、それをよく憶えておいて、3Dモデリングソフトウェアでモデリングするときに、すべてそのサイズに合わせなければならないことだ。

そして私は、別の形にすれば、もっと簡単にピンと穴の圧入パーツが作れるのではないかと思った。下の図がその例だ。接触する部分を制限すれば、押し込んだときの圧力が集中して、ピンも穴も互いにうまく変形してくれるのではないか。うまくすれば、寸法上の猶予も大きくなり、いちいち憶えたり推測したりすることなく、つねにピッタリのパーツが作れるようになる。1インチの穴ならば、対角線が1インチのピンを作ればよい。

Polygon Pin / Round Hole Press-Fit Design
多角形ピンと丸穴の圧入デザイン

下の図は最終的なデザインだ。これは3/4インチの塩ビパイプと、径が大きな継ぎ手にピッタリはまるようになっている。これは2つのサイズの「ピン」を同時に試すチャンスとなった。どちらも、最初に細かいサイズを推測する必要はなかった。ピンの形状には柔軟性があるので、パイプの内径と同じサイズでプリントして、プリンターのビルドトレイから外したときに、すでにピッタリサイズになっていた。

Press-Fit Action Cam Fitting for 3/4" PVC Pipe and 3/4" PVC Fittings
圧入式Action Cam マウント:3/4インチ塩ビパイプ、および3/4インチ塩ビ継ぎ手用

大きい方の形状は、細いスプライン型としたが、小さい穴用の八角形のデザインより勝るということはなかった。もう一度作るとしたら、どちらも八角形にするだろう。しかし、どちらも一発で、穴にピッタリと収まってくれたので、結果には満足している。これが円形のピンだったら、こうはいかなかったはずだ。

この記事は、圧入パーツの形状を伝えるものではない。ピンの形状を工夫することで、デザインにもっと余裕が生まれるということを憶えてほしいのだ。そうすれば、ピッタリのサイズを探るための試行錯誤に時間を取られることがなくなる。その後私は、いろいろな形状のピンを試してみた。下の図はその初期の例だ。

Alternative Pin Designs for a Zero-Clearance Press-Fit into Round Holes
丸穴の内径と同サイズでピッタリはまる圧入ピンの形状いろいろ

どの形状にも長短があるが、今私が気に入っているのは右下のものだ。八角形は簡単に描ける。芯に開けた穴は、さらに柔軟性を高めてくれるし、どのCADソフトでも、2つの形状を簡単にセンター揃えができる。面が平らなので、横向きにプリントができ、45度のプリントもきれいにできる。ぜひこの形状を試してほしい。また、みなさん自身が気に入る形状を見つけてほしい。

原文