Fabrication

2014.06.09

ローコストハウジングの時代

Text by kanai

2014-05-14 17.32.23

Except for the Labeling, Homebuilt Construction Appears Conventional But It's Not
ラベリングを除いて、従来どおりの工法のように見えるけど、Homebuiltの住宅は違う。

低所得者層向けのプレハブ住宅を買おうとすると、あれこれ困難がつきまとう。住宅の価格は安いが、そのために資金を調達しにくい。住宅の直接の価値が低いので保険がかけられない。通常の工法で建てられた家は、所有者に長期にわたる価値を与えるが、プレハブ住宅は所有者を下向きスパイラルに陥れる。Dennis Michaudはそこに納得がいかず、何とかしたかった。その結果として生まれたのが、法規制に準拠した手作り住宅キットの会社、Homebuiltだ。

まず、この問題の歴史を振り返ってみよう。1900年代の始め、建物の質と安全性を向上させる目的で建築法ができはじめた。これは、全体的に非常に有意義な結果をもたらしたが、同時に住宅のコストを押し上げ、低所得者の手の届かないものにしてしまった。この問題を緩和するために、1976年、米国住宅都市開発省は、HUD(プレハブ住宅建設安全基準)法を制定し、従来の建築法では違法とされていたプレハブ住宅を認証した。これで住宅が安く買えるようになったのだが、このHUDホームは、上で説明したような思わぬ問題を引き起こすことになった。

建築基準を完全に満たした住宅では、建築士も技師も認定業者も必要ない。これは、資金を得やすく、市場に受け入れられることによる利益も受けられることを意味する。MakerであるDennisは、簡単で安くできれば、家を建てることがとても楽しいプロジェクトになるということもわかっていた。メイカームーブメント、CNCツール、デザイン共有、コラボレーションは、まさにこのチャレンジのためにあるようなものだ。彼は、キットを提供して舞台を整えるだけでいい。彼はそれを実行した。

彼の思考を導いた原則を紹介しよう。

彼は業界標準の材料を使っている。どこの材木店でもホームセンターでも手に入るものだ。業界標準だから、どのドアも窓もぴったり収まる。電気の配線も問題なく施行できるし、断熱材もすんなり入る。さらに、標準の木材は大量生産されているため安い。業界で認定されているものだから、建築基準にも適合する。普通の材料を使ってるので、出来上がった家も、巨大なベニヤ板のジグソーパズルみたいなものではなく、普通の家に見える。上の写真をよく見れば、彼が何を目指しているのかがよくわかるだろう。

Mortise and Tenon Construction
ほぞ接ぎが使われている。

彼は、ShopBotの3軸ミルのような安価なCNCマシンと技術を駆使することで、簡単で、間違いがなく、頑丈に作れる住宅のキットを作ろうと考えた。材料には、組み立てを間違えないように、順番や場所がわかりやすいようにラベルを付けた。Sは柱(Stud)、FJは床用根太(Floor Joist)といった具合だ。さらに、ほぞ接ぎを使っているので、間違えようにも間違えにくい構造だ。それがまた強度を増すことにもなり、一人でも建設が可能になる。ほぞの周辺にはネジ留め用の下穴が開けられていて、強度を高める仕組みになっている。

CNC-milled Tenon Predrilled Holes
CNCで削り出されたほぞ(左)とネジの下穴(右)。

彼は古い考え方を捨てた。キットの材料は、輸送コストを下げるために、できる限り現場の近くで作ることにした。たとえば、100K Garagesなどを利用する。キットは部分的に買うことができる。予算に合わせて、ステージごとに建てられるようになっているのだ。デザインはオープンソースなので、Makerコミュニティの力を借りて、高速イテレーションやコンセプトの洗練をさせていく。設計はずっとオープンのままでいく予定だ。

現在、Dennisは、彼の方法による15種類の設計を行い、3軒のプロトタイプを建てた。今のところ、約112平米の住宅の価格は3万ドル前後だ。6月にはマサチューセッツ州グロッテンで販売を開始し、後にTiny Houseと提携してニューイングランド地区全体に販路を拡大するという。

建築基準に適合しているからローンも組める。だから、認可も建築士も技士も認定業者も必要ない。転売可能な品質の住宅が自分で建てられるのだ。いいことがいろいろ起こりそうだ。何より、かなり手応えのあるMakerプロジェクトだ。

– Travis Good

原文