WXPR-1レールガンの初期のテスト(これは失敗した)
すでに、この男の話を聞いた人もいるだろう。NSA_Listbotという名前だけで知られていた男性が、3Dプリントを使ってちょっと大きめの携帯用レールガン(電磁砲)を作った。我々はNSA_Listbotを探し出して、彼自身について、レールガンの製作について、そしてこの『バッカルーバンザイ』的な装置を作った動機について、話が聞けないかと交渉した。そうしてわかったのは、その不吉なハンドルネームはさておき、彼が正体を隠していたのは、別に違法な理由ではなかった。それは彼の職場の上司を気にしてのことであり、この明らかに武器と思われるこのプロジェクトに対する否定的な攻撃を避けるためだった。下でも話しているが、「銃の3Dプリントは悪いこととして報道されている。そうされることだけは避けたかった」というのだ。
ここに彼のインタビューを掲載する。電子メールでやりとりしていたころは、まだ本名を明かしたがらなかったのだが、最後には名前を教えてくれた。David Wirthだ。Davidは2つめのレールガンは作らないという。すでに、金属オブジェクトを3Dプリントする別のプロジェクトに取り掛かっている。
本名を明かした David Wirth とその 3D プリントしたレールガン
あなた自身のことを教えてください。
私はUCLA卒業で、航空宇宙工学とナノエレクトロメカニカル・システムの学士号と修士号を同時に取得しました。暇なときは、ガジェットをいじくりまわして、新しいものを作るのが大好きです。何かをした最初の人間になったときの感覚が好きです。そのため、私は子どものころからテストパイロットになろうと思っていました。しかし大人になって、別の一等賞になれる研究と工学の道に目覚めたのです。
これが初めて作ったレールガンですか?
いいえ、高校の物理科の最後のプロジェクトで小さなレールガンを作りました(このデザインをもとにして)。しかし、これだけのスケールで作ったのは初めてです。
工学系の仕事をなさっているのですか? CADや3Dプリンターなんかを使う?
工学の学位はとりましたが、今は違う仕事をしています。
このレールガンのプロジェクトはどこから思いついたのですか?
友だちと賭けをしたんです。私はクレイジーなガジェットを作ることで知られていましたが、レールガンは作れないだろうと言われました。時間に余裕のある仕事につくまで棚上げしていたのですが、そこからレールガンプロジェクトに火が点きました。機械工作、ハンダ付け、プリントに1年半かけて完成しました。実際には今年の6月に完成していたのですが、システムの微調整に7月の半ばまでかかりました。友人の多くは(私と賭けをした者も含めて)7月に発表しましたが、つい最近になるまでRedditに投稿しようとは考えませんでした。こんなに話題になるなんて思ってもみなかった。
賭けに勝つこと以外に、このプロジェクトの最終的な目的は?
私のゴールは、大きなものでも3Dプリントで作れることを証明することでした。(通常は)合板の上に組み付けることで、機能するプロトタイピングができます。銃の3Dプリントは、コミュニティの中で悪評を集めていますが、私はそれがしたいわけではありません。ソースファイルやコードを、学生、真剣なホビイスト、学者だけに配布するシステムを作りたかったのです。このレールガンのバージョン2を作る気もありません。WXRP-1という名前はWirth eXperimental Portable Railgun Version 1の略なんですけどね。
CO2キャニスターが付いているようですが、それはなんのため?
CO2キャニスターは射出システムに使います。ポテト砲と同じように、射出物(電機子)をレールの上に打ち出すのです。射出物は、ある程度の初速度を持ってレールの上に乗せてやらなければなりません。さもなければ、高い電圧のためにレールに溶接されてしまいます。そこでCO2を使って約秒速100メートルで電機子を加速してやります。そして、レール上でさらに秒速250メートルまで加速されます。
レールガンとは、これほど大きくなるものですか?
いえ、もっと上等なキャパシターを使えば、重量は大幅に小さくできます。私のは、eBayで50ドルほどで買ったものです。もっといいキャパシターを使えば、少なくとも4.5キロほど軽くできるはずです。充電システムも軽くできるでしょう。私の充電器は最適ではありません。このデザインに使われているような適切なZVS(ゼロボルテージシステム)があれば、さらに1.3〜1.8キロほど軽くなります。なので、バージョン2ではトータルで14キロほど軽くなる計算です。
そのほかに、WXPR-1のユニークな点や面白い部分を教えてください。
レールのデザインは、ホビイストのものにしては珍しいと思います。ホビイストが作るレールガンでは、ほとんどが、工作が簡単な正方形の銃口を使っています。私のデザインでは、レールはより効率的になっています。しかも、非常に公差の小さい精密な作りになっています。私のものは唯一、そして最初の、円形銃口を持つホビイスト製レールガンでしょう。機械工房で6カ月間を費やしました。たくさんの失敗作を捨てて(髪の毛の幅よりも小さな誤差で捨てたものもあります)、やっと使えるデザインを探り当てました。もうひとつの特徴は、レールが取り外せるところです。通常のデザインでは、レールを交換しようと思えば全体を分解しなければならず、大変なコストがかかります。私の場合は、インナーとアウターの2つのレールがあり、インナーのレールは全体を分解することなく、安価に簡単に交換ができます。そのために、他のデザインよりもメインテナンスがしやすく、耐久性も高くなっています。
プリンターは何を使っていますか?
Delta 3Dプリンターを使っています。ポリカーボネイト(PC)でプリントできるものです。プレートのほとんどはカスタムPEI(ポリエーテルイミド)でプリントしています。ビルド範囲は直径約28センチ、高さ約45センチです。PLA、ABS、ナイロン、そしてPCを使いました。もっとも多く使ったのはPLAとABSでした。特殊なパーツにはナイロンとPCを使っています。プリント解像度は、水平方向が0.2ミリ、縦方向が0.25ミリです。
レールガンのCADデザイン。グレーの部分が3Dプリントされた。
キャパシターは最初にフレキシブルなバスバーで並列に接続され、3Dプリントしたケースに収められた。
このレールガンには6つの300ジュール、350ボルト、5500マイクロファラッドのキャパシターが使われている。両方で9キログラムだ。射出物に1050ボルト、1.8キロジュール以上のエネルギーを与える
エレクトロニクスはArduino Uno R3を中心に作られている。これはキャパシターの電圧、電流、温度、バッテリーの電圧を監視し、充電と放出が均一に行われるゆようにしている。
レールはアウターとインナーの二重構造になっている。アウターはアルミ製で固定されている。電機子はレールに接触しないため、レールは劣化しない。インナーのレールは銅製で、交換が可能になっている。
タングステンをコアにしたアルミの弾を撃ち出す。重さは4.3グラム。950ボルト (1.3キロジュール) でメロンに打ち込まれた。
Wirthは、下のビデオを彼のYouTubeチャンネルに投稿した(他のビデオもある)。ここでは、15グラムのタングステンの電機子を1050ボルト、1.5キロジュールでメロンに打ち込んでいる。
WXPR-1のこの他の画像は このImgurギャラリーで見られる。ビデオはWirthのYouTubeチャンネルを見てほしい。
[原文]