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2016.09.02

Arduino共同開発者、David Cuartielles氏が語るテクノロジー教育「Arduinoを教育に生かす:作ることによる学び」

Text by Noriko Matsushita

Maker Faire Tokyo 2016では、教育をテーマにした “作ることで学ぶ” 教室「Maker Classroom」を開設。8月7日には「Arduino in Education : Learning by Making(Arduinoを教育に生かす:作ることによる学び)」と題し、Arduino共同開発者であるDavid Cuartielles氏によるトークセッションが開催された。その内容をレポートする。

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世界中の誰もが新しいテクノロジーの開発者になれる
Arduinoだからできるテクノロジー教育

David Cuartielles氏は、現在、全世界で展開されているArduinoを使った教育プログラム:CTC(Creative Technologies in the Classroom)の開発ディレクターを務めている。CTCは、Arduinoを使った講師向けのトレーニングと、生徒と先生がディスカッションできるオンラインフォーラムなどがパッケージとなった教育プログラムだ。Cuartielles氏は、世界中の数多くの学校や教育機関に赴き、CTCプログラムを展開している。

Arduinoは、ハードウェア、ソフトウェア、学ぶためのドキュメントの3つが揃っているのが特徴だ。ハードもソフトもオープンソースなので、世界中の誰でも、使いたい人が自由に使うことができる。また、Arduinoを使えば、小さなものから大きなものまで、あらゆるものを制御できる。学研の小さなロボットのコントロールから、自動車の自動運転も可能だ。事例として、Cuartielles氏が開発した音楽を奏でていると動く自動車や、インドネシアのジャカルタで実施したマラソン大会での実験を紹介。これは、誰かがコースを走ると、ライトがその人物を追いかけるように点灯するものだ。アイデアさえあれば、どんな国や環境の子供たちも、Arduinoを使って新しいテクノロジーを開発できるのである。

もともとマイクロチップの開発をしていたCuartielles氏にとって、教育という分野は大きなチャレンジだった。「生徒が開発できるように教えるのは、自分自身で開発するよりも難しい」とCuartielles氏。プログラムを始めるにあたり、まずは、エレクトロニクスやプログラミングに関してまったく知識のないデザイン科の学生を対象にテクノロジー教育を行った。すると、わずか5週間でコンピューターゲームを作れるまでになったという。

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2人のプレイヤーが共同でコントローラーを操作し、画面上のトレーを運ぶゲームを開発

しかし、好成果を得たのは、大学での正規の授業でまとまった学習時間を確保できたおかげだ。より幼い子どもたちにテクノロジーの教育を施していくには、時間の制約がある。小中学校の授業では、テクノロジー教育の時間を確保することは難しい。そこで現在は、放課後やサマーキャンプを中心に活動している。Cuartielles氏は、メキシコやスウェーデンで実施したプログラムをスライドと動画で紹介。子供たちはArduinoでロボットを作り、思い思いの装飾やパーツで拡張して、自分だけのロボットに改造する。そして、ロボットを動かして遊ぶ体験を通じて、作る喜びや、さまざまな技術や知識を学んでいた。

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子どもはみんなロボットが大好き。自分だけのロボットを作りながら、さまざまな知識を習得する

テクノロジーは日々変化するから
教師も作って学び続けられる環境づくりが大切

本来は、こうしたCTCプログラムが通常の授業に組み込まれることが望ましい。エレクトロニクス、プログラミング、ハンズオンを通常の授業の中で教えていくための第1の課題は、授業時間の確保だ。45分授業で週2、3時間は欲しい。

第2の課題は、教師へのアプローチだ。ヨーロッパ内のテクノロジーの教師に、プログラミング経験の有無をアンケートしたところ、7割の教師が「ある」と答えたという。しかし、空き時間があればプログラミングをするかどうかを尋ねたら、2割しかいなかったそうだ。生徒が夢中になってもらうことと同時に、教師も夢中になれる教育プログラムをデザインすることが大事だ。なぜなら、テクノロジーはどんどん進化していく。テクノロジーを教える教師たちは、学び続ける必要がある。そこで、教師たちが空き時間に触って学びたくなるような、先生を中心に置いた教育システムを作り上げていくことが求められる。

具体的には、CTCプログラムは10~15歳を対象とした学校教育での実施を想定しており、A~Dの4段階のプロジェクトを提案している。Aは、1週間の教師向けの基本トレーニング。Bは、授業でのグループ実験。生徒たちは、小さいプロジェクトを成功に導こうとするなかで、いろいろなことを学習するだろう。Cは、9週間にわたる生徒自身でテーマを決めたプロジェクトに取り組んでいく。Dは、地域すべての学校が参加するプロジェクトの発表の場だ。友人や他校の生徒、家族へ自分たちの成果を披露することが大きな成功体験になる。

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プロジェクトはA、B、C、Dの4段階で進めていく

Cuartielles氏らは、こうしたCTCプログラムの実験を3年間にわたって行い、これまで500校以上の学校、1万3000人以上の生徒が参加。スペイン、エクアドル、スウェーデンで実験を行った。子どもたちからは、チラシを配る猫のロボット、ペットの自動給餌器、16体のロボットによる対戦、ロボットハンドなど、さまざまな作品が生まれているそうだ。