Electronics

2018.08.21

Maker Faire Tokyo 2018レポート #8:特別な技術を使わなくても発想次第で面白い展示ができる、ねくあるの「セルフ記者会見セット」

Text by Yusuke Imamura

32985_nextplusalpha

Maker Faire Tokyo 2018には600もの出展者が参加した。たくさんの展示から一番を選ぶとしたら、皆さんはどれを挙げるだろうか。例年ならば答えに窮するところだが、今年は迷わず筆者は、ねくある [NEXT+α]の「セルフ記者会見セット」を挙げたい。

マイクがいくつも置かれた記者会見台。その前に座り、「申し訳ありませんでした!」と頭を下げるとフラッシュが激しく点滅して会見者を襲う。大量のカメラが放つバシャバシャというシャッター音もスピーカーから流され芸が細かい。作品名は「セルフ記者会見セット」とぼかされているが、使うところを一度見ると実はこれが謝罪会見に特化していて、それを自分で演出できるものだとわかるしかけになっている。

「『セルフ記者会見』ってどういうこと?」「なにが起きるんだろう」と見ている側に思わせ、場に緊張が生じる。そこからフラッシュの点滅とシャッター音の嵐が起き、「そういうことか!」と事情がわかると一気に空気が弛緩する。このコントラストで人は笑ってしまう。

会場で多くの笑いを誘ったこの作品、実装そのものは比較的単純である。会見者が頭を下げると会見台の近接センサーがそれを読み取り、しばらくの間3つのLEDライトをランダムに点滅させる。同時に横に置かれたスピーカーからはシャッター音を流す。

謝罪会見で頭を下げる動作が、報道陣のフラッシュを誘発するスイッチになると見立てたところがアイデアの肝である。特別な技術を使わなくても発想次第で面白い展示ができる実例となっている。

この「セルフ記者会見セット」、実は2017年のMaker Faire Tokyoにも出展されていた。前回はセンサーを使わず、会見者が手元でボタンを押し自分でLEDやスピーカーをオンにするしかけだったという。わずかな違いであるが、頭を下げると自然にフラッシュが起きる今年の改良型はより実態に近い。このことで実演する会見者の態度に差が出るのではないかと感じた。

「ねくある」は高専の同窓生が作ったグループである。「セルフ記者会見セット」を生んだ発想力は今回だけのものではない。Maker Faire Tokyo 2015で彼らは「論文まもる君」を展示していた。

キーボードから手を離してしばらくすると、箱から急に腕が飛び出して「Ctrl」キーと「S」キーを押してさっと引っこむ。これも「論文を守るってどういうこと?」からのアームの素早い動きと、書類を保存するショートカットキーを押すという結果が笑いを誘う秀逸な作品だった。

笑いは人のストレスを軽減してくれるという。次回のMaker Faire Tokyoでも思わず笑ってしまうような新たな作品が登場することに期待したい。