Crafts

2018.08.20

3Dプリントで完璧な革の押し型を作る

Text by Tasker Smith
Translated by kanai

はじめに

革細工は、紀元前3000ごろ、古代文明の人たちがカバンや衣服や靴やサンダルに革を使うようになって始まった。それから5000年。私たちも同じ目的で革を使っている。しかし、私たちの文化の中で、革を加工する技術は進化している。このプロジェクトは、3Dプリントで革の押し型を作るというものだ。Makeyの形を革に刻み込む。

leatherFormingImageA

デザイン工程

⦁ まずは、刻印したい完成形の模様を先にデザインした。断面が四角く、縁に丸みを付いた塊を用意し、その表面にMakeyの形の窪みを作った。外面が納得のいく形に仕上がったら、使用する革の厚みに合わせて内側をくり抜いた。こうして、思い通りの形の刻印ができあがった。
⦁ モデリングが完了すれば、あとは比較的簡単だ。SolidWorksのMold Tool機能を使って2つの部品を作る。

leatherFormingImageC

押し型を3Dプリントする

⦁ 革の押し型なら、どんなプリンターでも対応できるが、表面の傷や積層の筋などは、革にはっきり写ってしまうので注意が必要だ。レイヤーの解像度をいちばん細かく設定し、刻印面に積層筋がなるべく出ない角度にモデルを配置する。さらに、プリント後は、革に写って欲しくない傷や出っ張りをなくすように、細部の仕上げを行う。

leatherFormingImageD

革の選択

⦁ 成形を行うなら、野菜なめしの牛革と業界では決まっている。他の動物の革やクロム溶液でなめしたものよりも、形を保ちやすいからだ。
⦁ なめし革は均一の厚さに加工されている。また、革には「何オンス」と記されているが、それは1平方フィート(約30×30センチ)あたりの重量を示している。たとえば、4オンスなら、1平方フィートあたり4オンス(約113グラム)だ。私は重量はあまりこだわらない。大切なのは厚さだ。このプロジェクトに最適な厚さは1/16インチ(約1.6ミリ)なので、この厚さの革を探して欲しい。
⦁ 野菜なめし革は、色の白い人の肌に近い色をしているが、水性の染色剤が多く売られている。詳しくは後述する。

革の準備

⦁ 要は、革を湿らせて、成形して、乾燥させて成形した形を保たせるのだが、いくつか注意すべき点がある。
⦁ 革が濡れすぎていたり乾きすぎたりしていたら、形が保たれない。革の片面からもう片面に水が滲みる程度がよいが、びしょびしょにしてはいけない。
⦁ 水の温度も仕上がりに影響する。熱湯で茹でると、革は縮んで非常に硬くなる。その性質を利用した技法もあるが、このプロジェクトでは70度C以下が望ましい。

leatherFormingImageE

型押し

⦁ 革が湿ったら、型に入れて数時間押し付ける。私は2時間で十分だと思ったが、細かい部分がはっきりと出ない場合は、もっと長くてもよいだろう。

leatherFormingImageF

切り揃える

⦁ 私は、革の端をきれいに切り揃えられるように型を作った。クランプで革を押しつけている間に切れば、位置がずれずにうまくいく。私の場合は#13 X-Actoナイフを使って1回で切れたが、革が硬かったり厚かったりするときは、何度か刃を当てる必要があるかも知れない。

leatherFormingImageH

革の着色と保護

⦁ 革用の染色剤は数多く売られている。私は水性のものを使った。ここに示す方法を、余った革で試してから、本番を行って欲しい。革製品のメーカーTandy Leather Factoryで聞いた方法は、綿棒に染色剤を染み込ませて、円を描くように塗るというものだ。これなら筆の跡が残らない。ただし、色が濃かったので、私は染色剤を水で薄めて使った。最後に、レザーコンディショナーを塗ることで艶が出て、コーティングによって色落ちを防ぐことができる。

leatherFormingImageI

まとめ

⦁ 3Dプリントしたものは、安っぽいとか壊れやすいとか批判を受けることが多いが、ツールとして使えば、さまざまな素材のクリエイティブな加工方法を提供してくれる。デジタルデザインとデジタル製造の多様性と、革のような贅沢な素材を組み合わせることで、こうした作業にさらなる力を与え、世代から世代へ受け継がれる価値ある作品が自由に作れるようになるはずだ。

原文