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2018.11.27

ダイキャストのミニカーを文明崩壊のバトルカーに改造するという中毒性の高い楽しみ

Text by Gareth Branwyn
Translated by kanai

テーブルトップゲームをやっている人なら、Gaslands(ガスランド)というゲームを聞いたことがあるだろう。プレイした人もいるかも知れない。文明崩壊後のカー・コンバット・ゲームだ。作者はMike Hutchinson。Osprey Gamesから発売されている。タイトルはおとなしいが、これはゲームの世界に嵐をもたらした。

Gaslandsでは、コンバットカーに改造したダイキャスト製のミニカー(ホットウィールやマッチボックスなど)でレーシングクルーを編成する。そして、専用のダイスと移動テンプレートを使い、シナリオに従ってレースを行う。そこでは、ポイントを支払ってクルーに装備する武器や卑劣な手段を使って、相手の車を攻撃できる。一般的なシナリオでは50ポイント(Cans)が与えられ、車や武器や特殊能力に使うことができる。

ゲームは非常に単純なものだが、これには意味深長な背景の物語がある。裕福で権力を持つ人たちは地球を離れて火星に移住してしまったため、荒廃した地球に残された人たちは自給自足の生活を強いられている。火星の住人は、なんでもありのコンバットカー・レースを地球上で開催し、それをリアリティー番組「Gaslands」で楽しんでいる。この番組は火星で大人気だ。ひとつの番組シーズンで優勝した者には火星への片道切符が贈られ、地球の惨めな生活から脱出できることになっている。

Gaslandsの最大の魅力は、13ドル(約1,500円)でルールブックを買えば、あとの素材は基本的に自分で作るという点にある。ルールブックの巻末にはテンプレートや標識があり、それをプリントアウトすれば、山や地形や建物が作れる。なかでも楽しいのは、ミニカーをマッドマックス風に改造する作業だ。

警告:これは大変に中毒性の高い遊びです。ミニカーは新品で買っても値段はたかが知れているし、ネットで中古を探せばタダ同然でまとめて手に入る。それに、武器や装甲やあれやこれやを取り付けて、文明崩壊後な感じにペイントして仕上げる。ひとたび手を付けたら、もう止められない。

ここに、私が初めて作った3台の車(初めてのクルー)と、初めて作った風景パーツを紹介しよう。

初期投資が少なくて済み、プレイして楽しくて、しかも自分で作らなければならないものが山ほどあるので、これぞまさにMaker向けのゲームと言える。子どもとも遊べるし、メイカースペースのゲームナイトにも、スカウト連盟などのアクティビティにも、もって来いだ。

では、これまでに私が学んだ、Gaslandsのための車の入手方法、改造方法、塗装方法について説明しよう。

必要なもの

ミニカーだ!

ミニカーを手に入れるのは簡単だ。簡単すぎる。ドラッグストアでも、スーパーでも、コンビニでも、デパートでも、ホットウィールやらマッチボックスやらが売られている。普通はどれも1ドル以下だ。eBayのオークションサイト探せば、中古のミニカーがタダ同然の値段でたくさん出てくる。私はその中古のミニカー15台を8ドルで買った。たしかに、当たり外れはある。それでも、改造の候補となる良いものが4〜5台はあった。残りはパーツを取り出したり、ゲームボードの荒れ果てた地形の放置車両などに使った。探そうと思えば、いくらでも目に入ってくる。とにかく安いので、買わずにはいられない。

下の写真はドラッグストアで買ったひとつ1ドル30セントのホットホイール2台だ。今私は、デスカルトなレーシングクルーを作っている。その名はThe Nacros(マッドマックスのウォーボーイズの元の名前だ)。この段階では少し滑稽な雰囲気だけど、こいつらをゴスでマックスな感じに仕上げる予定だ。

下は、私がネットで見つけたSkull Crusher(上の写真の右)の改造車だ。私の車も、こんなドクロ風にしてみたい。

コツ:Gaslandsの車の画像を保存して、色の塗り方やウェザリングの方法などの参考にしよう。

道具

ミニカーの改造には、上等な工具も特殊なツールも必要ない。下は、私が普段からミニカーの改造に使っている工具だ。

ハサミ – 紙、薄いプラスティック板など、いろいろなものからパーツを切り出すのに使う。

カッターナイフ – モデラー御用達の便利な道具だ。

コツ:カッターの刃はこまめに交換しよう(または目の細かいサンドペーカパーで研ぐ)。よく切れるカッターなら作業がずっと楽になる(しかも安全)。

プラモデル用ニッパー – プラモデルの部品をランナーから切り取るための、先が曲がった薄刃のニッパー。その他の小さなプラスティック部品の切断にも使える。


糸のこぎりもあると便利だ

糸のこぎり(ホビーソー) – 絶対に必要というわけではないが、車から不要な部分を切り取るときは便利だ。

ピンセット – 小さな部品を拾ったり、配置したり、デカールを貼るときなどに使う。

 – 塗装用の筆は何本か必要だ。固くて大きな筆は下地の塗装に使う。もう1本、固くて大きな筆をドライブラシに使う。あとは、細かい部分やハイライトを塗る細い筆を数本。Gaslandsのいいところは、文明が崩壊した後の世界だという点だ。ほとんどのものが汚くて、錆びてて、壊れてて、朽ちている。だからGaslandsの車の塗装は、他のミニチュアのときと違って失敗の許容範囲が広い。クラフトショップで売っている安いものでも十分だ。

回転ツール – ドレメルなどの回転ツールは、いちばん縁遠いものかも知れない。しかし、これがあれば車のボディーとシャーシをつないでいるリベットを削り取ったり、部品を切断したり、磨いたりができる。ただ、車のリベットの除去の場合、小型のツールではパワーが足りないこともあるので、普通の電動ドリルを使うといいだろう。

爪楊枝、輪ゴム、綿棒、ペーパータオル、瓶、小さなカップ、ワインのコルク — こうした小物も揃えておくと便利だ。塗料をかき混ぜたり、色を混ぜたり、塗料や部品を保管したり、部品を固定したり、動かしたり、いろいろに使える。

材料

もうひとつ、Gaslands用の車両作りの楽しさに、あらゆるものを使って装甲や武器やブルドーザーのブレードやスパイクや、その他の装飾用部品が作れるところがある。ほとんどが紙と薄いカードと爪楊枝で作られた見事な車を見たことがある。ここに、私の引き出しの中に溜め込んである材料を紹介しよう。


いろいろなプラスティック板が入ったEvergreenの半端素材の詰め合わせバッグは、プラスティック部品製作の初心者に最適

プラスティック板 – どんなプラスティックの切れ端でもいい。EvergreenPlastructが販売している模型用の板でも、キッチンで出るプラスティックのゴミでもかまわない。プラスティックの他に、ボール紙でもミニカーの装甲などのパーツが作れる。EvergreenやPlastructでは、プラスティック板の端材をパックにして売っていたりする。eBayで探してみて欲しい。0.1ミリから0.8ミリ厚のものが扱いやすい。滑らかなものも、テクスチャー入りのものも使える。

 – 私は、ボンド紙や包装に使われていたさまざまな厚さのボール紙をとっておいて使っている。紙は、ベルト、ロッドの締め具、薄い装甲板、その他、車の細かい凹凸などを作るのにとても便利だ。

プラスティック管 – プラスティック板と同じく、武器や車のフレーム、サスペンション、排気管、その他、実車では金属棒が使われているような部分を作るときに、プラスティック管があると便利だ。これも、買ってもいいが、ゴミとして出ていることがある。市販されているプラスティック端材のパックにも入っていることが多い。

アクセサリー用のチェーン – いらなくなったアクセサリーのチェーン(クラフトショップで買ってもいい)は、色を塗ってウェザリングを施すと、かなりリアルなケーブルやチェーンになる。

金属のメッシュ – 彫刻の下地を作るための金属のメッシュ(画材屋などで売っている)は、窓やその他の防御用装備に使うといい感じになる。

爪楊枝 – ミニカーの改造には非常によく使われる。武器の銃身、車軸、スパイクなど、いろいろ利用できる最高の素材だ。

針金 – 細い針金、ピアノ線、ハンダなどは、車の配線やパイピングに使える。煙管用のモールクリーナーも使える。これをライターオイルに浸して火を点けて、プラスティックのブラシ部分を焼き払ってしまえば、かなりリアルなケーブルができる(危険なので必ず外でやるように)。

キッチンのゴミ – ひとたびミニカーの改造と地形の製作を始めると、たちまち「地形の目」が養われる。ほぼあらゆるゴミを、モデリングの土台や部品として使えないかという目で見るようになるのだ。これは中毒になる。一時期、私は寝室のクローゼットに大きな箱を置いて、回収したゴミをいっぱいに入れていたが、掃除熱に浮かされたときに捨ててしまった。今ではすごく後悔している。あの中には貴重な宝が詰まっていたのに。


Amazon(プライム)で9ドル以下で買ったレゴ人形用の武器のセット。車に使えそうな部品や武器が山ほどある

プラモデルの部品 – 最高にリアルに見える部品は、プラモデルの部品だ。Gaslandsは20ミリのゲームなので、およそ1/72スケールということになる。とは言え、スケールが違っていても使えないことはない。GoodwillやeBayなどで、安いプラモデルを探してみよう。そして、いろいろな部品を集めた「ビッツボックス」(小物箱)を作っておくといい。たくさん部品が集まれば、その中を探るだけで次の改造のアイデアが得られる。いい部品がひとつかふたつ見つかれば、それだけで想像力が掻き立てられて、全体像が浮かんでくるものだ。

Gaslandsの改造用部品 – Gaslandsの周りには、車の改造用部品やゲーム用部品を作って販売する小さなメーカーがいくつも現れている。今のところ私が気にっているのは、Ken’s Chop Shop & Gun Depot(Facebookグループ、Gaslands Trade and Salesからアクセスできる)と、レジンキャストの部品を販売しているポーランドのメーカーGreen MiniaturesのMad Carsシリーズの2つだ。


Green MiniaturesのMad Carsパックの一部

消耗品

接着剤 – 瞬間接着剤、酢酸ビニール系接着剤、それにオプションとしてホットグルーがあると便利だ。

アクリル絵の具 – 何度も言うが、Gaslandsのモデリングは許容範囲が広いので、クラフトショップで売ってる安いアクリル絵の具で十分だ。かならず、水で薄めて薄い層を塗り重ねること。Michaelsなどでは、Apple Barrelブランドのクラフト用ペイントが売られている。60ミリリットル入で1ドルほどだ。

ウォッシング – ウォッシング(ミニチュア界ではふざけて「液体の才能」と呼んだりする)は、モデルに驚くほどの深みを与えてくれる。私はArmy PainterToneシリーズ、CitadelのNuln Oil、Agrax Earthsadeを愛用している。

アートチョーク – ホビー用品のメーカーからは高価なウェザリング用の着色パウダーが売られているが、お絵かき用の色付きチョークでも同じ効果が得られる。チョークを砕いて粉にして、綿棒や柔らかい筆で塗る。そこそこの赤と黄色と茶色が入ったセットを買えば、錆びた感じが出せる。

テクニック

Gaslandsのミニカーの改造は、銃や小物を車に接着して文明崩壊後の感じを出せれば十分なのだが、出費に対して最大の効果を引き出すには、ちょっとしたテクニックがいる。

デポスティング

– ミニカーを分解しなくても改造はできるのだけど、もしボディーとシャーシを分けられれば、もっといろいろなことができる。窓ガラスを外したり(そのかわりに装甲板や金属のメッシュを入れる)、エンジンを外してアップグレードしたり、タイヤや排気管を大きくしたりも可能だ。20ミリクラスのダイキャスト・ミニカーの場合、ほとんどが裏側に2つのリベットポストがあり、それがボディとシャーシをつないでいる。このリベットよりもちょっとだけ直径の大きなドリルビットを使って、慎重にリベットを除去しよう。少々神経を使う作業だ。できれば万力で車を固定するとよいが、なければしっかりと抑えておくことだ。焦らず、時間をかけて。

ウォッシング

– 下塗りした車に薄くベースコートを塗り、ウォッシュ剤を載せる。そしてハイライトを入れて、ドライブラシをかける。どう転んでも悪くなりようがない。初心者でもうまくいく。ウォッシュ用の着色剤は、Army Painterなどのメーカーから発売されている。高価だが、買って損はないと思う。小さな17ミリリットル入のStrong Toneがあれば、かなり持つ。

ウェザリング – これは文明崩壊後の未来を舞台にしたゲームなので、モデラーはみんな、車を汚して、錆びさせて、ウェザリングを施す。こうした効果は、錆や泥に近い色のチョークを粉にして使うことで簡単に出せる。ボディの下側のエッジ部分、タイヤの後ろ、塗装が剥げて錆びそうな部分にそれを施してやる。同じような色の塗料を薄めて使ってもいい。模型のウェザリングの方法はYouTubeでたくさん紹介されているので、参考にするといいだろう。


中くらいの明るさの茶色を、すり減っていそうな部分にスポンジで塗り、茶色や赤のチョークで泥や錆や、経年劣化の様子を出している


塗料が禿げそうな部分に銀色のペイントを塗り、茶色のチョークで作ったウェザリング用の粉で泥や削れの感じを出した

モデルを組み立てる

車をどのように化けさせるか、それは自分次第だ。これだと感じる車を選び、ビッツボックスの材料を漁り、インターネットで他の人たちが作ったGaslandsの改造車(下の「資料」の項を参照)を見て刺激をもらう。本当に楽しい。だいたいのアイデアが浮かべば、基本的には材料を組み合わせるだけだ。ただそれはアドリブの作業となる。私の場合は、どんな車にするか大まかなアイデアからスタートするが、最終的に出来上がるのは、いつもまったく方向性の違うものだ。下の写真は、分解して、サンドペーパーで磨いて、部品を組み合わせたところだ。下塗りと塗装の準備が整った。


私のホットウィール、Terrain Stormの改造車。砲塔と迫撃砲を装備した武装バギーに仕上げた。前部のスパイクは、Warhammer40000のOrk Buggyのものだ。大砲は私が持っていた40k Bitzのもの。それを支える砲塔には、15ミリのスチームタンクの砲塔を使った。後部に立っている6本の筒は迫撃砲だ。ポールとドクロのマスクはOrkの車両から取った。車輪のスパイクは爪楊枝。ドクロ付のチェーン(反対側)と、40KのOrk爆弾もいくつか加えている

注意:テーブルトップ・ミニチュアゲームでは、たいていがWYSIWYG(What You See is What You Get:見たまま)の約束事に従っている。そのキャラクターがある武器が持っていると宣言したら、そのようにキャラクターを作らなければならない。しかし、GaslandsはWYSIWYGではない。使える武器や能力は、ダッシュボードのカード(RPGのキャラクターシートのようなもの)で宣言すればいい。そのとおりに車を作る必要はないのだ。実際にスペックを想像して、そのとおりに武器を搭載してモデルで表現するのは、とても楽しいんだけど。特定のシナリオのために武器を乗せたり外したりしたいときは、ダッシュボードで変更するだけで済む。

下の写真は、ほぼ完成状態の車だ。まだ、ハイライトと錆とウェザリングを加えたいと思ってる。どこかで作業を切り上げて、これで完成と言い切るのは難しいことだ。

見ておくべき動画

Gaslands関連の動画が、YouTubeでたくさん公開されるようになった。最新のものを検索してみて欲しいのだが、残念なことに、動画の質には当たり外れがある。ここに、私が好きなGaslandsコンテンツのクリエイターによる動画をいくつか紹介しよう。

上の動画の作者はGaslandsの車を作っているわけではなく、ただ荒廃した世界の車両をキットバッシングで作っている。しかし、彼の動画からは山ほどのインスピレーションがもらえるし、Gaslandsのモデリングに使えるテクニックもたくさん見られる。

このチャンネルでは、現在2つのGaslandsのバトルの様子を伝えている。ゲームがどのように進行するか、これを見ればよくわかる。

資料

インターネット上のとても役に立つGaslandsの情報源を紹介しよう。

Osprey Games – Gaslandsルールブックの発売元。
公式Gaslandsページ – Gaslandsの作者Mike Hutchinsonが運営するサイト。役に立つ情報が豊富にある。
Friends of Gaslands – Gaslandsテンプレート、ダイス、ダッシュボードなどを公開しているサイトのリンク集。
Gaslands Facebook Group – Facebook上のメインのGaslandsグループ。1万人以上のメンバーがいる。
Instagramの#Gaslands – このハッシュタグに登録すると、圧倒的な数の車の改造や地形のアイデアが毎日見られる。彼らの創造性は、私のスーパーチャージャーのインテークマニホールドも爆発するほどだ。
ThingiverseのGaslands – Gaslandsのゲーム用アクセサリー、地形、武器、自動車の部品の3Dデザイン・ファイルがどんどん増えている。


Gaslandsのボード用に作った別の地形部品。こうした小さなジオラマを作って、これに物語性を持たせるのが大好きだ


私の次の地形プロジェクトは、このNitro-Guzzoline Depotだ。ここですべてをブロックアウトする。車の右側にはブリキ張りのガレージも作る予定

原文