2009.10.27
アンティーク時計に新しい命
誰かが古い懐中時計にプリント基板とLEDを埋め込んだのだと、思うでしょ? たしかにそうなんだけど、それだけの話ではない。ボクにすれば、これはアイデアと実行の産物だ。アイデア自体は、そんなにビックリするようなものではない。だけど、それを実際に作ったところがすばらしい。とにかくビデオを見て欲しい。これがどんなにクールなものか、わかるはずだ。本当に時を刻んでいる。”短針” と “長針” が文字盤の上を進んでいく様子は、John Taylorの Corpus Clockを思わせる。デザインの美しさと、技術の高さに加えて、この時計には、いい話がある。作者Paul Poundsの言葉を抜粋しよう。
私の祖父は時計師でした。2005年に祖父は亡くなり、私は祖父の壊れた懐中時計のコレクションを相続しました。私はマイクロメカニクスよりも、マイクロエレクトロニクスを得意とするので、祖父の修理を待っていた時計のひとつを電子の動きで甦らせることが、祖父への感謝の証になると考えました。
子供のころから祖父とは遠く離れて暮らしていたため、祖父のことはあまりよく知りません。祖父は静かで控えめな人という印象ですが、このデザインは、祖父の時計師としての高度な技術に見合うものだと思います。全盛期には、祖父はオーストラリアで屈指の時計師でした。その確かで忍耐強い手先によって、時計の中のどんに小さな歯車や脱進装置も見事に調整していました。祖父はとくに、微細な婦人用腕時計の修理に長けていることで有名でした。
第二次世界大戦中、祖父の技術があまりに高度で貴重であったことから、軍役が免除され、かわりに、トゥウンバの鋳物工場で精密機械の組み立てにあてられました。もし軍に志願しようものなら、逮捕して国に引き戻すとまで言われたそうです。
Australian Horologist誌が、ピンの中心に穴を通すという難題に挑戦する技術者を募集したのですが、祖父は、縫い針から作った手製のドリルを使って、みごとに穴を貫通させました。しかし、それだけで満足する祖父ではありませんでした。別のピンをミニチュア旋盤でヤスリをかけて細くし、そのピンの穴に通したのです。さらに祖父は難易度を高め、3ペンス硬貨の縁にドリルで穴を開け、ピンを通しました。こうしたコインやピンをいくつも作っては、お客さんを驚かせていたそうです。<
祖父に見せることはできませんが、もし見てもらえたなら、祖父の壊れた時計が、新しくて使える物に生まれ変わったのを喜んでくれると思います。このプロジェクトは、祖父の思い出に捧げます。
[Hack a Dayより]
– Sean Michael Ragan
[原文]