バイオハッキングをやってみたいと思っても、プロフェッショナルな機材を揃えようとしてたら、何十万ドルもかかってしまう。しかし、ちょっとした工夫と忍耐力があれば、500ドル以下で始めることができる。
大きな機材
まずは、研究室の中でいちばん大きな面積を占める最大の機材から始めよう。冷蔵庫、冷凍庫、加圧滅菌器、培養器だ。教育用のバイオテック・キットを使う程度なら、キッチンの冷蔵庫の間借りできるが、もう少し本気の実験を行いたいのなら、専用の冷蔵庫を用意するべきだ。教育用キットは、ほとんどがとても安全に作られているが、未知のバクテリアを選別するといった、昔からよく行われている実験は、一般的な初心者は知らないだろうが、食品といっしょにすると健康に危険が及ぶ場合がある。それに、キッチンの冷蔵庫を間借りする程度では広さが足りなくなる。食品への感染を防ぐためにも、専用の冷蔵庫が必要だ。
小型の冷蔵庫なら、Craigslistなどで50ドル程度で手に入る。または、Freecycleでならタダで入手できることもある。庫内の上部に小さな製氷器が入っているものは避けよう。氷がついてしまうし、庫内が狭い。冷蔵庫と同じぐらいの小さな冷凍機を用意するか、2ドア型の冷凍冷蔵庫を選ぶ。新しいタイプの冷凍庫には、自動霜取り装置が付いている。これは、一時的に冷却コイルを温めて、霜が付いてしまうのを防ぐというものだ。そのため、庫内の温度が上下し、制限酵素のような繊細な素材に害が及ぶことがある。自動霜取り機能をオフにできるものを選ぶか、さもなければ、生物素材を発泡スチロールの箱に入れて冷凍庫に入れるようにしよう。
加圧滅菌器は、基本的には圧力鍋だ。水の沸点よりも高い温度にして培養基を滅菌する。なので、普通の圧力鍋でも十分にその役割を果たしてくれる。何もないときは、電子レンジで培養基を加熱しても滅菌できる。ただし、瞬間沸騰に気をつけて。アップグレードしようという気になったら、Craigslistを探してみるといい。意外に安く手に入る。普通のサイズのフラスコが入るように、直径18センチ以上のものを選ぼう。数百ドルの出費は覚悟しておくことだ。
培養器は、慎重な温度管理のもとで細胞を培養するための装置だ。中古の孵卵器やヨーグルトメーカーでも代用できる。または、クーラーボックスに爬虫類用のサーモスタット付きのヒーターを入れて自作することもできる。
卓上ツール
遠心分離機は、培養液から細胞を集めたり、DNA、タンパク質の分離、複合的な液体から特定の要素を取り出すときなどに役に立つ。バイオハッカーとして有名なCathal Garvey(@onetruecathal)は、3Dプリントで作れるDremelfugeを開発した。ドレメルを使って遠心分離機を回転させるのだ。3Dプリンターの設定が悪いと、プリントした遠心分離機は遠心力で破壊されてしまう。Shapewaysで注文するのが無難だが、同じぐらいの価格で、中古の遠心分離機が買える。中国製のものを探せば、4000rpm程度のものが50ドルから100ドル。1万rpm 程度のものが150ドルといったところだ(ここでも3Dプリンターで作る方法が公開されている)。
市販のゲル電気泳動装置は数千ドルするが、基本的には直流電源とプラスティックの箱と2つの電極で成り立っているものだ。減光スイッチやブリッジ整流器を使えば、簡単な電気泳動装置が作れる。プラスティック容器は100円ショップで売られているもので十分。電極にはステンレスかプラチナの線を使う(Cheapass Scienceが21ドルの電気泳動装置の作り方を紹介している)。
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)装置も欲しくなるだろう。これも、市販の装置は数千ドルするが、インターネット上ではいくつかのDIYデザインが公開されている。OpenPCRでは、Open Source Hardware PCRキットを59ドルで販売している。バイオ工学用の機器の多くは、eBayやCraigslistなどのサイトに中古品が出回っている。また、バイオハッカーのためのネットショップ、The Odinでは、中古のPCR装置を買い上げ、きれいにして販売している。
感染の危険性をなくして微生物を扱うためには、滅菌環境を整える必要がある。手始めは、アルコールランプやブンゼンバーナーだ。キノコの栽培や植物組織の培養には、簡単な層流フードが使われる。HEPAフィルターを通した超高純度の空気を培養物の上に流してくれる。さらにアップグレードしたいなら、バイオセイフティーキャビネットを使う。プロの研究所では、移転の際にこうしたキャビネットを置いていくことが多い。もし、そうした施設と繋がりを持って、本気で取り組みたいと思うのなら、タダで手に入れることも可能だ。
器具
少量の液体を正確に測りたい場合は、調整機能付きのスポイトが必要だ。安い中国製のスポイトなら、The ODINなどで40ドル程度で買える。一桁のマイクロリットルからミリリットルまでの範囲で、サイズの異なるものを2つか3つ揃えておくとよいだろう。
その他に必要となるのが、デジタル温度計、0.01グラム単位かそれ以上の精度で測れるデジタル秤、ニトリル手袋1箱、それにさまざまなガラス器とプラスティックの器だ(これは100円ショップで手に入る)。
ハッキングを楽しもう!
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