Electronics

2019.07.05

[蓼科の工房から]Raspberry PiとNode-REDで自動撮影カメラを作り、蓼科の森の動物を撮影する

Text by Noriko Matsushita

筆者は長野県の蓼科という別荘地の森で、ライター業のかたわらカフェを営んでいる。以前、自作の物置をパン工房に改装する話を書いたが、その際、物置から取り出した荷物をガレージに仮置きするため、知人から木製のパレットを譲ってもらった。改装工事が終わり、荷物を納める新しい物置を建設し、ようやくパレットが不要になったので、これを再利用することにした。

まずスタッカブルのプランターを作り、残りの材でイチゴ用のプランターと野鳥の餌台を作った。


不要になったパレットを加工

プランターと餌台
パレットを再利用したプランターと餌台

以前は、庭の切り株を餌台にしていたのだが、家の中からは見えない位置にあったので、窓から見やすい花壇に餌台を新設することにしたのだ。

こうして新しく作った餌台を花壇の真ん中に設置し、さらに、時折姿を見せるニホンリスが巣のある高木から下りてきやすいように、通路代わりの枝を渡してみた(ニホンリスは樹上で生活するので、地面を歩きたがらない)。

まもなく、シジュウカラなどの野鳥がよくやってくるようになった。

Raspberry Piで自動撮影カメラを作る

とはいえ、いつまでも窓の外を眺めているわけにもいかないので、鳥たちを自動的に撮影できる動体検知カメラを作ってみることにした。ちょうど、Raspberry Pi Zero Wとカメラモジュールが手元にあったので、あとはなにかセンサーがあればいい。ネットで調べてみると、赤外線人感センサーのHC-SR501が定番らしく、3個セットで1000円以下だったのでこれを使うことにした。余りはまた別の用途に使えばいい(この後、micro:bitでネズミ捕りを作るのに使った)。

ネズミ捕り
micro:bitとHC-SR501を使ったネズミ捕り。ネズミの通路に置いたら翌朝には捕獲に成功した

自動撮影カメラの仕組みはごく簡単なものだ。HC-SR501にジャンパーワイヤーをハンダづけして、Raspberry Piのピンヘッダーに接続。GPIOを監視して、入力があればカメラで撮影する、というもの。

プログラムにはNode-REDを使うことにした。細かな制御が簡単にできるし、Dashboardでウェブインターフェースも作れる。Node-REDでカメラを扱うには、node-red-contrib-camerapiを使った。とりあえず、赤外線センサーの信号で撮影するフローを作って動作を確認したら、次は、全体を収めるパッケージ作りだ。


Node-REDのDashboardでつくったWebインターフェース

防水防塵ケースの作成

外に出しっぱなしにするので、防水・防塵は必須だ。安価に作りたいので、食品用の完全密閉容器を使うことにした。カメラと赤外線センサー用の穴を開けて、カメラにはペットボトルを切り取って雨よけのカバーを取り付ける。これらをホットボンドで固定した。

中に収めるRaspberry Piは、ガタつかないように段ボールでフレームを作った。このフレームもホットボンドで容器に固定している。

電源はモバイルバッテリーを使用。これも容器に入れて密閉し、餌台の近くに立てたポールに輪ゴムで固定した。ちなみに、モバイルバッテリーの容量は10000mAhで、特に省エネ対策をしない状態で2日間ぐらい稼働する。

防水ケース
食品用の密閉容器を加工して防水ケースを作成

Wi-Fi信号によるセンサーの誤動作を防ぐ

こうして、野鳥撮影のための自動撮影カメラができた。設置してみたところ、至近距離から鳥の自然な様子が撮れてとても面白い。

餌台とカメラを設置
餌台の横にカメラを設置

しばらく楽しんでいたが、鳥がいなくてもけっこう撮影されていることに気がついた。屋内に持ち込んで、赤外線センサーを覆ってみると、ほぼ正確に2分ごとに1枚撮影されている。Node-REDのデバッグウィンドウでも、2分ごとの赤外線センサーからのトリガーが確認できた。センサーの不具合かと思い、ほかのモジュールに替えてみても同じ。

いろいろ調べたところ、HC-SR501がWi-Fi信号で誤動作するという情報を見つけた。試しに、Raspberry Piとセンサーを離して見たところ、確かに誤動作は止まった。しかし、サイズが限られている容器内でRaspberry Piとセンサーを離すのは難しい。可能な範囲でセンサーを離し、あとはアルミホイルで電波を遮断することにした。


アルミホイルをくるんだ紙をケースのすきまに詰めてWi-Fiの電波を遮断

これで、センサーの誤動作は収まり、安心して設置できるようになった。その後、Node-REDで機能を追加して、夜間は撮影しないようにしたり、ウェブインターフェースで現在の撮影枚数と最新画像を1枚表示するなどして使いやすく調整している。

2019年2月に本格稼働させてから、シメ、アトリ、シジュウカラ、ゴジュウカラ、ヤマガラ、コガラ、イカル、カワラヒワ、キジバトなどの姿が楽しめている。特に楽しいのは、リスの姿が捉えられたこと。以前はごく稀に目撃していたが、動きが速く一瞬で姿を消してしまうので、なかなか撮影が難しかったのだ。

春になってからは、頻繁にやってくるようになり、ヒマワリの種を無心に食べたり、餌台の上を動き回ったり、カメラにちょっかいを出したり、慣れてきた様子。動物たちの姿を見るのは心が和み、カメラを作って良かったと思うひとときだ。ただ、1日に数百枚の画像をチェックすることになり、思いのほか時間を奪われている。

カワラヒワ
カワラヒワの親子。野鳥たちがひなを連れてくるようになった

ニホンリス
パンを食べる子リス。成長を見守れるのがうれしい