Fabrication

2007.05.10

21世紀の製造業はこう変わる

Text by kanai

大小さまざまなモノづくりの現場が今どうなっているかを記した「The Transformation of Manufacturing in the 21st Century」(Lawrence J. Rhoades)が、なかなか面白い。「……新しい産業革命によって、人々は住みたいところに住み、その場その場で欲しいものを作っていくという生活が実現する……」
オープンソースハードウェアのプロジェクトや3Dプリンターから、キットやETSYのような会社まで、すばらしい内容だ。

ミクロサイズの微粒子から作った薄い皮膜から製品を形作る技術は、設計に自由をもたらし、製品の部品数を劇的に減らすこととなる。さらに、部品の取り付け器具など不要になり製品が軽量化され、余計な素材やエネルギーを無駄にすることなく機能を最適化できるようになる。部品製造に使われなかった微粒子は、次の(あるいはまったく別の)部品にリサイクルされる。古い製品や不要品に含まれる金属は、それぞれの現場で金属パウダーにリサイクルされ、将来の製品の原材料となる。したがって、在庫の保管コストやリスク、運搬コストが激減し、エネルギー、材料、労働力の節約ができる。

おまけに、この製造工程は高度に自動化されるので、製品の製造、消費者への配送に必要な人材も大幅に減らすことができる。それにともない、物理的製品の製造工程における低賃金の工場労働者、いわゆるタッチレイバーが競争に与える影響力も少なくなる。

革新的な製品のデザインの需要は劇的に増大するであろう。デザインは電子的にやりとりができるので、デザイナーはどこにいても仕事ができる。工業デザインの重要性が低くなり、デザインの優劣は、基本的に、消費者の嗜好をどれだけ理解し対応するかという点にかかってくる。そのため、消費者の近くで暮らしたいと考えるデザイナーも増えるだろう。

たとえ、遠いところでデザインされた製品でも、製造は現地でできる。実際の製品は、消費者が住む土地でリサイクルされた原料を使って、”自分の家”で、または”近所で”作られるようになるだろう。それにより、大都市は商業的な優位性を失い、都市の住民は地方に分散されるようになるのである。

The Transformation of manufacturing in the 21st Century – Link
訳者から: 写真もなくてすみません。これは、ミクロサイズのプラスティックや金属の粒子を吹き付けて形を作る3Dプリンティングや皮膜を重ねて物を作るレイヤー製造法で工業界の仕組みが変わるぞっていう報告書の「結論」部分の抜粋。ここだけ読むと、たしかにMake的な未来の到来を予感させる楽しい内容だけど、全体を読むと、アメリカの工業の没落を食い止めるために、工業技術的にはどーしたらいいかっていう趣旨で、夢の未来のお話というわけではない。最後に、この製造方法は発展途上国の消費者にも大きな恩恵をもたらすだろうが、途上国を支えている単純労働力への打撃を大きいだろうとも書かれている。一国や一企業が潤うだけの革命なら、19世紀的だわよね。でも技術の流れはそっちに向かっているわけで、世界中のみんながよく考えておく必要がある。そこは19世紀と違うところだ。戦争なんてやってる場合じゃあい。……いやあ、年を取ると物事に批判的になっていけません。わっはっは……。
[原文]
関連:
オープンソースハードウェアって何? – Link