2010.06.25
モバイルラボ・プロジェクト Part.3 – 什器固定編
どこでもモバイル工房シリーズの3回目だ(ことの始まりは Part.1 を見てください)。前回の車両編でトレーラーの断熱処理を済ませて、作業台や部品棚などの設備を、最初の旅でめちゃくちゃにならないようしっかりと固定する準備が整った。
空間的な条件は厳しいが、使ってみると、船の居住空間(どうしても水や塩水で腐食する)よりは快適であることがわかった。ここでの問題は横加速度、高周波数の振動、長時間の繰り返し加重、衝撃などといった、移動に関連するものだ。安物のオフィス家具では粉々になってしまう。部品用の引き出しは飛び出さないようにして、張り出した棚に重量物を載せないようにしなければならない。
モバイルラボは、オーナーの目的によって形が異なる。そこで、ここでは特定のレシピではなく、私にとって有用であったテクニックをバイキング形式で披露しようと思う。
最初の難関は、適切な什器を見つけることだった。ホームセンターなどで売られている化粧板の組み立て家具などはダメだ。最初から完成品として売られていた時代の堅牢なものを選ぼう。前世紀の一流ブランド(Steelcase、Steelmaster、Cole Steelなど)は中古オフィス家具屋やオークションに出回っている。運が良ければ知り合いのオフィスの改装などで不要になった什器をゲットできるかも。私のモバイルラボ、Polarisの什器はすべて、軽快に使えるスチール製だ。2.4メートルの作業テーブルと、1.5メートルの立って使う作業台、ファイルキャビネット、引き出し、そしてゴージャスな古いデスクという構成になっている。ひとつだけ仲間外れなのが、3メートルの巨大な木製多段式テーブルだ。20年ほど前に、動かすのが大変なのでほとんど廃棄状態だったものを、タダで手に入れた。
什器の配置は、Google SketchUpでモデルを並べるというのが最新流行のやり方だが、私はポストイットを切り抜き、方眼紙の上に並べて納得のいくまで配置を考えるという方法をとった。それですべてが美しく収まったが、本当のお楽しみは、実際に最初の什器をトレーラーに引きずり込んだときから始まった。これをどうやって固定するかだ。
私のWells Cargo EW2024トレーラーでは、合板の床を裏側で鉄製のジョイントで留めている。そこまでボルトを通して固定するのは、ソケットレンチを使えば簡単だ。古い作業台のように、ほとんどのものは、足か平らな面があれば、床に直接、またはブラケットを使って固定できる。
同じように、エアーコンプレッサー(車輪と取っ手を取り外して、水平になるようにブロックを追加した)、床に固定するタイプのドリルプレス機(3/8インチのステンレスボルトと英コーンナット付き)、大部分のスチール製什器、大きな木製テーブル、そのほかもろもろを床にボルトで固定した。
壁への固定は、ちょっと厄介だ。薄い合板の内張と鉄の支持材にタップビスで留めるしかない。これでは重いものは無理だ。下手をすれば大きく揺れたときに骨組みが曲がる恐れもある。
トレーラーを購入するときにE-Trackのオプションがあれば、ぜひ取り付けておくことをお勧めする。トラックの荷物を固定する金具として、広く使われているものだ。業務用の大型トラックやコンテナの場合は、ボディに什器などを、直接、溶接できるのだが、私のトレーラーのようなライトウエイトの車両ではそうはいかないので、固定用金具を取り付けておくと便利だ。実例を下に示そう。
写真では、E-Trackを使った例を4つ紹介している。写真左側に見える小さなリングは、移動中に短い固定ベルトを引っ掛けるところだ。ここから低位置の引き出し戸棚の前面に斜めにベルトを渡して床のアイボルトに反対側の端を固定する。ホンダの発電機(使うときは外の連結器の上に載せる)は、発泡スチロールのクッションを挟んで壁に押しつけ、ベルトを本体に巻き付け、ハンドルに通してしっかり固定する。背の高いツールキャビネットも、ラチエット付きのベルトを使って同じように固定する。さらに念のため、写真の右側にわずかに写っている、床にボルト留めした2.4メートルの作業台にもベルトを巻き付けて、床のアイボルトに固定している。簡単な方法がいちばんだ。それを何重にも使うことが、安い保険となる。
ボッシュのテーブルソーも、ベルトで固定して、ふらふら動かないようにしている。
この塊には、テーブルソーのほかに、小さな脚立とショックコードで束ねた車輪付きスタンドも入っている。タオルがだらしなく掛けられているが、あれは壁のボルトヘッドでテーブルソーの作業面に傷がつかないようにするためのものだ(これは苦い体験から学んだこと)。
ところで、テーブルソーの上には、隣のドリルプレスを使うときに便利なように、折りたたみ式の台を備え付けてある。テーブルソーを外に持ち出したときでも台として使えるように、スチールのワイヤーが付いている。
そこかしこに細かい工夫は必要なものの、什器や大きな工具などの固定は、比較的単純な思考で対応できる。だが、引き出しや容器や扉となると、ちょっと複雑だ。
当然のことながら、すでにある固定された什器(スチールデスク、ファイルキャビネット、背の高いツールボックス)はできるかぎり利用する。木製の机の引き出しは、2本のネジ付きフックとピン1本で簡単に固定できる。しかし、部品を管理する3つの「大物」には、特別なアイデアが必要になる。
大きな部品や工具などは、32個のプラスティックケースに分けて収めてある。それを、2.4メートルの鉄製作業台の上に自作した木の棚に並べている。こいつらが急な面舵でも飛び出さないようにするために、底面にネジを突き出させた8本の角材を、棚の下部に開けた穴に通して、上はネジ付きフックを使った留め金で固定するようにした。シンプルだが頑丈だ。
デスクの上には、小さいが嵩張る部品を入れるためのスチール製キャビネットが2つあり、合計で63個の引き出しがある(下部はE-Trackのストラップで、上部は棚用のL字金具で固定している)。これが厄介だ。ヒモと滑車とカムクリートを使う方法を考えたが、材料を集めて穴を開けて、とやっていくうちに、デスクを改造しなければならないことに気づいた。基本的に面倒臭いことが嫌いな私は、見栄えは悪いが、もっと簡単にできる方法に切り替えた。
引き出しを抑えている板材はベルトで締め付けているが、持ち場からずれて役立たずにならないように、上部をスプリングクランプできつく固定している。写真には本棚も写っているが、この本棚は、左のほうにブラケットの位置まで、あと数十センチほど続いている。本棚を支える頑丈な2つのブラケットは壁板に固定されていて、ベニアの化粧板を貼り付けたフォームコアで挟んで、ブックエンドとしても使えるようにしてある。急な取り舵でも落ちないように、本はすべてショックコードで固定されている。
だが、もっとも困難を極めたのは、細かい部品を収めた755個の小引き出しだ。引き出しのキャビネット事態は壁にネジ留めされ、上下はきっちりとはめ込まれている。こいつらが飛び出したら、数千数万の細かいパーツが散乱して悪夢になるだろう。
これを解決するために(そしてアイデア出しにも便利なように)、私は236×81センチの枠付きホワイトボードを作った。これに23センチの張り出しを追加すれば、スピーカーの上の小引き出しを含めた全体をカバーできる。これは、船舶品質のスライドボルトでロックされる仕組みになっている(閉じるとキャビネットの台に掛け金が当たり、心地よい音をたててロックする)。部品を取り出したいときは、ホワイトボードを上に開いて天井の金具に引っ掛ける。これによってできた隙間は、Metcalハンダステーションにぴったりの場所となった。下の写真は閉じたところと開いたところだ。
(ホワイトボードを開けていると、訪れた人はみな「おお」と感嘆の声をあげる)
ホワイトボードは、メラニン加工の「タイルボード」とか「シャワーボード」と呼ばれるもので、ホームセンターで120×240センチのものが10ドル程度で売られている。厚さは3ミリなので簡単に切断できる。だが、切断面は弱いので、縁枠を付けたほうがいい。普通のホワイトボード用のマーカーが使えるが、書いたまま消さずに長く放置してくと色が定着してしまうことがあるの注意が必要だ。セラミックスチール社製の本物のホワイトボードは、磁石もくっつくし耐久性も高く魅力的だが、重量と価格が問題だ。
ホワイトボードの蝶番を取り付ける面は、しっかりと安定していなければならない。私は、キャビネットの上に壁から取り付け用板を張り出させ、そこに固定した。こうすることで、4つの蝶番のピンをすべて一直線上に揃えることができ、ホワイトボードの静的加重と、移動時の動的加重に耐えられるようになる。また、こうすることでキャビネットをよりしっかりと固定できる。もうどこへも動けないぞ!
まだ衝撃吸収について話していなかったが、移動システムではとても重要な問題だ。とくに、長いモーメントアームの上の物には気をつけなければいけない。私の場合、デコボコ道でもっともダメージを食らいやすいのはドリルプレスだ。L字型の2本の支柱を壁に取り付け、位置を簡単に微調整できるようにマシンの裏側にスロットを入れた。その窪み部分を使って、ぶらぶらする部分(ケーブル、コンデンサ-、トランス)をホットグルーやシリコンで固めてやった。
さらに私は調子に乗ってIcom 706mkIIg無線機のベースユニットにも緩衝対策を施した。もともとこれはモバイル用の機器なので、その必要はないのだ。しかし、すでに衝撃吸収対策を施したピッタリサイズの台を作ってしまった。これは、初期バージョンのBEHEMOTH自転車で、デリケートなcirca-1990ハードディスクを持ち運ぶために作ったものだ。無線機は現在、アンテナと電源の近くの、豪華なLord社製の積層ゴムマウントを装備した棚の上に鎮座している(制御パネルは作業台にある)。
以上が、これからモバイルラボを作ろうという方のための固定テクニックのあれこれだ。これで完璧というわけではない。私自身も、まだ完全ではない。椅子やボルト留めできない工具など、何かしらの保護が必要なものは、今でもヒモで縛ったりしている。その作業工程は、ドアの脇の掲示板にピン留めしてある飛行前チェックリストにまとめて書いてある。
大工仕事はこれくらいでいいだろう。次は電源システムに取りかかる。これも、トレーラー本体の作業と同じぐらい重要なものだ。
これまでの記事:
– Steven Roberts
訳者から:E-Truck は、パネルトラックの荷室に付いてる「ラッシングレール」のこと。
[原文]