2010.06.09
モバイルラボ・プロジェクト Part. 2 – ベース車両
前回の記事では、10年以上も使ってきた大きくて効率の悪い工房を「蒸留」して作った私のモバイル工房、Polaris を紹介した。この新システムによって、私は完全な機能を備えた工房をマリーナへ引っ張っていき、そこで、高度な加工や組み立て作業が必要なギーク・セイルボートのプロジェクトに専念できるようになった。また、アマチュア無線のField Dayを追いかけることができるし、うまくすれば来年のMaker Faire Bay Areaに参加もできる。
移動可能な工房には非常に多くの利用法がある。このことについて私は今、本を執筆中だ。このMakeでもゲスト著者として連載記事を書かせてもらっている。
では、モバイル工房の作り方を解説しよう。路上の放浪生活において、通常の建物では地震の一瞬だけ気をつけておけばよい振動や横加速度が重大な問題になる。安物の家具は壊れてしまうし、部品は床に散らばる。
最初の決断は、バン、RV、トレーラー、コンテナ、バス、トラックなど、ベースとなる車両の選択だ。ここは、頑丈さ、改造のしやすさ、価格の駆け引きとなる。たとえば私の場合、ほとんどのRVは作りに不満を覚えたが、多く流通しているのでコストパフォーマンスはよい。このところの不景気のお陰で、手頃な価格で入手できるようにもなっている。問題は、内部の構造が乗り心地重視になっている点だ。そのため、小さな荷物スペースに工房を押し込むか、内装を大幅に改造して設備を詰め込むことになるが、いずれにせよピンと来ない。
対称的なのが輸送用コンテナだ。非常に頑丈で、防犯性も機密性も高い。アメリカの港街に行けば、不均衡貿易の調整のために積み上げられている。探し回れば40フィートのものが1000から2000ドル程度で買える。ただし機動性は低い。大型トラックを持っていればすぐにでも運べるようになっているが、簡単じゃない。利点は、世界中どこへでも、そのままの形で輸送できることだ。コンテナのサイズは標準化されているので、これを組み合わせれば、通常の建設費用の数分の一で工房を建てることも可能だ。移動はあまり考えず、安い工房を持ちたいというのなら、コンテナは賢い選択だろう。
しかし、私はもっと身軽でいたい(でもRVより広いほうがいい)。そこで私は多用途トレーラーを選択した。いろいろなメーカーが、さまざまな価格帯のさまざまな種類のトレーラーを作っている。私のトレーラーはWells-Cargoの全長7.2メートルのタイプだ。このメーカーのものを買うのは3台目だが、これしか手に入らないわけじゃない。
このクラスのトレーラーは基本的に大きな動く箱といった感じで、合板の床と板張りの壁という構造になっている。骨組みは軽量金属で、屋根も軽くできている。サイズは、長さが2.4 ~ 14.4メートル、幅が1.8~2.4メートルといろいろだ。改造も簡単で、便利なオプションもたくさん揃っている。断熱材、窓、E-Truck、ロープ用金具、電源、照明、折りたたみ式階段、ランプドア、屋根用通気装置、エアコンなどなど。私のトレーラーは普通の市販品でごく基本的な内容だ。だから、最初に内張を剥がして、壁と天井に断熱材を入れた。これは楽しい作業ではなかった。
構造は単純だ。外壁は鉄板で、ハット型ジョイナーが外壁と内張用合板の支柱になっている。隙間はとても狭いので、R-13(10センチ厚)の断熱材を剥がして、この厚さにしなければならなかった。断熱材がない場合に比べればずっといいが、快適とは言い難い。
屋根はまた違った構造になっている。固いR-Techのフォームを張り、天井の内張をして、木の梁でそれらを固定した。こうしたトレーラーの構造によって、燃費も大きく違ってくる。もし、特注できるのであれば、以上の作業は業者に依頼すべきだ。私はこの断熱材処理だけで数週間かかってしまった。
天井と壁の境目は、面白い作りになった。屋根が丸く、アルミの支持材もカーブしていて、これに私のいい加減さが加わって出来上がったのが、10枚ほどの扉だ。蝶番で開閉するようになっていて、中に断熱材を入れた。1.2メートルおきに隙間があるので、ここにケーブルを通すこともできる。
トレーラーの壁に断熱材を入れて内張を終えたが、家具を固定する前に、まだ大きな仕事が残っている。電源管理やセキュリティーや無線通信やネットワーク用ツールなどの「システム」をまとめて置く場所が必要だ。それに最適な場所が船首にある。Wells-Cargoが「ノーズコーン」と呼んでいる出っ張りの中だ。いちばん上の写真でわかるだろう。
なぜか、これは四角い基本形のトレーラーに後付けされている。無数のネジは抜かれているが、ノーズコーンの裏側の鉄板はそのままだ(ブンブンガタガタする不快なノイズはそのせいだった)。金属ハサミなどの破壊用具を駆使した難工事の末、ようやく合板の内張の向う側に理想的な空間を得ることができ、絶好の位置に扉を付けて、配電盤などの制御装置を取り付けることができた。
ラッチはSouthco製のマルチポイントユニットだ。上下に受け金具があり、ツマミをちょっと捻るだけで開閉ができる。グラスファイバー製のノーズコーンの内側に断熱材を張り、底の近くに30アンペアの船舶用電源の外部配線コネクターを配置した(発電機を置くトレーラーの連結器のすぐ上)。この4回の連載のいずれかで、ここに制御盤や配線をどうやって詰め込んだかを解説しよう。
本体工事の最後に残った問題は厄介だった。横と後部のドアを閉めると、内部が真っ暗になってしまうのだ。私はオプションの窓は付けなかった(すべての壁面が棚で埋まる予定だったからだ)。唯一の通気口は、2つの小さなカビ防止用ベンチレーターのみ。しかし、ときどき外を見たくなるだろうし、ドアを叩く人がいれば、それが誰なのかを確かめてから錠を開けたい。
私は船乗り精神に従い、eBayで生産終了になったBecksonの開閉式舷窓(排水性と防水性に優れたヨット用の小さな窓)を購入した。私は身長が190センチあるので、目の高さに取り付けたいと思った。そのため、ドアの内部で、上の蝶番を支えるフレームに繋がる梁を切らなければならなかった。
ドアの強度を保つちつつ、潮風を室内に入れなければならない。そこで、船舶用合板を使って窓の周囲に補強板を当てることにした。
窓の周囲をシリコンの充填剤で防水し、面を揃えた。きれいにできた。あとは小さなカーテンを付ければ、外から覗かれることもないだろう。窓は魅力的で便利なものだ。とは言え、中から、またはインターネットで全周囲を見渡せるビデオカメラの代わりにはならない。まあ、ぼちぼちやっていこう。
次回は、家具の選択と、固定方法、そして、デコボコ道を走っても900個近い引き出しが飛び出して中身が散乱しないためのコツをお教えしよう。
こちらもどうぞ:
モバイルラボ・プロジェクト Part. 1
– Steven Roberts
[原文]