Fabrication

2011.12.28

Zero to Maker:3Dスキャンの冒険

Text by kanai


ちょっとヤル気のなかったMaker、 David LangがMakerカルチャーに身を沈め、我らの仲間、TechShopの寛大なるご協力のもと、できる限りのDIYスキルを習得していく様子をレポートします。彼は、何を学んだか、誰に会ったか、どんなハードルをクリアしたか(またはしなかったか)など、奮闘努力のレポートを連載します。- Gareth
「で、これは何なの?」「これは何をするもの?」と私はAutodeskのMaker支援担当者、 Jesse Harringtonに質問を浴びせかけた。彼は、TechShopに出向して、Makerたちに対してAutodesk関連製品のあらゆるサポートを行っている。
「マジメな話」と、TechShopの イベントおよびマーケティングコーディネーターの Andrew Taylorが口を挟む。「『Source Code』の中に入ったみたいな雰囲気だよ。あの映画、見たか?」
「そうだよ! まさにアレだね」と私が答える間、Andrewがイスに座り、適切と思われる位置に体を動かした。

この部屋に入ってまず目に入ったのは、背後から照明が当てられたテントのフレームに並んで中央を向いている、およそ20台の一眼デジカメだ。Andrewが画面の指示に従って難なくポジションを整える間、Jesseは、これが Photofly プロジェクトであることを話してくれた。デジタル写真を使って3Dモデルを作るAutodeskの新技術なのだそうだ。
そして、パシャッ! Andrewも私もびっくりして飛び上がった。すべてのカメラが同時にシャッターを切ったのだ。それでおしまい。一瞬の、痛くもなんともない出来事だった。次は私の番だ。私はイスに座り、カメラが一斉にシャッターを切るまでじっとしていた。結果を見に行ったが、その場でモデルができるわけではないことを知り、ちょっとガッカリした。我々の興味は、すぐさま未来的なAutodeskショールームにあった別の展示物に移っていった。数時間後、電子メールを受け取るまで、あの写真のことはほとんど私の意識から消えていたのだが、その夜、それを見たときにぶっ飛んだ。私の頭の3Dモデルが私のiPhoneの画面でぐるぐる回っている。

Photoflyの話は前にも聞いたことがあった。実際、Autodeskショールームを訪ねたお目当ては、それを見学することだったのだ。数日前、TechShopで、Jesseと雑談をしていたのだが、最近どんな講座を受講したかと彼に聞かれたとき、私は前の晩に受けた Next Engine 3Dスキャン講座のことを熱く語ってやった。その講座の受講者は私のほかに、もうひとりしかいなかった。私たちはスキャナの準備方法、操作方法、そしてソフトウェアで画像データを処理する方法を教わった。生徒は2人だけだったので、終わりに近い時間に、私たちは3Dスキャンを何に使いたいかを話し合った。私は、もちろん技術習得の使命があってのことだが、もうひとりは面白いことを考えていた。彼は海の貝殻をスキャンしたいと話してくれた。独特な貝殻の形状は、Next Engineの仕様事例にもってこいだ。私たちは、貝殻の形状や複雑さについて、その画像の合成方法や、貝の裏表をスキャンする方法などを話し合った。かなりチャレンジングなプロジェクトだ。しかし同時に、ひとつの技術の特別な能力と限界について知る上でも、いいディスカッションだった。私はこれまで、デジタルでデザインしたものから実体を作るCNC工作マシンに多くの時間を使ってきた。実体を取り込んでデジタルデータに変換するスキャナ技術のほうには、ほとんど目を向けていなかった。CADプログラムとも柔軟に組み合わせて使うことができる。もちろん、そんな話はJesseには釈迦に説法だが、彼は私の過熱ぶりを見て、Photoflyのことを教えてくれた。そして、Autodeskツアーを提案してくれたのだ。
この一連の出来事(講座、見学ツアー、話し合い)が私に残してくれたものは、この技術に対する驚きだ。しかし、これが社会にどれだけのインパクトを与えるかとなると、よくわからなかった。面白いけど実用性がない、お楽しみの技術といった感じだった。ところが、MakerBotのある小さな記事を読んで、何かがひとつにつながった。それは、Project Shellter: Can MakerBot’s Save the Hermit Crab Community(MakerBotはヤドカリの生息域を守れるか)という記事だった。MakerBotの招聘アーティスト、Miles Lightwoodが、彼の仲間といっしょにヤドカリが宿る貝殻の不足問題を解決するためのクラウドソースを立ち上げたという内容だ。
すごい。ほんの数時間のTechShopの講座を受けた私のクラスメイトが、その技術をヤドカリの宿作りに活かせるかもしれない。なんて素晴らしいことだろう。私のZero to Makerの旅は、こうした可能性に、何度も繰り返し気づかせてくれる。
過去の記事:Zero to Makerの旅
– David Lang
訳者から:映画「Source Code」の邦題は『ミッション・8ミニッツ』です。
原文