2013.08.26
エネルギーのリサイクル:電池無用の無線通信、Ambient Backscatter
Ambient Backscatterを使うと、ユーザーとのインターアクション、本体同士の通信がバッテリーなしで行える。空中の電波を反射させたり吸収したりして、情報を交換するのだ。
すべてのものをスマートにしてネットワーク化するという「モノのインターネット(Internet of Things)」の普及の妨げになっているもののひとつに、バッテリー技術がある。コンピューティングパワーや、最近では記憶容量も加速度的に高くなっている。しかし、バッテリー技術はそれに追いつけずにいる。
ノートパソコンをこじ開けると、数年前のものに比べてバッテリーが占める割合が多くなっていることがわかる。中の電子部品のサイズは小型化され、コンピューター本体も小さくなっているものの、全体の仕事が増えている(WiFi/4G接続、高解像度画面、大画面ビデオ再生、使用時間の延長)。それに必要な電力は、減るどころか増大している。
電気使用量を抑える省電力 Bluetoothという技術が登場した。埋め込み型デバイス用に開発されたBluetooth LEは、その名のとおり、ボタン電池ひとつで数週間から数カ月使える。その主な電力の使い道は、無線通信だ。
ノートパソコンなら問題ないかもしれないが、それがモノのインターネットとなると、さらにその先に待っているスマートダストへの進化を考えれば問題だ。コンピューターが本当の意味で環境的存在になろうというときに、いちばんの障壁となるのは、電源を供給する方法だ。
太陽電池や振動を活用した受動的な発電技術などは、すでに小型化が成功しており、省電力化に関する技術は大変に注目されている。
ワシントン大学のチームは、そうした興味を確実に惹きつけるものを作り出した。テレビや携帯電話の電波、つまり常に空中に存在する環境高周波信号エネルギーを通信媒体として、また電源として利用しようというものだ。
リーダーデバイスから電源が供給されるNFCとは違い、リーダーもトランスミッターも電源を持たない。どちらのデバイスもバッテリーを搭載せず、データレートは非常に低いものの、NFCよりもずっと遠いところとの通信ができる。数フィート離れても確実につながる。これは驚きだ。
うまく開発を進めれば、この技術は物のインターネットにおいて、数々の新しい活用法を開拓することになるだろう。壁や建造物の中のように、後からメンテナンスができない場所に恒久的に埋め込まれるデバイスや、日用品などが考えられる。
Ambient Backscatterを使って無線通信を行う日用品。
カギをなくしたとき、ソファーがAmbient Backscatterを使ってカギと交信し、それをユーザーに伝えます。この技術は、スマートホーム、スマートシティ、そしてモノのインターネットを実現させるものです。
この新テクノロジーの登場で、今広く普及しているNFCは短命に終わるかもしれない。
(The University of Washingtonより)
オリジナルの論文: Ambient Backscatter: Wireless Communication Out of Thin AirLiu, Parks, Talla, Gollakota, Wetherall & Smith, 2013, Proceedings of the ACM SIGCOMM Conference
– Alasdair Allan
[原文]