Electronics

2013.12.06

女の子たちにハックとメイクを

Text by kanai

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私が初めて工学とテクノロジーに興味を持ったのは、今から30年前、小学校5年生のときだった。私のクラスには4台のApple IIeがあり、先生がLogoとBASICのプログラミングを教えてくれた。それが、テクノロジーを使って何かを作るという初めての体験であり、とても楽しかった。6年生になっても、先生は私にプログラミングを教えてくれた。そして私たちを、地元の大学で開かれた、子供のための、今で言うところのハッカソンに連れていってくれた。中学に進学した私は、すでに慣れ親しんでいたコンピュータープログラミングのコースを選んだ。料理はとりたくなかった。そうした経験が、私をテクノロジーの道に進ませた。高校を卒業するとMITに入り、電気工学を学んだ。

悲しいことに、そんな私の話は、ロサンゼルスの北東サンフェルナンドバレーの非常に貧しくラテン系住民が大半を占める地域の女の子たちにとっては特別なものだ。しかし、一般に、経済的に恵まれない地域とされている私の街だが、ものを作ることにかけては進んでいる。PacomiaはMakerの街なのだ。私は、スクラップから自分たちの家具を作り、子どものオモチャを作り、キンセアネーラ(15歳のお祝い)のドレスを作り、家電品をハックしたり直したりする男の人や女の人を見て育ってきた。

ハードウェアエンジニアとして働いたあと、ハーバードの大学院に入った私は、10年間、科学と工学の教育に関して研究をしてきた。そして去年、自分の街に戻って、女の子たちのための教育プログラムを開始することにした。この街のメイキングと、先端テクノロジーを使ったメイキングの結びつきを、女の子たちにハッキリと教えたかったのだ。そのために私は、私の母校の5年生の女の子を対象にした放課後の課外プログラム、DIY Girlsを立ち上げた。学校は私に教室をひとつ貸してくれた。そこは、私専用の5年生の教室となった。ボランティアや友だちや先生たちの協力を得て、私はその教室をメイカースペースに改造した。そこに参加メンバーを募集し、準備完了。

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DIY Girlsプログラムは、小さな女の子たちがテクノロジーに興味を持ち、自分の技術的能力に自信を持てるような体験で構成されている。彼女たちが青年期に入り、職業を意識し始めるときに役立つよう考えている。私たちは、学校期間中、30人の女の子たちに、週2回、2時間ずつの授業をしている。手を動かして何かを作る活動をとおして、生徒たちは、自分だけのオモチャや、ウェアラブル機器や、ビデオゲームを作っている。彼女たちは、ハンダ付け、コンピュータープログラミング、基本的な電子工作、電動工具の使用といったスキルを学んでいる。そしてそのスキルを、独自のプロジェクトや発明に、クリエイティブに活用している。

私たちは、次の3つにフォーカスを置いている。

  • クリエイティブなエレクトロニクス。彼女たちは、eテキスタイルや導電性ペイントといったクリエイティブな素材を使ってエレクトロニクスを学んでいる。基本的な電子工作を通じて創造性を磨くことが目標だ。ハンダ付けや、被覆線のむき方や、ブレッドボードでの電子回路の組み方や、マルチメーターの使い方も学んでいる。
  • 作ることといじること。私たちは、ものを作るのに必要な工具の使い方を教えている。ものを分解することで、安全で正しい工具の使い方を覚えている。このセッションでは、自信を身につけさせることが目標だ。
  • プロダクトデザイン。彼女たちは1年間に学んだスキルを組み合わせて、自分だけの製品を作る。3Dプリンター、MakeyMakeyボードなども活用する。それを、家族や地域の人たちに披露する発表会も行う。

DIY Girlsは、学ぶ環境を作ることに成功した。生徒たちは、危険を冒し、自信を高め、テクノロジーに魅力を感じさせるプロジェクトに取り組むことができる。彼女たちは、プログラムがうまく動かなかったり、プロジェクトが思い通りにいかないでイライラするようなことがあっても、次にこの教室に来れば、きっと解決策が見つけられると考えるようになった。本物のスキルを身につけていることに、彼女たちは喜びを感じている。先生たちも、彼女たちがどんどん自信を付けていることを感じると話していた。

彼女たちの多くが、中学に進んでもプロジェクトを続けていきたいと考えていると知ったとき、私たちはとても喜んだ。残念なことに、彼女たちの中学の技術科の授業では、窓の開け方と締め方、タイプの打ち方なんてことしか教えていない。これではすべて台無しだ。そこで、私たちは、5年生以上の女の子たちにもプログラムを広げたいと考えている。彼女たちに、ArduinoやLilypad Arduinoを使ったもっと高度なスキルやプログラミングを教えてやりたい。

生徒たちに、このプログラムを延長して受けさせるというビジョンと並行して、別の学校でもプログラムを開始することを私は考えている。このプログラムの話は街中に口コミで伝わっていて、他の学校からも、ぜひやってほしいという話も来ている。こうした地域の興味と要求を受けて、私たちは、もっと多くの女の子たちをプログラムに参加させるための資金集めをIndiegogo キャンペーンで行うことにした。どうか、私たちを支援していただきたい。そして、生徒たちに相応しい新しいプロジェクトのアイデアなども教えてほしい。

– Luz Rivas

英語版編集者注:LuzはわざわざWorld Maker Faire New York 2013まで来て話をしてくれた。彼女の情熱は伝染する。Luzの奮闘に拍手!

原文