Electronics

2014.06.13

無線のウェブサーバとしても使えるSDカード「FlashAir」

Text by guest

(7月7日追記:FlashAirを使った作例紹介記事「スマホの写真をブラウザ経由で無線転送して表示する、ライトイルミネーションオブジェを「FlashAir」で作る」もぜひどうぞ)

「FlashAir」は無線のウェブサーバが動いているSDカード

スマートフォンのカメラは高性能化が著しいが、ズームやマクロを用いた撮影や夜間の撮影なら、まだまだデジカメだ、という人も多いのではないだろうか。その場でSNSでシェアしたいという向きには無線LAN内蔵のデジカメが便利である。一方、無線LANを持たないデジカメで撮影した写真を手軽に取り出す方法として、無線LAN機能を追加したSDカードが各社から販売され、注目されている。

本記事で紹介する東芝の「FlashAir」も、デジカメで撮影した写真を無線LANでスマートフォンやパソコンへ転送できるSDカードである。基本的な使い方は、パソコンやスマートフォンの無線LANでFlashAirに接続し、ブラウザで「http://flashair/」へアクセスするか専用アプリを用いてデータの一覧を取得、コピーしたいデータを選んで保存するというもの。

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写真:東芝の「FlashAir」。現在は8GBモデルから32GBモデルまで発売されている

FlashAirの特徴は内部でウェブサーバが動作していることだ。ブラウザで「http://flashair/」へアクセスするという操作方法がそのことを物語っている。このページから各種の設定変更も可能である。

FlashAirから無線LANで取り出せるデータは画像だけではない。動画や文書、音声データなども「http://flashair/」から取得できる。さらに、ブラウザに表示されるHTMLファイルの内容はユーザーが自由にカスタマイズできる。FlashAirは汎用のウェブサーバを内蔵したSDカードなのである。

本記事では、FlashAirの汎用性を活かしてArduinoやRaspberry Piと組み合わせ、データを無線で取り出せるようにした事例を2つ紹介する。

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スマートフォンのブラウザで「http://flashair/」へアクセス。写真に限らず各種のデータを閲覧できる

Arduinoのセンサーデータを無線でモニタリング

プロトタイピングのためのツールキットとしておなじみのArduinoにはさまざまなセンサーを取り付けることができる。センサーで取得したデータを蓄積、閲覧するにはどんな方法があるだろうか。Arduinoとパソコンをつなぎっぱなしにできるならばなんの問題もない。Arduinoをパソコンに直接接続したり、Arduinoに無線LANのシールド(拡張ボード)を追加したりして通信できるようにし、センサーの変化をパソコン側で記録すればよい。

センサーは長時間稼働させたいがモニタリングするパソコンの電源を入れたままにはできないという状況ならば、ArduinoにSDカードのシールドを追加し、SDカードへデータを記録していく方法もある。ただしこの場合、データを取り出すためにSDカードを外している間の記録は途切れることになる。

そこでFlashAirの登場である。SDカードシールドを追加したArduinoにFlashAirを挿入すれば、データの蓄積と配信の役割を一手に引き受けてくれる。

フィックスターズの土居さんが製作したのは、Arduinoで取得したセンサーのデータを無線でモニタリングするシステムである。

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写真:スイッチの状態をテキストデータでFlashAir内に蓄積しておき、その内容をウェブサーバとして外部に公開する

Arduinoに接続した押しボタンのスイッチの状態を、テキストファイルとしてFlashAir内に記録していく。FlashAirのウェブサーバにアクセスがあるとカスタマイズされたHTMLファイルを送出し、テキストファイルの内容がグラフに描画されるというものだ。データ処理とグラフ表示にはJavaScriptライブラリの「jQuery」と「ccchart」を利用しており、グラフは1秒ごとにリアルタイムで更新される。

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画像:ブラウザで「http://flashair/」を表示したところ。センサーのデータがグラフで表示される

この作例の詳細は後述するFlashAir Developersサイトの「FlashAirを使ったセンサーデータの無線モニタリング」にまとめられている。

Raspberry Piでライブカメラ

植物の成長の様子や工事現場の変化などを記録するなど、カメラで一定時間ごとにシャッターを切り、定点観測を行う需要はさまざまである。

MyDNS.jpの蕪木岳志さんは定点観測用のライブカメラをいくつも作ってきた。現在は自宅からの風景をリアルタイムに配信する「自宅ライブカメラ+GVCデモンストレーション」を公開している。そんな蕪木さんが新たに製作したのは、Raspberry Piにカメラモジュール「PiCam」とFlashAirを接続したライブカメラである。FlashAirは、撮影した画像の保存と閲覧に利用している。画像をインターネットから閲覧できるよう、ダイナミックDNSを用いているのがポイントだ。この装置がインターネットへ接続する際のグローバルIPアドレスが変化しても、インターネットからは同じURLで画像を閲覧できる。

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写真:Raspberry PiとFlashAirでライブカメラを手軽に実現

Raspberry Piとカメラモジュール、FlashAir、そしてインターネットへ接続している無線LANアクセスポイントの組み合わせで、パソコンを設置できないような場所にも簡単にライブカメラを構築できる。

「FlashAirがあるおかげで、Raspberry Pi内のデータを閲覧するだけのためにディスプレイやキーボードをつなぐ必要がありません」というのが蕪木さんの所感である。FlashAirは単体でウェブサーバとして動作しているため、Raspberry Pi上でウェブサーバを動作させる必要がないのも利点のひとつだ。

この定点観測カメラのもとになったのは、ダイナミックDNSサービスへこちらのグローバルIPアドレスを定期的に通知する「IPアドレス通知装置」である。IPアドレス通知装置については「Raspberry PiとPidoraを使ったIPアドレス通知装置用システムディスク」に詳しい情報があるのでそちらを参照してもらいたい。

システムをFlashAirで手軽に無線化

2つの事例からわかるのは、FlashAirがSDカードでありながら、無線LANとウェブサーバの機能も持っていることによって生まれる利便性と可能性だ。

活用のための技術情報が充実していることも、FlashAirの特徴である。FlashAirの開発者向けサイト「FlashAir Developers」には、FlashAirを外部から利用するための各種APIや、FlashAirを用いたアプリケーションを主要OS向けに開発するのに役立つ情報などが集められている。APIが公開されているため外部アプリケーションから利用しやすい上、FlashAirのAPIを用いたソフトウェアの開発や公開、販売にライセンス料は必要ない。

FlashAirをデジカメ写真の取り出しにしか使わないのはもったいない。無線のウェブサーバになるストレージとして、活用のアイデアを練ってみてはいかがだろうか。


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