Electronics

2014.07.07

スマホの写真をブラウザ経由で無線転送して表示する、ライトイルミネーションオブジェを「FlashAir」で作る

Text by guest

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コンピュータのウェブブラウザからアップロードした写真が表示されている様子、写真に写っているビワのオレンジ色に作品が光っている


「ライトイルミネーション」オブジェの動作の様子と内部構造を動画にした。コンピュータのウェブブラウザ上の写真が作品で表示されていることがわかる。

無線技術をもっと気軽に使ってみよう

東芝の「FlashAir」は、無線LAN機能とマイコンを内蔵したSDカード。デジカメで撮影した写真をパソコンやスマートフォンへ無線で転送するのに便利なカードで、内部ではウェブサーバが動作している。

“手軽にWi-Fi経由でデータ転送可”ということは「電子工作のプロジェクトにもかなり使えそう」── ということで、このところ注目度が上昇しているのが、FlashAirだ。

ArduinoやRaspberry Piなどのマイコンと組み合わせ、センシングデータや定点観測画像を蓄積、公開している事例は、当ブログで紹介した。さらに今回、メカエンジニアの岩崎修さんがチャレンジしたのが、今回の「ライトイルミネーション」オブジェ。いくつものアイデアと応用の可能性がつまったこの作品を、今回は紹介する。

岩崎さんが作品製作にあたって考えたのは、次のようなことだ。

  • FlashAirの「イイとこ」を最大限活用
  • 楽しんで作って、みんなで使って、インテリアとして飾れるものにしたい
  • ちょっとだけ自分に“木工”修行も課す

どこをどう詰めていったのか、くわしく見ていこう。

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製作者の岩崎修さん

FlashAirにスマートフォンやコンピュータから写真をアップロード!

FlashAirはウェブサーバを内蔵しているため、無線LAN親機(アクセスポイント)として動作するFlashAirには、無線LAN子機(ステーション)として動作するスマートフォンやPCからHTTP経由で接続することができる。

「通常はデジカメに入れて使うことを想定しているけれど、その逆もできるんですよね。つまり、SSIDをFlashAirにすると、ウェブブラウザ経由でスマートフォンやPCから写真をアップロードできるようになるんです。ウェブページそのものも、HTMLのファイルを書き換えることができるなど、カスタマイズの幅が広いですよ」

具体的には、例えば手元のiPhoneの設定で、Wi-Fi接続をFlashAirにする。つながったらウェブブラウザを起動して「http://flashair/」(このURLは任意に変更可能)へアクセス。そうすると、iPhoneに保存してある写真をアップロードできるというわけだ。

もうひとつのFlashAirの大きな利点は、ファイル単位で読み書きできるから、無線を使った工作でハードルの高い通信プロトコルの問題を気にしなくてもよいこと。

「ふつうWi-Fiでなにかをやろうとすると、ホストになるマイコンとスマートフォンの間のやり取りに使うアプリを書いたりする必要がありますけれど、FlashAirではファイルのやり取りに限定してしまえばその必要がありません」

そこで岩崎さんは、複数の人のスマートフォン内の写真を素材にした、光るオブジェの製作を考えていくことにした。

なぜ写真、しかも複数の人の写真を使うかには、理由がある。

岩崎さんの最近の作品に、デザイナーの柏原エリナさんとの共作による「LightDress」がある。こうしたライトアートの作品では、光らせ方が案外と悩ましいのだそうだ。

「プログラムで作ると、どうしても規則性が出て無機質な感じになってしまうんです。かといって完全にランダムにするとおもしろくない。試行錯誤の結果、LightDressではモデルの指先に小型のビデオカメラを付け、その映像からLEDの色と光るタイミングをつくってみました。と、ほどよくパターン化されなくてライブ感のある光り方をするようになったんです」

なるほど。写真には、撮影した人の個性が出るものだ。複数の人の写真をFlashAirにアップロードしていけばみんなで楽しめるのはもちろん、光り方にバリエーションも出るというわけだ。

細部の調整と仕上げは入念に

ボックスの大きさは、20x20x5cm。内部の板には、フルカラーLEDが64(8×8)個並んでいる。その裏に、マイコン(今回はmbed)と、FlashAirが装着されるSDカードソケット。

ボックスのサイズは、「インテリアとして邪魔にならないくらい」になっている。そこに並べた64個のLEDも、絶妙な数のようだ。

「数を増やしすぎると、画像が鮮明になりすぎて画像そのものにに目がいってしまうんです。鮮明な画を見たいならモニターをはめ込めばいいわけで、オブジェにならなくなってしまいます(笑)」

ほどほどの存在感と、強すぎない表現も、このような作品の場合には大事。もうひとつ絶妙に調整されているのが、ボックスの表面(ふた)の乳半アクリル板とLEDの距離。近すぎると、画像はLEDの点描になってしまい、遠すぎると、画像がぼやけすぎてしまう。ほどよく何を写した写真なのかがわかり、特に撮影した本人が「あ、あの写真だ」とわかる映りぐあいがよいのだ。この距離の調整には、かなり時間をかけたという。

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ボックス内の回路。マイコンとしてmbedを使用している(上)、LED(AdafruitのNeoPixel)は64個使用している(下)

ボックスのフレームの木工細工も、今回、岩崎さんがやってみたかったことだ。木工、特にこのように小さめの細工ものは岩崎さんの苦手分野。だけど、木工作品が好きで今回はインテリアなのだから、「ぜひともやってみたい」と考えたそう。岩崎さんはデータを作成、CNCミリングマシンで合板をくりぬき、重ねて接着、ニスを塗って仕上げた。アクリル板も同様に、CNCミリングマシンで切りぬかれている。

「4mm厚のフチ枠を切り出すなんて、僕の腕では最初から無理に決まっています。だけど、CNCミリングマシンならできます。角Rも、CNCミリングマシンで曲線のパーツを切り出して積み上げていくことでうまくいきましたよ」

というわけで、完成した「ライトイルミネーション」。アップロードした写真がマイコン制御で切り替わっていくのをながめる時間が、心地よく感じられるオブジェとなっている。中心部がきれいなオレンジ色にほんのり光る画像があったから元の写真を確認したところ、ビワが写っていた。そんな意外性もおもしろいインテリア作品なのだった。

FlashAirを使ってみて、岩崎さんは、「今回のように、FlashAir側にデータをアップロードする試みはアイデアが拡がる気がしています。もっと実用的なフォトフレーム的な使い方、デジタルサイネージ的な使い方……いろいろあると思えました」と言う。

写真だけでなくて、イラストやポスターなどのビジュアルデータ、音楽などの音声データへの応用もありそうだ。

製作メモ
ボックス本体は、乳半アクリル板と4mm厚の合板で作成。木工部分はCNCミリングマシンで切りぬいたパーツを重ねてボンド付けしている。制御部のマイコンにはmbedを使用。LEDは配線が少なくなる「NeoPixel」を使い、CNCミリングマシンで制作した基板に設置した。内部もシンプルに仕上げてある。

製作者プロフィール
岩崎 修:恐竜ロボット制作会社勤務を経て、工房/アトリエMechaRoboShop主宰。エンターテインメント施設や博物館などの「動く展示」のエレクトロニクスやメカ制作を手がける。玉川大学芸術学部メディアアーツ学科非常勤講師。http://www.osamuiwasaki.com/

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FlashAir Developersについて
FlashAirの開発者向けサイト「FlashAir Developers」には、FlashAirを外部から利用するための各種APIや、FlashAirを用いたアプリケーションを主要OS向けに開発するのに役立つ情報などが集められています。APIが公開されているため外部アプリケーションから利用しやすい上、FlashAirのAPIを用いたソフトウェアの開発や公開、販売にライセンス料は必要ありません。

「FlashAir Makeアイデアコンテスト」開催中!

現在、「FlashAir Makeアイデアコンテスト」が開催中です。ここまでに紹介したようなFlashAirのさまざまな可能性を活かしたアイデアを企画書にまとめてご応募ください。賞品は、Amazonギフト券10万円分、東芝REGZA Tabletほか多数。締切は8月31日(木)です。応募資格など詳しい情報は、FlashAir Developers – FlashAir Makeアイデアコンテストにてご確認ください。

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