Science

2014.07.04

Making Fun:子ども部屋の宇宙船

Text by kanai

私が長男の部屋にミッションコントロール・デスク(日本語版記事)を作っていたとき、私たちは、それがコントロールする宇宙船も必要だと気がついた。そしてこの4カ月間で、暇を見つけては、次男の部屋に宇宙船を作ってやった。それにはコントロールパネルがあり、さまざまな面白いディスプレイがあり、いろいろな宇宙サウンドが響く。メインエンジンと姿勢制御スラスターを操作するためのジョイスティックを動かすと、光ったり音が鳴ったりする。ペイロードベイにはモーター式のハッチが付いていて、中にはロボットアームがあり、ビデオを見ながら遠隔操作して荷物を動かすことができる。オモチャの人工衛星といった感じだ。ヘッドセットを使うと、兄の部屋のミッションコントロールと通信ができる。それを使って息子たちは、いっしょに宇宙ミッションを遂行している。上のビデオで、この宇宙船の基本的な機能を説明しているが、詳しい作り方を知りたい方は、記事の続きを読んでいただきたい。

spaceshipWide

本体はアポロ宇宙船を思わせる箱形とした。円筒形の上に円錐形が載った形だと、ベッドルームに置くには大きすぎるし、コストもかかるし製作時間もかかりすぎる。宇宙船は3つの分離可能な部分から構成されている。ガレージで作って部屋に運び込めるようにだ(Maker Faireにも)。しかし、そう簡単ではなかった。宇宙船と本棚の間の右側の壁には、我が家の気送管システムの扉がある。これは息子たちの部屋を結んでいる。アポロ時代のNASAのミッションコントロールでは気送管システムが使われていたので、我が家のスペースプログラムでも、重要な部品や装備を緊急に配送しなければならない事態に備えて導入すべきだと考えていたのだ。宇宙船の建造にあたっては、アポロでテーマを縛るつもりはなかった。ロボットアーム付きのペイロードベイなど、スペースシャトルの機能も採り入れている。

メインエンジンのノズルの中に、音響ミキサーとベースアンプを入れた。ノズルの底部にはGE Color Effects LEDクリスマスライトを仕込んだ。前回のプロジェクトで、私は各LEDの色と明るさを調整できるように配線を改造しておいた。それに、ロケットの炎のような単純な色の変化のパターンをプログラムしたArduinoをつないでコントロールしている。このArduinoは、姿勢制御スラスターの赤色LEDもコントロールするようになっている。メインエンジンとスラスターのライトへの命令はUSBジョイスティックで行う。ジョイスティックの値はRaspberry Piに読み込まれる。Raspberry Piは、ジョイスティックの各軸方向と中心からの距離を検知し、それに従って対応するLEDの明るさが変化するようになっている。Raspberry Piは宇宙船のサウンドシステムで効果音を再生する役割も果たす。これも、ジョイスティックの動きの大きさに応じて音量が変化する。つまり、ジョイスティックをちょっとだけ倒すと、ほんのりLEDが光って小さな音が鳴る。さらにスティックを倒すと、LEDは明るくなって音も大きくなるという具合だ。

Spaceship Mounting Shaker

サウンドと言えば、いろいろなアクションをサウンドに依存しているこのプロジェクトでは、音質が重要だと私は考えていた。そのため、メインのコントロールパネルに、飛行士に向かって上等なコンピューター用スピーカーを設置した。飛行士の足下にはサブウーファーを置いた。飛行士が寝る板の裏側にはBass Shakerを取り付けた。Bass Shakerには強力なアンプが内蔵されている。これは、スピーカーのようなものなのだが、コーン紙を振るわせて空気を振動させ耳に音波を伝える代わりに、固い物に取り付けることで、体に直接振動を伝えるのだ。大きな音を立てるわけではないので、耳に負担をかけることなく、強烈なインパクトを感じることができる。上のビデオでは、カメラを宇宙船内に固定した状態でロケットエンジンを噴射したときに、画面が振動する様子がわかると思う。

コントロールパネルで使用している効果音は、freesound.orgとNASAのサウンドアーカイブ 、なかでもApollo 11 Flight Journalから入手した。それらをサウンド編集ソフトでトリミングしたり合成したりしている。

CapCom

私が気に入っている機能は、息子たちの寝室の宇宙船とミッションコントロールデスクをつないでいるインターコムだ。私は、オートバイのライダーたちが運転中に会話するための、ヘルメットの下に装着できる有線のヘッドセットを使った。ミッションコントロールデスクと宇宙船のヘッドセットのジャックは、オートバイ用のインターコムボックスにつながっている。息子たちはこれを使って、ミッションコントロールと宇宙船との間で通信を行い、打ち上げ、ペイロード放出、宇宙船の修理、月面着陸、大気圏突入、回収といったさまざまなミッションを行っている。遊ぶ回数が増すごとに、彼らは新しい宇宙活動用語を覚え、互いのコミュニケーションの取り方もうまくなっているようだ。

CapComパネルにはPTT(Push to Talk)ボタンがある。これを押すと、その上のLEDが光り、通信開始のQuindar Toneが鳴る。ボタンを放すと、LEDが消えて、通信終わりのQuindar Toneが鳴る。

Payload Controls

宇宙船のペイロードベイは、かなり面白いものになっている。ビデオ画面を見ながら、船内のコントロールパネルに取り付けられたコントローラーでロボットアームを操作し、ペイロードを放出したり、回収したりできる。Hubble Space Telescopeに付いてきた宇宙オモチャセットがあったので、これがお気に入りのペイロードとなった。また、宇宙もののレゴのミニフィギュアや人工衛星もある。しかし、私にはもっと手の込んだプランがある。現在、5フィート(1.5メートル)の長さの釣り糸が天井から宇宙船の脇に垂らしてあるのだ。

Spaceship Payload Bay

この角度からだとペイロードベイはかなりごちゃごちゃして見えるが、飛行士がカメラを通して見るベイは、非常にクリーンだ。上の写真ではカメラは左側にあり、横木に照明と並んで取り付けられている。この空間の底にあるウィンチが、ゆっくりと紐を引っ張って、プーリーを介して、蝶番で留められたハッチのレバーを引く。トルクを得るために歯車で減速しているので、ハッチが開くまで1分間ほどかかるのだが、ウィンチのサーボに内蔵されているモーターは指ぬきほどの大きさしかないことを考えれば上出来だ。電子機器にノイズの影響を与えないように、ウィンチの電源は単一電池にした。コントロールパネルと液晶ディスプレイの電源も、ジョイスティック用のRaspberry PiとArduinoといっしょに、この部分に置かれている。コントロールパネルには、専用のRaspberry PiとArduinoが使われている。

Status Panel

このステータスパネルは私の自信作だ。かっこいいディスプレイを安価に再現するために工夫した。

Spaceship Status Assembly

背後のプレートにはリード付きのLEDをたくさん使っているが、ハニカムプラスティック板を手で切って仕切りにしてある。その上に光を拡散させるために、台所のまな板を少し切って被せた。さらに、インクジェットプリンターで透明シートにラベルを印刷して貼り付けた。LEDは、インジケーターや警告灯として使われる。メインとドローグ(減速用)パラシュートなど、システムが使用中に緑色に点灯するものもあるが、たとえば、ブースターパネルのボタンを押しすぎると数々のトラブルを引き起こすので、警告灯が赤く光る。Glycol Pump(グリコールポンプ)のスイッチを6回以上オンにすると、Glycol Temp Low(グリコール温度低下)の警告灯が赤く光る。

Caution and Warning System

C&WSは、Caution and Warning System(注意警告システム)の略だが、実際のアポロ宇宙船にあったものと非常によく似た機能を有している。システムが乗組員に警告を出したいときは、アラーム音が鳴り、Master Alarm(マスターアラーム)ボタンが点灯し、ステータスパネルの対応する警告灯が点灯する。マスターアラームボタンを押すと、アラーム音が止まり、ボタンのライトが消えるが、パネルの警告灯は消えずに残る。LAMP(ランプ)ボタンは警告灯のテスト用だ。これを押すとすべての警告灯が点灯し、電球が切れていないかどうかを確かめることができる。C&WSパネルにはもうひとつ、秘密のスイッチがある。雷に打たれ状態をシミュレートするためのものだ。

Control

Control(コントロール)と書かれたパネルは、宇宙船に搭載されていることになっているメカニカルシステムを操作するためのものだ。ドッキングプローブのスイッチには、格納、オフ、伸張の3つの位置があります。実際のドッキングプローブを作る時間がなかったのですが、将来作る予定でいます。息子たちにデザインや製作を手伝ってもらってね。

SCE Powerというスイッチは、実際にアポロ宇宙船にもあったものを再現した。シグナルコンディショナーを、メインの電源を使うか、外部電源(Aux)を使うかを切り替えるものだ。シグナルコンディショナーは、遠いミッションコントロールと通信する送る際に、信号をきれいに整えるための装置だ。アポロ12号は、打ち上げ直後に雷に打たれたのだが、ロケットの音が大きいので、誰も気がつかなかった。その後、ミッションコントロールには、宇宙船のあらゆる不調を示す信号がめちゃくちゃに飛び込んできた。ミッションコントロールの電気船内環境指令操作卓を担当していたジョン・アーロンは、その原因が落雷であることを突き止め、彼がトレーニング中に習得した解決法を思い出した。そして、宇宙飛行士たちに「SCEをAuxに切り替えろ」と指示した。信号はすぐに正常に戻り、ミッションは無事に継続することができた。我が家の宇宙船にも、落雷を起こさせる秘密のスイッチが仕込まれていて、たくさんの警告が鳴り響くようになっているが、それは、SCEをAuxに切り替えると正常に戻る。

4歳の息子はWaste Dump(廃物放出)が大好きだ。トイレを流す音が鳴るからだ。彼は、尿の回収装置のことを宇宙飛行士たちがMr. Thirstyと呼んでいることを知っている。だから、彼は誰かがそのスイッチを入れるたびに笑って、Mr. Thirstyの話をする。

Cryogenics

酸素と水素のモニターとコントロールを行うためにCryogenics(低温学)パネルも作った。O2とH2は、それぞれのタンクの中で攪拌することで、正確な圧力と量が測れる。アポロ13号で、ミッションコントロールがCryoタンクを攪拌するように乗組員に指示したところ、O2タンクの配線ミスが原因で火花が散り、タンクが爆発してあの緊急事態が発生した。我が家の宇宙船のO2 FANのスイッチも同じ役割を担っている。ファンの音が鳴るというオマケ付きだ。そして爆発音がする(Bass Shakerが威力を発揮する)。そして酸素の圧力と量のメーターが下がって表示が赤くなる。実際のミッションのときと同じように、酸素が失われることで燃料電池も機能しなくなる。ステータスパネルには、Main B Bus Undervoltと表示され、あの恐怖の通信の台詞が流れる。”Houston, we’ve had a problem. We’ve had a Main Bus B Undervolt”(ヒューストン、問題が発生した。メインバスB電圧低下)

EECOM

EECOM(電気船内環境指令操作)パネルには、4つの可変抵抗があり、それぞれ12セグメントのバーグラフLEDに対応している。ツマミを回すと光るセグメントの数が変わる。また、点灯するセグメントの数に応じて、LEDの色も変化する。中央の4つのセグメントの範囲にあれば、すべて緑色となる。それより少し多いか少ないかすると黄色に変わる。少なすぎたり多すぎたりすると赤になる。これは、宇宙飛行士とミッションコントロールとで宇宙シナリオを遊ぶときに、いい役割を果たしてくれる。宇宙飛行士にレベルを尋ね、「もっとパワーを上げろ」とか「もっとエネルギーを節約しろ」とか指示を出すといった具合だ。

Abort

ABORT(停止)パネルは、楽しく遊びを終わらせるためのものだ。スイッチをARM側に倒すと、ABORTボタンが点灯する。ABORTボタンを押すと、”Mission aborted, powering down”(ミッション停止、電源を切断します)という音声が流れ、コンピューターが安全にシャットダウンされる。ところで、私は別の部屋にいるとき、低い音が聞こえたり振動を感じたりする。それが遠くで鳴っている雷なのか、宇宙船のスイッチが入って、ネコか息子がジョイスティックを倒したときの音なのか、区別がつかないことがある。息子たちが遊んでいる間、宇宙船の音はそんなに聞こえてこない。ただ、Bass Shakerの唸るような振動が壁や床を伝わってくるのだ。

spaceshipBooster

私は、BOOSTER(ブースター)パネルをロケット音のサウンドボードとなるようにプログラムした。

Bass Shakerは本当によく我が家を揺らしてくれて、そのたびにビックリする。私は、各ボタンが何回押されたかを数えて、システムの使いすぎを警告するようにした。たとえば、ステータスパネルにはSPS(補助推進システム)に関する2つの警告灯があるが、BOOSTERパネルのSPSボタンを何度も押すと、この2つが点灯する。BOOSTERパネルのいずれかのボタンを押すと、緑のTHRUST(噴射)が点灯する。

Spaceship Pyrotechnics

保護カバー付きスイッチは、いちいちカバーを上げなければスイッチを切り替えることができない仕組みになっている。これがあれば、誤ってスイッチに触れてしまう事故をなくせる。PYROTECHNICS(点火)システムは、爆発物で特定の仕事を行うためのものだ。たとえば、ハッチを爆薬で吹き飛ばして中に格納されているパラシュートを開いたり、結合ボルトを爆破して宇宙船のモジュールを分離したりする。こうしたシステムは、一度使ってしまうと元に戻すことも、やり直すこともできない。だから、誤操作を防ぐ対策が必要なのだ。これらのスイッチには、それぞれに私がサウンド編集ソフトで作った異なる爆発音が対応している。もちろん、Bass Shakerの見せ場でもある。

Back of Control Panel

コントロールパネルの裏側を見て、配線の量はミッションコトンロールデスクの半分ぐらいだと感じた。

私は、コードをGitHubで公開した。ArduinoとRaspberry Piを連動させて使うコンソールのプログラムだ。Arduinoには、スイッチやボタンの状態を読み取るために、3つのI/Oエキスパンダ(MCP23017)が接続されている。スイッチ(モーメンタリ押しボタン、ロッカースイッチ、トグルスイッチなど)の状態が変化(オンからオフへ、オフからオンへ)すると、ArduinoはRaspberry Piにシリアル接続(USBケーブル)を通じてその情報を伝える。それを受けてRaspberry Piは音を鳴らしたり、イベントを起動したりする。そして必要に応じてLEDを切り替えるようにArduinoに伝える。Arduinoは4つのマトリックスドライバー(Adafruitのキャリアボード搭載、HT16K33)を使ってすべてのLEDをコントロールしている。これで291個のLEDを個別にコントロールしている。その数は多そうに聞こえるかもしれないが、数字を表示するLEDは一桁あたり8つのLEDが使われているし、バーグラフは1本あたり24個のLEDが使われている(ひとつのセグメントに赤と緑とLEDが使われていて、それで3色を表示するようになっている)。可変抵抗の値はArduinoのアナログ入力で読み取るようになっている。

Spaceship Repair Compartment

誰かが言っていたのを聞いたことがあるのだが、SFではない宇宙ものの映画では、かならず宇宙船のどこかのパネルを外して中の設備をいじくる場面があるという。我が家の宇宙船でもそんなことができたら素晴らしいと思い、そのための小さな小部屋を作ることにした。ネジ留めされている穴開きボードを取り外すと(息子たちは工具を使うのが大好きだ)、興味をそそるコネクターやホースやバルブが装備されている。将来の宇宙ミッションでは、息子たちが協力して、この中の何かを修理したり、何かを付け加えたりするシーンを入れたいと思う。実際に手を動かして、工具を使い、さらにコミュニケーションのスキルも磨けるという、素晴らしいミッションになるはずだ。

Spaceship

私は、遊びの幅が広がるように宇宙船とミッションコントロールデスクをデザインした。勝ったり負けたりするゲームを提供するものとは違う。自分の中に花開く想像力を使って遊ぶための素敵な道具に過ぎない。私が想像できる範囲の遊びの中に彼らを閉じ込めるのではなく、自分で想像を膨らませるための空間を彼らに与えたかったのだ。メイキングという観点から言えば、それを使って遊べば遊ぶほど、新しいアイデアが思いつくようになると私は期待している。息子たちと一緒に、新しい機能を追加していきたいと思う。最初は、自作の人工衛星や、ツールキットや、コンポーネントを修理するための新しいガジェットといった簡単なものからだ。息子たちが学ぶに従って、だんだん高度なものにしていく。

我が家の宇宙船は、単純なもので構成されている。私がそれらを組み合わせ、ひとまとめにすることで面白いオモチャになった。個々の部品は簡単に作れる。ただ、細かく作り込んでいることと、数多く組み合わさっているというだけのことだ。同じようなものを作りたいとお考えなら、自分の技能に合わせて部分ごとに作ってみるといいだろう。しかし、新しい技術を学ぶことを躊躇してはいけない。簡単な工具と独学のスキルがあれば、週に数時間だけ使って、どんな素晴らしいものも作れるようになる。
とにかくやってみよう!

Jeff HighsmithのMaking Funシリーズ全編はこちらをどうぞ。

– Jeff Highsmith

訳者から:Quindar Tone とは、アポロの通信のときに鳴る「ピー」という音のこと。ゲバゲバの音だ(古すぎてかえってわからない?)。

原文