Electronics

2015.07.10

ソニーがEC兼クラウドファンディングサイト、First Flightを開始、MESHなど社内スタートアップによる製品が入手可能

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First Flightの会見会場となったソニーの社内向けMakerスペース「SAP Creative Lounge」

ソニーは、2014年にスタートした新規事業創出プログラムの一環として、独自のクラウドファンディングとEコマースのサービス「First Flight」を7月1日から開始した。同月3日に記者会見が開かれ、First Flightの概要と、そのベースとなる新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program(以下、SAP)」の現時点での成果、そこから生まれたプロダクトの紹介が行われた。

同サイトはYahoo!ジャパンの協力の下に、クラウドファンディングとEコマース機能を備え、SAPから生まれたプロダクトをアイデア段階から一般に公開して出資者を募るほか、ファンディングに成功したアイテムの販売も行う。

サイト上ではすでに、昨年のMaker Faire Tokyo 2014にも出展したソニーのフィジカルコンピューティングデバイス『MESH』、ソニーの名前を隠しながらクラウドファンディングで製品化に成功した電子ペーパー腕時計の『FES Watch』が一般向け販売されている。それに加えて、今回が初の公開となる電子ペーパーを採用したプログラマブルリモコン『HUIS(ハウス)』のクラウドファンディングも募集が始まっている。

新規事業創出部の小田島伸至担当部長は「大企業は役割が細分化してしまい、事業の全部をできる人がいない。SAPでは、最初から最後までやらせて事業経験を詰ませて、起業家人材を大企業の中で作ることが目的」と語り、そこから商品を出せる段階になったため、その出口としてFirst Flightを立ち上げたのだという。なお、2014年には3回の新規事業オーディションを実施し、延べで約1000人の応募があったそうだ。

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新規事業創出部の小田島伸至担当部長

なお、First Flightは、まったく未知の領域のため予算やKPIは設定されず、オペレーションの規模に応じた収益を上げられれば、一定の成功と見なされる。また、多大な反響があった製品に関しては、平井社長と相談のもとFirst Flight以外の販路で拡販する場合もあり得るとのこと。取り扱う製品も、ハードウェアに限らず、また他社とのコラボ製品や、場合寄っては他社製品を扱うことも否定しないという。

会見ではFirst Flightで扱われる製品の事業化担当者による説明のほか、実際の製品の展示も行われた。

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MESHは「誰でも発明家になれる」がキャッチコピーのスマートDIYキット

MESHは、弊誌でも何度かお伝えしているが、今年1月のIndiegogoでのクラウドファンディングに成功し、すでに出資者へのデリバリーが始まっており、First Flightでも1つのモジュールごとに5980~6980円で販売中だ。

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MESHの事業化を担当する新規事業創出部の萩原丈博総括課長

ボタン、加速度センサー、LED、各種入出力という4つのモジュールからなり、それらがBluetoothで接続しお互いがプログラムにしたがい、連動して動作するもの。プログラミングもiPadのアプリから、モジュールの動作や連携を視覚的に構築することができる。事業責任者の萩原丈博さんは「誰でも発明家になれる」ツールにしたいと語り、現在新たな機能を持ったモジュールを検討しているという。

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FES Watchは文字盤からベルトまでが1枚の電子ペーパーからなる

FES Watchは、文字盤のみならずベルトまでが1枚の電子ペーパーで構成されている腕時計。ボタンを押すことで、24パターンのデザインを切り替えられる。2014年9月にMakuakeで出資者を募り見事に成功、当初はソニーの名前を伏せていたことなども含めて、大きな話題となっていた。

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FES Watchの事業課を担当する杉上雄紀総括課長

製品は7月中旬に出荷が予定されており、First Flight上では11月末出荷で予約販売を受け付けている。責任者の杉上雄紀さんは「電子ペーパーを『柄が変わる布地』を捉え、ファッションアイテムを作れないかと考えた」「テクノロジーを利便性ではなく、身につける喜びを高めるために使ったもの」と、FES Watchのアイデアの原点を説明した。

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HUISは電子ペーパーとタッチパネルを採用し、ボタンを自由にカスタマイズできるリモコン

HUISは、画面表示に電子ペーパーを使ったプログラマブルリモコン。表示を自由に変えられる電子ペーパーとタッチ操作を組み合わせることで、操作したいデバイスの必要とするボタンだけを表示させることができる。また、ひとつの画面に複数のデバイスのボタンを集めることもでき、電源ボタンだけを集めたページを用意して、外出する際、一気に電源を落としたり、Blu-rayを見る際に必要な機器の必要なボタンを集めたページを作ったりと、これまでになく柔軟なカスタマイズができるのが特徴。

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HUISの事業化を担当する新規事業創出部の八木隆典総括課長

HUISはクラウドファンディングによる製造・販売となっており、1台あたり2万5千円の支援で入手できる。開始から1週間で目標額の3倍もの出資額を達成しており、ニッチながら必要とする人には刺さる製品のようだ。担当者の八木隆典さんは「メーカーや製品ごとにバラバラな家電のインターフェイスを、ひとりひとりのニーズに合わせられるようにリモコンを進化させたかった」と発想のきっかけを語った。

なお、MESHとHUISはMaker Faire Tokyo 2015に出展しており、会場では実物に触れて体験することができる予定だ。

─ 青山 祐輔