Electronics

2014.07.11

自転車用レーダー「ikubu」の開発裏話

Text by kanai

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これが市場調査というものだ。Franz Struwigは、後ろから来た車に引っ掛けられるのを恐れて車道の反対側を自転車で走る男に出会った。南アフリカのステレンブーシュでレーダー装置のスタートアップ、iKubuの創設者でありマネージングディレクターを務めるStruwigは、そこに彼らの製品のニーズがあると感じた。

そうして生まれたのがBacktrackerだ。ハッキング可能な自転車用後方レーダーだ。オープンなAPIを使い、現在クラウドファンディング中だ。だが、それはこの物語の結末であり、我々が興味を持ったのは、そこに至るまでの出来事だ。

「私たちは、私たちで解決できる興味深い問題を探していました。見えないものを見えるようにするのが、私たちの役目です」とStruwigは話す。見えないものとは、自分の後ろにあるものだ。そして、iKubuは後ろから車が近づいたときにライダーに警告する装置の開発を始めた。

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彼らは装置を支えるラックを作り、10GHzのレーダーアンテナをその上に立てた。それはハンドルに取り付けられたひとつのLEDに接続され、車が近づくほど速くLEDを点滅させる。これはすべて、既存のプロジェクトや市販品をハックして作った。だがそれは、不格好で大きくて重かったとStruwigは振り返る。自転車に取り付けたいと誰も思わないような代物だった。

DSP

そこで、iKubuは次なるプロトタイプを作った。自転車関連メーカーに売り込める、流線型で小さくてピカピカの装置だ。しかし、いくつかのベンチャーキャピタルが興味を示してくれたものの、製品化には至らなかった。そこでStruwigが得た教訓は「自分が思っているほどの強い情熱や努力をつぎ込んで、製品を売り込もうとしてくれる人などいない」ということだ。

最終バージョンには24GHzレーダーアンテナを採用した。より解像度が高く、小型になった。ハンドルのユニットとは、ARMプロセッサーとBluetoothで無線接続されるようになっている。

このレーダーはドップラーマップを作る。背後の車を検知するだけでなく、どのくらいの距離にいるか、どれくらいの速度で近づいてくるかまでわかる。その情報はLEDでライダーに知らされる。さらに、後方の車が接近すると、自転車のテールライトが点滅して運転者に知らせる仕組みになっている。

RD_Map

「これはライダーに警告するものではありません。これがあっても、車がぶつかってくることもあります。これは単に、付加的な情報を提供するものです。ライダーはこれを見て、自分の状況を判断してほしいのです」とStruwigは話す。

ikubuがオープンAPIと開発サポートと回路図を公開しているという点は重要だ。「誰にでもハックできるようにしたいのです」とStruwigは言う。自転車用コンピューターのメーカーに使ってもらったり、一般のMakerにスマートホンにレーダー情報を表示するアプリを開発してもらったりしたいのだそうだ。「世界中のイノベーターたちにアクセスを許せば、彼らはびっくりするような応用法を考えてくれます」

Backtrackerの詳しい情報は、iKubuのDragon Innovationページをどうぞ。

– Nathan Hurst

原文