2015.08.11
MFT2015レポート ―「ぼっち」は自分だけじゃない。「ぼっち」ツイートを地図上に表示するハルロックの「ぼっち・ザ・LED」
「週刊モーニング」で連載されていた電子工作漫画『ハルロック』は、女子大生が周囲の悩みを電子工作で解決するという斬新な切り口で話題となった作品だ。
その特長ともいえるのが、作中に出てくる発明品を実現するための方法が解説されているところ。文字だらけになるため通常ならまずやらないことだが、これがあることで単なるアイディアではなく、「実際に電子工作で作れるんだ」というリアルな説得力あるものとなっている。
作品内で反響が大きかったのが、猫の行動をツイートする「ねこったー」。トイレに行くと「トイレなう」、ごはんの場所に近づくと「おなかすいたにゃん」などとツイッターでつぶやくという発明品だ。初出展となった昨年のMaker Faire Tokyo 2014でも展示されていたので、見かけた人も多いだろう。
今年は同じく作中の発明品となる「ぼっち・ザ・LED」が展示されていたので、これを紹介していこう。
猫の首に取り付け、行動をツイートしてくれる「ねこったー」。昨年のMaker Faire 2014で展示された
圧倒的な文字量を誇る1コマが、ブースの看板として使われていた。好きなことを話し始めると止まらなくなる残念な感じが、ひしひしと伝わるシーンだ
ツイートされた地域のLEDを光らせる
今回のMaker Faire Tokyo 2015に出展された「ぼっち・ザ・LED」は、「ぼっち」という言葉を含むツイートをしている人の場所を地図上に表示し、ぼっちは自分だけではないというのを可視化する発明品だ。内部の結線、ソフト開発、ケース作成と担当を3人で分け、6月半ばごろから製作を始め、7月半ばくらいにほぼ完成したという。
「ぼっち」ツイートの多い地域は赤、少ない地域は白で表示。作中では世界版だったが、こちらは日本版となっている
一番大変だった部分は内部の配線、とのこと。フルカラーLEDを使っているため1つにつき4つの線が必要なうえ、都道府県は整然と並んでいないため、さらに絡み合うようになってしまっている。ケーブルの「モジャア」とした様子が作中の絵とまったく同じで、思わず笑ってしまうほどだった。
箱を開けると圧倒的なケーブル量に驚く。「パカッと開いてモジャアとして行ってね!」の意味がよくわかる瞬間だ
ツイートの検索はRaspberry Piを使い、LEDはArduino MEGAで制御。現在地をツイートに含めている人は少ないため、プロフィールを解析したり、地域を判断できる言葉を一緒にツイートしている場合はそれも地域情報として扱っているとのこと。ハードだけでなく、ソフト面もしっかりと作り込まれている。
構成は作中の解説とほぼ同じで、ツイートの取得と解析はRaspberry Pi、LEDの点灯制御はLEDの数が多いだけに、ポート数の多いArduino MEGAを使用
「ねこったー」と違いキット化を望む声はないとのことだったが、作中発明品の再現性では「ぼっち・ザ・LED」も負けず劣らずすばらしい完成度だ。漫画は完結してしまったが、これからもユニークな発明でMakerとしての活躍を期待したい。
― 宮里 圭介