2014.10.05
Arduinoファウンダー、Massimo Banziインタビュー / Maker Faire Rome 2014
今週末(10/3~5)ローマで行われているMaker Faire Romeに合わせて、Arduino社が3DプリンタArduino Materia 101を発表した。Maker Faire Rome初日の合間を縫うような形で、Arduinoの展示スペースで自ら忙しそうに来客対応していたファウンダーのMassimo Banziに新製品とそれに関連した同社の教育プログラムについて短いインタビューを行った。(類家 利直)
──今回発表したMateria 101はSharebotが協力していますが、彼らの3Dプリンター製品、例えばKiwiなどと製品として何が違うのでしょうか。
Massimo Banzi:今回発表した3DプリンターはハードウェアとしてはSharebotの製品と大した変わりはない。しかし、今後ドキュメンテーションの公開を進めていく予定だからオープンソースの製品になる。つまり製品のすべての情報がユーザーに共有されることになるよ。さらにArduinoはスウェーデンやスペインなどで教育プログラムを既に展開していて、それらを行う上で3Dプリンターでも各現場で色んな製品を使っていると、問題が起きた時に対処することが複雑になる。そこで、一つこれと決めてしまえば技術的なトラブルが起きても解決が楽になる、そういうことも大きな理由だったね。
Maker Faire Rome会場内でレーザーで刻まれたMassimo。
──実はArduinoがどのような形で教育プログラムを行っていたのかよく知らないのですが、今後どのように教育プログラムを展開していく予定ですか。3Dプリンター以外の機器も展開する予定でしょうか。
Massimo Banzi:我々の教育プログラムは、今の段階では学校の生徒に教えるプログラムではなくて、生徒に教える教育者を教育するプログラムを行っている段階なんだ。だからもちろん一般にはまだ知られていない。学校で教えられる教師がいなければ話にならないから、まず教育者を増やすことに注力しているんだ。レーザーカッターやCNCマシンなど他の製品も展開することはできると思っているけど、例えばレーザーカッターだと教育現場では安全性の問題が出てくる。
──あなたがArduinoのプロジェクトを始めた元々の理由は、教育の仕事をしていた時に現場でArduinoのようなデバイスが必要だと気づいたことだったそうですね。イタリアの教育の現状についてどう思いますか。
Massimo Banzi:まだ僕は教えることは続けているんだ。今も二つほどクラスを持ってる。もちろんイタリアの教育も大分古い部分が残ったままになってはいるけど、子供たちは今デジタルの機器を使う環境になっているし、それらを使うだけではなく、仕組みがどうなっているか理解を助ける機会を作ることは教育として大事なことなんだ。
──スウェーデンはともかく、スペインやイタリアで教育プログラムのための予算を確保するのは大変じゃないですか? 政府はプログラムに予算を出すんですか。
Massimo Banzi:予算を確保する方法は色々あるんだよ。イタリアも徐々に良くなっていると思う。ものづくりを教育で行う必要性を理解するようになってきているからね。
コンピューター史の展示で既にSteve Jobsなどと並んで歴史上の人物として扱われるようになってしまったMassimo。
慌ただしく来客が訪れる中でインタビューを終えたが、地元イタリアに限らず世界5カ所以上にArduinoはオフィスを持ち、現在Massimoは自ら世界中を精力的に回っている。新製品について尋ねるつもりが同社の教育プログラムについての話が展開したが、彼は広告塔のような役目をしているだけでなく、教育者としても積極的に活動していることは興味深い。単なる起業家として活躍しているだけではなく、教育活動に繋げているところにも志の高さを感じた。