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2016.07.11

Global Space Ballooning Challengeで31Kmまで飛ばしたBalloongineers

Text by Lisa Martin
Translated by kanai

毎年、Global Space Ballooning Challenge(GSBC)は世界中からチームを集め、同時に風船を打ち上げて、どこまで高く宇宙に飛ばせるかを競い合っている。大きな気象用風船を使って、カメラやセンサーを搭載して宇宙の端まで飛ばして、さまざまなデータを集めたり、素晴らしい写真を撮影したりもしている。GSBCのサイトによれば、「GSBCの基本の目的は、すべての人が互いに学び合い、互いの達成を助け合うコミュニティを作ることにあり、教育的、技術的発展を目指す」とある。

今年は、ワシントン州イサクアーのBalloongineersチームが31kmの高さまで風船を飛ばした。このチームの自称「新入り」で、IBMの元社員としてAS/400の開発にも関わったKevin Hubbardは、Balloongineerのエレクトロニクス関係と、冒険のすべてを記録してブログに書くことを担当している。

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「私は打ち上げの日に間に合うよう、ハードウェアとソフトウェアの開発とテストのために6回の週末をノンストップで費やした。HAB1のエレクトロニクスは、高高度に耐えられるuBlox GPSユニット、双方向Iridium RockBLOCK衛星通信モデム、6つほどの自作回路から作られている。これらをCopperConnectionとOSH-Park、完全にカスタマイズしたFPGA “Lizard Brain” デザインと、Pythonで記述した自作のフライト通信プログラムを走らせるRaspberry Pi Linuxコンピューターで組み立てている。これらすべてが協調して働かなければいけない。常にだ。さらに耐障害性を持たせて。すべて、コンテストが始まるまでの6週間で作った」

こんな締切のきつい状態では、問題が起きてもおかしくないが、最後まで、この問題よりも大きなことは起こらなかった。

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「低圧ガスの専門家でバルブ設計者のDr.Pと私は、完全に膨らませた風船をバルブアセンブリー(これがフライトコンピューターのカプセルに3本のワイヤーとサーボでつながれている)に接続されるのを待っている。4インチのホースクランプを燃料の専門家と風船の担当者たちとで締め付けた。そのとき私たちは恐怖で息を呑んだ(ビデオにそのときの声が入っている。この写真には私の引きつった顔が映っている)。フライトコンピューターとバルブサーボアセンブリーをつなぐ小さな3ピンの0.100インチピッチのSIPコネクターが、接続されていないばかりか、ピンが曲がってしまった。SIPコネクターは素晴らしい。いつも愛用している。しかし、曲がってしまっては困る。ホースクランプに危険なほど近づきすぎている。一度曲がったSIPは、きっと2度曲がる。そして壊れる。打ち上げを中止するか? 新しいSIPをフライトコンピューターに接続されている12インチのリード線にハンダ付けする時間はあるか? いや、風船はすでに膨らんでいて、打ち上げを待っている。風船を保護するための特別な手袋をはめた風船担当者たちは、打ち上げ前に余計なものが接触しないように守る態勢に入っている。すでに風船を膨らませてしまった今、もう中止はできない。

バルブアセンブリーを緩めたり再テストする時間はない。Hubbardが最善をつくし、なんとかペンチとダクトテープでピンを修理してくれた。チームはうまくいくよう願った。風船が放たれ、飛行を開始した。最初の3時間はスムーズな飛行だった。詳細なテレメトリーが10分から15分おきに届いた。海抜8万フィート(約24キロメートル)あたりで、Balloongineersに不安なニュースが届いた。彼らの風船が想定よりも速度を上げているというのだ(あまり速すぎると風船が破裂する)。そして、予定されていた5秒間のベントが地上基地に報告されてこない。彼らは長めのベントを行って上昇速度を抑え、9万フィート(約27キロメートル)で止めるようメッセージを送った。だが風船は上昇を続けた。

彼らの風船は、高度10万フィート(約30キロメートル)を少し超えたところでメッセージを送ってきた。それが、その夜、風船から届いた最後のメッセージとなった。翌日は、まったく届かなくなった。それから、Hubbardが風船のエレクトロニクスパッケージに含まれていたIridium RockBLOCKモデムを新しくするためのクラウドファンディング・キャンペーンの準備を開始したところ、メッセージが届いた。風船は彼らから100メートルほど離れたミルクリークの近くに落ちているという。

「107メートル。私は美しい草原の上に横たわる我らの小鳥ちゃんを思い描いた。しかし、ぜんぜん違っていた。山歩き用のブーツを履いて(Terryはゴム長靴を3足持ってきた)現場を捜索したところ、風船を木の上に発見した。しかも、ものすごく高い木の上に」

回収作業では死人は出なかったが、出てもおかしくなかった。本当に高い高い木だったからだ。Balloongineersの風船の飛行と回収、そして飛行後のデータ解析に関する詳しい話は、Kevin Hubbardのブログで読むことができる。

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原文