フランスのナントで行われたMaker Faire Nantesでは、大きくてびっくりするようなものがたくさん展示されていた。巨大な作品は遠くからも人を集める。しかし、Dirkの場合はそうした注目のされかたではなかった。彼は群衆の中にそっと紛れ込む。そこが面白い。なぜならDirkはロボットだからだ。
Dirkは、ショッピングカートを押しながらぶらぶら歩き、お金を乞い、お金がもらえたら音楽を演奏する。彼はロボットなのだが、その動きはとても人間らしい。うなづく頭、差し出す手は非常に自然で、ほとんどの人は、彼が人間ではなくロボットであることに、すぐには気がつかない。彼がMaker Faireの雰囲気から外れているほど、そうなる。
Dirkを生きているかのように見せる工学系は、見事なものだ。しかし、本当の見せ場は、Dirkが人々と関わり合うときに魔法のように起きる。開発者のFred Ablesは、Dirkを操り人形のように遠くから操作している。だからDirkは人と関わることができるのだ。ただし、Fredは群衆の中に隠れている。何も知らないという顔をして、人々の中に紛れ込んで、その光景を楽しんでいるのだ。
Fredは、人々がDirkと出会ったときに、ハッキリとした3段階の行動をとると説明してくれた。
まずは、本物の人間だと思う。
人々は彼を避けようとする。または、彼が人間であるかのように道を譲る。ちょっと見ただけでは、彼は生きているように見える。そして悲しいことに、ほとんどの人はホームレスを無視する。
次に、それがロボットだと気づく。
少しして、人々はDirkは人間なんかではなくて、ただの機械だとわかる。すると、みんな近くに寄って観察を始める。
最後に、あまりにも賢いので、どこかで誰かが操作しているのではないかと疑い始める。
その対応があまりに自然であることに気づく。絶妙なタイミングでうなづくし、人の動きに合わせて反応する。誰かが彼を操作しているんだ! ここで、人々は操縦者を探して周囲をキョロキョロし始める。Fredの説明によると、以前彼は遠くに隠れることが多く、すぐに見つかってしまったのだが、今は群衆の中に紛れ込むことにしているという。コントローラーは上手に隠されている。人々は、かなり長い時間、Dirkと過ごすが、誰が操作しているかはバレないそうだ。
DirkとFredについて詳しいことは、彼のサイトElectric-Circus.euを見てほしい。
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