2016.08.12
Autodeskが基板デザインのEAGLEを買収
どんな組み込みシステムの開発でも、デザインツールは重要だ。それがプリント基板のデザインであれ、デザインのシミュレーションであれ、大きくソフトウェアに依存することになる。そんな2つの大手ソフトウェア企業が、より多くの人をその傘下に入れようとしている。電子部品のサプライヤーであるPremier Farnellは、スイスの業務用部品メーカーのDätwylerに6億1500万ポンドで身売りすると決めた。だがこれは、あまり話題にならなかった。この動きには、主力でない事業を分離するという目的もあった。その中にEAGLEも含まれていた。無料で使えるプリント基板のデザインサイトだ。この事業は誰が買ったのか? 他ならぬデザインツールの大手、Autodesk だ。
Eagleはこの30年間にわたり、プリント基板のスタンダードとして活躍してきた。それは、制限付きだが無料で使えるライセンスのおかげだった。それが、プリント基板を学ぼうとする学生やホビーストや、オリジナルの基板をプロジェクトに組み込もうとする人たちを助けてきた。この会社は、また、オープンソースハードウェアコミュニティにも手を広げ、忠実なユーザーに好感を持たれてきた。そして今や、この会社は正式に巨大ソフトウェア企業であるAutodeskの一部となった。これがEAGLEユーザーにとってどんな意味があるのだろう?
この買収は、CADデザイナーの常用ソフトウェアとするべく、Autodeskが考えたことだ。プロもホビイストも、多くの人がCADに頼っている。AutodeskはCADコミュニティに対してドアを開きたいのだ。Autodeskでは、EAGLEに彼らの資源を投入し、そのプラットフォームを改良して彼らのコアに組み込もうとしている。これとは別に、EAGLEに新しい機能も加える予定だ。とくに、一部のユーザーから要望のあったものだ。これにより、リアルタイムDRC、よりタイトなインターフェイス、ライブラリーの改良、よりよいコンテンツとリソース、インタラクティブ・ルーティングの改良が実現する。いい話のように聞こえるが、この合併には心配な点もある。中でも最大の心配は、値上げされないかどうかだ。Autodeskによれば、価格に変更はないが、ライセンスが異なるという。layout+schematicとlayout+schematic+autorouterとなる。もちろん無料版もある。
Autodeskが常に進化するのはいいことだ。数年前、彼らはCircuits.ioと手を組んで新しい回路デザインツール、123D Circuitsのサービスを開始した。Circuitsは、たとえば Arduinoをシミュレートでき、記述したコードを実行できる。仮想的デザインは、今や無料で行えるものとなったように見える。今回の合併は、circuits.ioの助けになるのだろうか。そのウェブサイトでは、無料でブラウザ内で回路を組み、プリント基板をレンダリングして見ることができる。デザインはロックされない。Autodeskは、EAGLEの無料サービスは続行すると約束している。だがライセンスには制限がある。それがcircuits.ioネットワークに加えられれば、CADデザインを始めようという人には、じつに強力で魅力的なツールとなる。EAGLEは回路を作ってプリント基板を作るためのツールなので、circuits.ioネットワークにそのままフィットするように思える。私はその両方を使ったことがあるが、これまでのプロジェクトで、それらは重要な役割を果たしてくれた。
現在のところ、今回の合併による大きな変化はまだ見られない。どんな変化が起きようと、それはAutodeskをより大きく、よりよくするものであるに違いない。今私たちから伝えられることはそれだけだ。この合併でどんな新しい動きがあるのか、まだまったくわからない。それがわかるまで、じっと待っているしかない。大幅な値上げがなく、無料ライセンスが継続されるならば、ほとんどのユーザーにとっては、今までと変わりないだろう。詳しくはこのリンクを見てほしい。
[原文]