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2016.10.14

古い話だからって馬鹿にしないで欲しい

Text by Gareth Branwyn
Translated by kanai

ここ数年、気になっていることがある。「Make:」のチャンネルやネット全般において、学んだり興味を追求したいと思う気持ちに水を差す行為だ。たとえばこんな感じ。誰かが、何かのテクニックやハックやプロジェクトやニュースをアップしたとする。それに対して、「新しくない!」とか「ずっと前から知ってる」とか「古すぎ」とか「昔からそうしてるぞ!」といったコメントが付く。

それは私が糸とクリップでパース絵を描く方法を紹介したときにもあった。長年の間に、同じようなテクニックを見たかも知れない。それを見て忘れていたかもしれないが、それを発見したときはうれしく思った。「Make:」の読者も喜んでくれると思った。そのときその動画は、すでにFacebookやTwitterでずいぶん出回っていた。

その記事を公開すると、「アップテイクヒート」(「Make:」とFacebookで急速に広がるそのスピード)によって、それが大変な反響を呼んでいることがわかった。こちらでは、その反響に驚き、たくさんの「いいね」やシェアやコメントがもらえたことを喜んだ。ほとんどは、私と同様にそれを見て面白いと感じた前向きな読者のコメントだったが、それに水を差すコメントもあった。「古代からある方法だ」とか「新しくない」とか「紙に製図を描く人間ならみんな知ってる」とか「みんなCADを使っているのに、どうして?」といった具合だ。

こういったコメントが載ると、一般の人々に、これが古いニュースで、みんなずっと昔から知っていたことだと思わせてしまう。人々を、バカで世間知らずで学習能力がないと感じさせてしまう。上の例では、「いいね」をした人たちの中に、知らなかったことを謝罪する前書きを付ける人も出てきた。しかし、お前らよりよく知っているぞ、と主張する人たちは、この動画がソーシャルメディアで何万件もシェアされ、「Make:」では1万ページビュー、Facebookではほぼ2,000回シェアされ、さらにTwitterとGoogle+でも大反響を呼んでいる事実の前に、愚かに見えてしまう。中傷する人たちが言うように、このテクニックがすでに世界に広がり古臭くなっていたのなら、なぜこんなに大反響を呼んだのだろう。

このメディアの世界は広く、それを包み込むさらに大きな世界がある。私の仕事は、科学、テクノロジー、DIYに関する最新情報を伝えることだ。情報のスポンジであることで給料をもらっている。それでも、この50年間、生きて勉強してきたが、まだ知らない事実や現象があることを聞いて驚かされる。

何かを発見して、興奮して、シェアして、そして「そんなことも知らなかったなんてビックリ。ずっと前から知った」などと冷笑されて取り下げるといった経験は誰にでもあるだろう。そんなとき、レベルの低い、物を知らない、時代遅れな人間だと自分を思ってしまう。それは面白くない。それが元で、馬鹿に見られないように、シェアすることをためらうようになる。すでに広く知られているかもしれない情報のシェアを躊躇する気持ちと、他人の発見を古い話として否定する気持ちは、結局は人々の学習を阻害し、自分の好奇心を、そして学んだことをシェアしたい気持ちを否定することになる。これは恐ろしい罪だ。

だから、今度誰かが、あなたの知っていることをシェアしても、どうか自分のときのことを思い出してほしい。彼らにとって、それは新しく、エキサイティングで、知ってとてもうれしかった情報なのだ。すでに知っていることも、あなたの知恵や経験を添えてシェアしよう。そしてどうか、それが自分にとって古いニュースであったとしても、シェアした人を馬鹿にするようなことはしないでほしい。

原文