Fabrication

2016.12.26

NexD1は導電性レジンも使用可能なポリジェット式3Dプリンターだ

Text by Mike Senese
Translated by kanai

ご多分に洩れず、「Make:」もクラウドファンディングのプロジェクトといいつながりを持ちたいと考えている。しかし、開発が遅れるものも多く、なかにはとうとう発売されないものもあるため、新しくキャンペーンを始めたばかりのプロジェクトに関しては、普段は少し様子を見てから記事にするのだけど、そんなルールも忘れさせるほどエキサイティングなものがある。

ベルリンのNext DynamicsのLudwig FaerberとBen Hartkoppは、間もなくKickstarterキャンペーンを行う予定の3Dプリンター、NexD1を見せてくれた。そこは長年の間に数多くの優れた製品が生み出されたカテゴリーだ。Printbot、Formlabsなどだが、失敗例もある(Peachy Printerだ。100ドル返して欲しい)。

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私たちがNexD1に惹きつけられたのは、それが持つ2つの要素だ。ひとつは、よくあるフィラメントを使うプリンターではないという点だ。ポリジェット方式のプリントシステムを採用している。インクジェットプリンターのようにプリントヘッドからレジンを噴射して固めていくというもの。この方式は、StratasysのObjectラインなどに使われている。大変に仕上がりのいいハイエンドのプリンター用のシステムだ。価格も高く、2万ドルから最大規模のもので100万ドルもする。それを、BenとLudwigは、家庭用のプリンターに近い5,500ドルで、しかもアーリーバードの報酬として2,500ドルで提供しようとしている。

我々を惹きつけたもうひとつの要素は、素材をいろいろ選べる機能だ。なかでも導電性レジンには興味深い。そもそもこのマシンは、電子回路をプリントするために作られた。多層プリント基板のプロトタイプが簡単に作れるようにだ。このマシンには3つのレジンカートリッジのための容器があり、色や固さが変えられるほか、ゼリー状の水に溶けて壊しやすいサポート材などもある。素材を混ぜ合わせるこの機能を使うと、マルチカラーやグラデーションもプリントでき、固さも調整できる。このレジンカートリッジは、ひとつ15ドルから100ドルで販売されるという。また、歯科用のレジン、Formlabsなど、他社製の素材も使えるという。

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素材に導電性レジンを混ぜることで、柔らかなプリント基板が作れる。開発チームでは、すでにそれに成功しているという。さらに三次元の回路も作ったそうだ(ベッドサイズはおよそ20センチ四方)。データは、EagleやCircuits.ioなどの標準的な回路デザインソフトのものが使えるが、現在はまだ対応ソフトウェアは限られているとのことだ。トレースとピッチのスペーシングだが、チームによれば10ミクロンまで可能だという。だが、そこまで密なレイアウトの例は見せてもらっていない。

どのKickstarterプロジェクトもそうだが、先の予定はなかなかハッキリしない。Next Dynamicsでは2017年の11月にはバッカーへの出荷を終わらせると言っているが、遅れることは覚悟しなければならない。彼らは4回目のイテレーションを見せてくれたが、それには10インチのタッチスクリーンが付いていた。現在はバッカー向けのバージョン5を開発中だが、これにはレジンカートリッジの容器が6つになる予定だ。

さらに、目に見えない障害も現れる可能性がある。Stratasysの特許は切れているが、この種のテクノロジーをまだ独占しておきたいと考えているようだ。それが大きな壁になる恐れがある。彼らは過去にFormlabsAfiniaなどを訴えている。また、Next Dynamicsによれば、これだけの低価格が実現したのは、リコーなどの大手プリンターメーカーの高価なユニットを買わず、自社開発したからだと言っている。

しかし、このタイプのプリンターを家庭にもたらすこと、さらに導電性素材を使って、いろいろな固さでプリントできるようになることは、とってもエキサイティングだ。今後を見守ろう。

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